「キーの交換までは無理」を覆した設計――ネジからおこした「フルチェンケータイ re」開発者に聞く「フルチェンケータイ re」(3/3 ページ)

» 2008年10月25日 17時33分 公開
[田中聡,ITmedia]
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中身も飽きさせない「MyStoryアプリ」

 外装を交換できるフルチェンケータイ reは、それだけでも飽きずに愛用できるモデルといえるが、長く使ってもらうための配慮はソフトウェアにも反映されている。それが、「MyOriginalMap」と「エリクルたちの絵日記」を含む「MyStoryアプリ」だ。

 MyOriginalMapは、アドレス帳に登録した人の中から通話とメールの頻度が高い人(最大20人)や、よく使う機能(最大10個)を自分の周りに表示する機能。表示される数は人物が最大20人、機能が最大10個で、よく連絡を取る人やよく使う機能ほど自分の近くに寄ってくる。

 「SNSで人間関係の図を表示するツールがありますが、発想はあれと近いですね。携帯電話は自分の分身のような存在なので、そこに蓄積された自分の行動やコミュニケーションの相手を形にすれば、新しい気付きがあるんじゃないかと思います」(冨岡氏)

 アドレス帳の人物はアバター化されて表示されるが、アバターの顔はアドレス帳に登録した名前から推測して決定されるという。例えば「自宅」と登録すれば家のイラストに、「一馬」だと馬のイラストに、「川田」だと川のイラストに、という具合だ。アバターは全256種類あり、うち192種類が人間だ。一度設定したアバターを変更することもできる。

photophoto ソフトウエア担当の斉藤氏(写真=左)とデザイン(GUI)担当の山浦氏(写真=右)

 「日本の人名でよく使われている言葉をインプットしています。ちょっと面白い名前の方は、アイコンも相応に面白くなるんじゃないかと思います」(ソフトウェア担当の斉藤氏)

 「モバゲータウンなど、アバターを使ってコミュニケーションするサービスも意識しました」と冨岡氏。今後は他社サービスで提供されているような、顔写真からアバターを生成できる機能が搭載されても面白そうだ。

 画面上にマッピングされているアバターごとに、その人とやりとりした電話とメールの頻度をグラフ表示することもできる。自分からメールを送ることは多いけど、相手からのメールは少ない…といったことも分かり、自分と相手の“距離感”のようなものがつかめる。これは「コミュニケーションを促進するのが目的です」とデザイン(GUI)担当の山浦氏。このグラフは最大2年分保存され、1カ月ごとにさかのぼって確認できる。

photophotophoto よく連絡を取る相手がマップ上に表示される(写真=左)。電話とメールの頻度が相手ごとにグラフで表示される(写真=中)。MyOriginalMapの機能は、メール、Web、ワンセグ、赤外線、カメラ、アラームなど10種類が固定で用意される(写真=右)。MyOriginalMapでは、発着信履歴や受信ボックス/送信ボックスとは別にログを取っているので、ケータイをオールリセットしない限りデータは残る。なお、MyOriginalMapに蓄積されたデータをほかの端末に引き継ぐことはできない

 エリクルたちの絵日記では、使った機能と連動した内容の絵日記が読める。絵日記は最大200ページ(種類)あり、エリクルたちのコメントは500種類ある。MyOriginalMapと同じく、最大2年分のデータがたまる。

 「絵日記なので大まかなストーリーはありますが、基本的には通話やメール頻度、使用した機能に関連した内容になります。例えばメールを20通送信したら『メール打ちすぎ』などと出たりします。これも過去にさかのぼってストーリーを見ることで、自分がどんな機能を使ってきたかを再確認できます」(山浦氏)

 「絵日記は基本的にランダムで表示されますが、よく絵本を読んでくれている人には頻繁に出すとか、あまり読んでくれない場合には頻度を下げるなど、裏で処理しています」(斉藤氏)

 さらに、絵日記の中にはレアなコメントもあるようだ。「特定の日時に特定の操作をしないと表示されないものもあります。(登録した)ユーザーの誕生日も認識しているので、『おめでとう』と言ってくれる場合もありますよ」(斉藤氏)

photophoto エリクルたちのコメントの中には、「マップ(MyOriginalMap)が新しくなった(更新された)気がする」など、役立つ情報も含まれる。上の写真のようにネタ的な言葉も多いが、「癒しとして楽しんでほしい」と冨岡氏。新着コメントは待受ショートカットに表示される

シンプルメニューには書道の達人とお菓子職人の作品を起用

 山浦氏がもう1つこだわったというのが、ケータイアレンジとしてプリセットした「シンプルメニュー」だ。ただしアイコンを見やすくまとめただけのメニューではなく、“和”をイメージし、待受画面には「茶室」を、メニュー画面には「和菓子」を採用した。

 「長く飽きないものって何だろうと考えたときに、本体にはアルミを使っているけど、GUIにも本物が必要じゃないかと。メニュー画面の和菓子は、実際にプロの和菓子職人さんに80個くらい作ってもらった中から9個を選びました。それぞれの和菓子は季節によって変化するので、全部で36パターンのアイコンが存在します。例えば、『柿』のアイコンは冬は干し柿ですが、夏には青柿に、秋になると熟れた柿になります」(山浦氏)

 待受画面の茶室に飾られている文字も、書道の達人に書いてもらったというこだわりようだ。「8×20ミリの実際のサイズで書いてもらいました。表示される文字は全20種類で、内容は季節に連動していて、正月には『福寿』、4月には『夢』などの言葉が出ます」(山浦氏)

 「シンプルメニューは表示する項目が限られているので、(ケータイにあまり詳しくない)年配の男性をイメージし、そうした方々が好まれる世界観を演出しました」(斉藤氏)

photophotophoto シンプルメニューには和菓子と茶室を採用した

 外装を丸ごと交換できる機構上のインパクトはもちろん、“飽きさせない仕掛け”を盛り込んだソフトウェアもフルチェンケータイ reの大きな魅力だ。

 「これなら飽きずに使えるかな、というネガティブな考えではなくて、楽しみながら使い続けたくなる、愛着を感じて長く使いたくなる。そういう端末がハードとソフトの両面から実現できたと思っています」(冨岡氏)

 フルチェンケータイの次期モデルについては「キャリアの戦略で決まるので未定」としながらも、「技術的なノウハウはあるので、当然続けていきたい」と冨岡氏。やみくもに機能を詰め込むのではなく、積極的に楽しんで使ってもらう工夫を凝らしたフルチェンケータイ reは、長く愛用するにふさわしい機種といえる。

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