各キャリアの個性がはっきり──ケータイ夏の陣を斬る神尾寿のMobile+Views(1/3 ページ)

» 2008年06月05日 19時34分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 携帯電話キャリア主要3社の2008年 夏モデルが出そろった。NTTドコモ 19機種au 12機種ソフトバンクモバイルが12機種(ディズニー・モバイルを含む)。番号ポータビリティ制度(MNP)開始以降、コンシューマー市場の飽和や新販売モデル導入による市場流動性低下もどこ吹く風といった具合に、各キャリアが多種多様な端末を投入。それぞれ新サービスも用意した。

 今回のMobile+Viewsは特別編として、各キャリアの端末ラインアップや新サービスを俯瞰。ケータイ夏商戦に向かう各社の姿勢や布陣について評価していきたい。

個々の端末とインフラ力で勝負するドコモ

Photo NTTドコモの906iシリーズ。上段左からF906i、N906i、P906i、SH906i、下段左からSO906i、N906μ、SH906iTV、N906iL onefone

 夏モデルの発表で先陣を切ったのはNTTドコモだ。前回の冬商戦春商戦と同じく、ハイエンドモデルの906iシリーズとスタンダードモデルの706iシリーズを同時発表し、3キャリア中で最も多い19機種を公開することになった。

 906iシリーズと706iシリーズを俯瞰すると、前者が先代905iシリーズからの着実な洗練を図る一方で、後者が健康サポートの“ウェルネスケータイ”「SH706iw」や、使いやすさを重視した新たなラインアップ(706ieシリーズ)を投入するなど、バリエーション感の拡大に腐心しているのが分かる。先代の905i/705iシリーズでは、ハイエンドとスタンダードの機能差が小さく、そこにバリューコースの導入もあって“705iが売れず、需要が905iに偏る”という販売施策上の課題があった。そこで706iシリーズでは、906iシリーズとのコンセプト的な差別化を大きくとり、より積極的に“すみ分け”を狙った格好だ。もしこれでもユーザーの需要が906iシリーズに偏重するならば、ドコモは90xと70xシリーズの2ラインを統合し、ラインアップ構成そのものを仕切り直す必要が出てくるだろう。

Photo ドコモの706iシリーズ。上段左からF706i、N706i、NM706i、P706iμ、SH706i、下段左からSH706iw、SO706i、N706ie、L706ie、P706ie、SH706ie

 さて、個々の端末に目を向けると、筆者が注目したのは富士通製の「F906i」と、NEC製の「N906i」「N906iμ」である。

 F906iは独自に「サーチキー」を搭載し、検索機能を強化したのだが、この出来映えがすばらしい。「辞書」「電話帳」「メール」「地図アプリ」、さらに「Google検索」と複数の検索トリガーを、1つのボタンとウィンドウによって統合している。今後の携帯電話にとって、“使いやすい検索機能”の実装は最重要のテーマであり、それをいち早く導入した印象だ。

 N906iとN906iμで特筆すべきポイントは、新たに搭載された「デスクトップインフォ」である。これは“デスクトップ画面を視覚的にどう活用するか”というテーマにおけるよいケーススタディであり、auの「au oneガジェット」よりもUIとしてスマートだと感じた。次回以降、デスクトップインフォの自由度がより高くなり、ネットとの連携を高めていけば、その魅力や利便性はさらに増すだろう。先代から強化された「クイック検索」や「タブブラウザ」、そして新たに搭載されたブログ連携機能など、ネット関連機能の充実はNEC製端末の大きな魅力になっている。

PhotoPhoto 左はF906iのダイヤルキー下に用意された「サーチキー」、右はN906i/N906iμに搭載された「デスクトップインフォ」の画面

 ユーザーインタフェース(UI)の部分でみれば、今期のシャープ製端末に導入された「光TOUCH CRUISER」も魅力的なものだろう。筆者は先代「SH905i」のTOUCH CRUISERを使っているが、これと比べると悔しくなるほど光TOUCH CRUISERは進化し完成されている。個別のモデルで見れば、全面タッチパネルを搭載した「SH906i」や「AQUOSケータイ SH906iTV」もよいが、それ以上にスライドモデルの「SH706i」が機能・性能・デザインのバランス感が取れていて完成度が高い。

 サービス面では、今期のドコモは「動画サービス」を推してきた。動画への対応は、後述するauも夏商戦の目玉としているが、ドコモのそれはHSDPAネットワークの整備と基地局の多さを背景にし、モバイルで「いつでもどこでも動画サービスが利用できる」ことを訴求ポイントにしている。手抜かりなくインフラを強化し、地道にサービスエリアを整備したからこそできる動画サービスという位置づけだ。iモードを通じた動画配信サービスだけでなく、家庭のPCに自らが撮り貯めた動画を、携帯電話で視聴できる「ポケットU」も用意されており、ここでもやはり「インフラの強さはドコモの強さ」という自信がうかがえる。今のドコモにとって、インフラ力は他社を圧倒する競争力になっている。

 一方、夏商戦のドコモにおいて、「これはまったくダメだ」と感じたのが、ホームブロードバンド連携の「ホームU」である。詳しくは別記事に譲るが、ホームUはNTT東西のフレッツADSL、Bフレッツ、フレッツ光ネクストしか利用できず、さらに無線LANルーターもドコモ指定のものしか推奨されていない。ドコモの公衆無線LANアクセスサービス「Mzone」にすら非対応だ。

 さらにホームU用の050番号は自宅以外で利用できず、外出時に050番号に着信があっても、所有するもう1つの携帯電話番号(090/080番号)に自動転送する機能を持たない。留守番電話サービスがメッセージを預かるのみだという。音声定額もホームU同士のみなので、“お互いがホームUに加入し、同時に自宅にいるタイミング”でしか適用されない。しかも、相手がホームUで着信できるかどうかは「(相手のホームUの番号に)電話をかけてみないと分からない」(ドコモ担当者)という使い勝手の悪さである。

 このようにホームUは、ユーザーの立場に立って、使いやすさを最優先に作られたサービスとはとうてい思えない内容である。Skypeのように自由度が高くユビキタスな使い勝手を実現したコミュニケーションサービスがある中で、ホームUはまったく空気が読めていない前時代的なものとしか言いようがない。こうしたユーザーの利便性や使いやすさを軽視したサービスをそのまま投入してしまうあたりは、ドコモの弱点であり、今後の課題と言えよう。

 ドコモの夏商戦ラインアップを俯瞰すると、そこに「端末商品力の高さ」や「インフラの強さ」がはっきり見える一方で、キャリア独自サービスの商品力は弱体化しているように見える。新生ドコモが重要視する“パーソナライズ”を軸にした新端末やサービス、販売チャネルも含めた変革が姿を現し始めるのは今年の冬商戦から。それもあって今回の夏商戦は、よけいにちぐはぐな印象を受けるのかもしれない。

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