急成長するPCD/MCD向けプラットフォーム「Snapdragon」の実力

» 2008年05月30日 22時06分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 米QUALCOMMは5月28日(現地時間)、米国サンディエゴで開催した報道関係者向けの技術紹介イベントで、小型デバイス向けのシングルチッププラットフォーム「Snapdragon」の紹介とデモンストレーションを行った。

 携帯電話よりも大きく、ノートPCよりも小さい。この“中間領域”の市場に、モバイル業界全体が熱い視線を注いでいる。QUALCOMMも例外ではなく、この新たな市場が急成長すると予測している。

 QUALCOMMの定義では、4〜6インチのディスプレイを搭載した端末に「Pocket Computing Device(PCD)」、7〜12インチのものに「Mobile Computing Device(MCD)」という名称を与えている。OSはLinuxやWindows Mobile、Windowsなど複数の選択肢が考えられるという。前者はインテルが提唱した「MID」、後者は近ごろ話題の「Eee PC」や「HP 2133 Mini-Note PC」のようなミニノートPCに近いものと考えると、イメージしやすいだろう。QUALCOMMでは従来から携帯電話向けのチップセット「MSMシリーズ」を展開してきたが、このPCDとMCD向けに用意するのが「Snapdragon」という位置づけである。

PCD/MCDは急成長領域──2012年には9450万台規模に

Photo QUALCOMM CDMA技術開発部 QCTプロダクトマネージメント ディレクターのマンジット・ジル氏

 QUALCOMM CDMA技術開発部 QCTプロダクトマネージメント ディレクターのマンジット・ジル氏は、PCDやMCDなど新ジャンルが今後急速に成長すると指摘する。

 「ネットサービスと、(これまで)オフラインの利用から進化してきたPCが急速に融合し始めています。このネットと融合した端末の世界が、Snapdragonが狙っていくマーケットになります。2012年には、PCDやMCDの市場規模は9450万台にまで成長するでしょう」(ジル氏)

 PCDとMCDの製品においては、マルチメディア関連の機能やモバイル向けマルチメディア放送への対応などが重要になる。ビジネスシーンで活躍する性能を持つだけでなく、高い解像度の映像コンテンツや3Dゲームが楽しめるだけのパワーが必要になるのだ。このあたりはインテルのMIDと似ているが、QUALCOMMがもう1つこだわるのが、「PCDやMCDにおいても、データ通信だけでなく、音声通話が必須だと考えている」(ジル氏)ことだ。

 「さらに付け加えますと、必要十分な処理能力があるのはもちろんですが、モバイルで使うことを考えれば、低消費電力や発熱量の少なさがとても重要になります。これらは、これまで携帯電話向けのチップセットを提供してきたQUALCOMMの得意分野でもあります。(インテルなど)競合他社に対して、大きな優位性になるポイントです」(ジル氏)

PhotoPhoto 携帯電話の世界とPCの世界がともに進化を遂げた結果、両者の特徴が融合したPCDやMCDといったデバイスの需要が高まっている。2012年にはこうしたPCD/MCDの市場が9450万台規模になると予測されている

指で触れる“パワフルな次世代チップ”

 Snapdragonは、QUALCOMMの非携帯電話向けプロセッサーの総称で、PCDやMCD向けとして用意されるのはQSDシリーズと位置づけられている。QUALCOMMではこのほかに、PND専用機など単機能なデジタル機器向けのQSTシリーズも用意している。

 今回デモで披露したのは、ハイエンド向けのQSDシリーズだ。CPUコア(Scorpionコア)は1GHzで動作し、600MHz動作のDSPやAMDのグラフィックスコアがパッケージ化されている。消費電力は最大500ミリワットだという。

 「(携帯電話向けの)MSMシリーズのコアはARMのコアそのものですが、SnapdragonのコアはARMからアーキテクチャライセンスを受け、独自設計したものです。これによりARMと命令セットは互換でありながら、高い処理能力と低い消費電力を実現しました。

 また、グラフィックス性能は特に重視をしまして、(採用する)AMDのグラフィックスコアはOpenGL 2.0に対応します。ちなみにこのグラフィックスコアのスーパーセットがMicrosoftのXBOX 360に搭載されています。MSM7000シリーズがだいたい700万トライアングルくらいの性能なのですが、Snapdragonは2200万トライアングルを実現しています」(ジル氏)

 試験用のボードを用いたデモでは、Windows Mobile上で各種アプリやフルブラウザを動かす、ソフトウェアでHD解像度の映像を再生する、Linux上で各種アプリやネットサービスを利用する、といった作業などが立て続けに行われた。筆者を含めて記者が自由に操作する時間もあったが、その動作速度はすこぶる速かった。映像処理能力も高く、実験用にグラフィックスコアを使わず、プロセッサコアとソフトウェアのみで再生したハイビジョン映像でもコマ落ちなどは確認できなかった。モバイルで使うなら十分な性能である。

 さらに特筆すべきは、Snapdragonの“発熱の少なさ”だろう。写真で見てもらうと分かるが、筆者が指で直に触れてもまったく熱さを感じない。ほんのり暖かい程度だ。しかも、この触っている間も、SnapdragonはHD映像の再生や、Google Mapの拡大縮小といった作業を行っていたのだ。これだけ発熱量が小さければ冷却機構の必要性も低く、モバイル向けのPCDやMCDはもちろん、リビング向けのSTBやデジタルTV、クルマ向けのPNDなどさまざまな分野に利用できそうだ。

PhotoPhoto 左はSnapdragon環境上でWindows Mobile 6.1を動作させたもの。右はOpenEmbedded(Linux)上でWebブラウザ(Coolfox)を使ったデモ。Google Mapsなども軽快に動作する
PhotoPhoto デモはSURFボードと呼ばれる評価用システムを用いて行われた。HD動画再生などを行っても発熱はほとんどなく、指で触っても熱くない。熱設計の容易さは今後の製品展開における可能性の大きさにつながる

 インターネット接続を前提にした小型軽量のモバイル機器やデジタル家電は、今後さらに生活の中で重要性を増す。それを支える半導体チップとして、Snapdragonは注目株の1つと言えるだろう。

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