「キーの交換までは無理」を覆した設計――ネジからおこした「フルチェンケータイ re」:開発者に聞く「フルチェンケータイ re」(1/3 ページ)

» 2008年10月25日 17時33分 公開
[田中聡,ITmedia]

 ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製の「フルチェンケータイ re」は、本体のパーツを丸ごと交換でき、1台で何パターンものデザインやカラーに簡単に交換できるのが大きな特徴。さらに、「ナカチェン」を利用して画面デザインをカスタマイズできるのも魅力だ。

photophoto フルチェンケータイ reの夏モデル(写真=左)と追加カラー(写真=右)

 本体カラーは夏モデルとして発表された5色に、秋冬モデルとして「ディープレッド」「ラストラスブルー」「シルキーラベンダー」「マットブラック」「ルミナスゴールド」の5色が追加され、計10色がそろう。このほかにも、「よしもとケータイ」「COACH Mobile Phone」「鹿島アントラーズケータイ」「ファイターズケータイ」「歌舞伎ケータイ」「キン肉マンケータイ」など、特定ブランドやスポーツチームなどとコラボレートした特別モデルも登場する。

 フルチェン機構を実現するまでの苦労、そしてデザイン、カラー、ソフトウェアへのこだわりとは――。ソニー・エリクソンの開発チームに聞いた。

photo フルチェンケータイ reの開発スタッフ。上段左から商品企画担当の冨岡氏、機構設計担当の矢部氏、機構設計担当の今井氏、デザイン(カラー)担当の木村氏、デザイン(GUI)担当の山浦氏、ソフトウエア担当の斉藤氏

キー面を交換しても操作感を損なわない新設計

photo 背面パネル、カメラ周辺部、バッテリーカバーに加え、キー面の4つのパーツを交換する

 本体のパーツを交換できる、いわゆる“着せ替えケータイ”は、これまでも数多くリリースされてきたが、交換できるのは背面パネルやバッテリーカバーなどに限られていた。しかしフルチェンケータイ reは、背面パネル、カメラ周辺部、バッテリーカバーに加え、キー面も交換できる。

 キー面を交換できるのはフルチェンケータイ reならではの特徴だが、キーデバイスが変わることで操作性が低下することが懸念される。機構設計担当の矢部氏も「キー面の設計が一番苦労した」と振り返る。

 「ダイヤルキー部分を交換可能にすると、キーが取れてしまったり、違うキー面を装着することで操作感が変わってしまったりする恐れがあります。さらに本体の薄型化も重要なので、操作感と薄型化をいかに両立させるかが大きなテーマでした」(矢部氏)

photo 機構設計担当の矢部氏

 ケータイのキーは通常、柔らかいゴム製のシートの上に貼り付けられていて、表側はキートップとして見える部分を形成している。一方、キーの裏側にはスイッチを押すための突起があり、さらにその下にはクリック感を生むスイッチが用意されている。「しっかりとしたクリック感を得るには、クリックスイッチを押す突起物の大きさ、形状、厚み、硬さが重要です」(矢部氏)という。

 そこで機構設計の開発チームは、フルチェンケータイ reのキー面には通常のケータイとは異なるシートと機構を採用した。

 「シートには新開発のウレタンを採用し、その上にごく薄いフィルムを貼ったものにキートップだけを接着しています。フィルムの上にキーを載せる手法は他社も採用していますが、今回はフィルムを特殊な素材にして、熱で接着してキーがフィルムからはがれにくくしています。

 また、通常のケータイではキートップの裏にクリックスイッチを押すための突起が並んでいますが、フルチェンケータイ reのキーの裏側には突起がありません。そして本体側(コアユニット)に、クリックスイッチを押す突起を付けたシートを設けています。つまりキートップと突起が分離しているわけです。コアユニットの精度が問題なければ、どれだけ着せ替えても突起とクリックスイッチがずれることはありません」(矢部氏)

 さらに、表面のキーシート全面を接着剤で貼り付け、簡易的な防水性能も兼ね備える。この防水性は「日常生活で支障がない程度」で、「キー部分には水が入りやすいので、防水をうたわなくても防水性は確保しておきたい」(矢部氏)との配慮からだ。

 開発当初、ソニー・エリクソンの社内では「ダイヤルキー部分(の交換)までは無理だ」という意見も多かったという。しかし開発陣の「実現できたらすごくないか?」という想いと新しいキー設計が、これまでの着せ替えケータイでは類を見ない、キー面の交換を可能にした。

photophoto パネル側のキーはシート全体を接着剤で貼り付けた(写真=左)。本体側にクリックスイッチを押す突起を設けている(写真=右)

 フルチェンケータイ reはユーザーがパネルを交換することはできず、auショップの店員に交換してもらう必要がある。とはいえ、「ショップ店員も機構設計のプロではないので、ユーザーさんとほぼ同じくらいのスキルを想定しないといけない」と矢部氏。

 「ユーザーさんが着せ替えられないようにするために、外側から見えない場所にビス(ネジ)を1本打って、それを外さないとパーツが取れないようにしました。ただしこの1本のビスを外すと、背面、カメラ周辺部、キー面のパネルがすべて取れるようにしています」(矢部氏)

 フルチェンケータイ reの各パーツは可能な限り薄く設計されているので、単純な構造だとしっかり着脱するのが難しい。しかし部品の固定方法を工夫することで、楽に着脱できるようになっている。

 「パーツが薄いので、数カ所押さえただけではパーツが浮いたり曲がったりする恐れがあります。通常は片側3つほどの部品で固定しますが、今回は左右で5カ所、計10カ所に爪を入れて固定しています。バッテリーカバーと同じように、すべての爪が一度に引っかかるので、スムーズに装着できます。バッテリーカバーは上から無理矢理押し込んで壊してしまう可能性もゼロではないので、上からカバーを押し込んでも装着できるよう、カバーの爪に斜めの切り込みを入れています」(矢部氏)

photo ビスを外すドライバーも、ソニー・エリクソン製のカスタム品を使う

 さらに、パーツを止めるビスはフルチェンケータイ re専用のものを使っており、基本的に市販のドライバーで外すことはできない。「ビスは三つ又のカスタム品を使っています。実は会社に入って初めてビスの設計図を書きました(笑)」

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