「機能ありき」反省、ユーザー指向に 一挙に新4シリーズ・22機種投入のドコモ

» 2008年11月05日 20時41分 公開
[ITmedia]
photo 新シリーズを発表する山田社長

 NTTドコモが11月5日に発表した冬春モデルの携帯電話22機種は、デザイン性を重視した「STYLE」など、新たに4シリーズに編成し直した。機能指向だった従来の姿勢を転換し、ユーザーのライフスタイルに合わせる形で一新。ユーザーが欲しい情報を簡単に入手できるようにするエージェント機能やウィジェットも新搭載する。携帯販売が落ち込む中、22機種という大量の新機種を投入する手法をあえて採用し、「ショップに行けば欲しいケータイが必ず見つかるのがドコモの売り」とユーザーの“ケータイ欲”を刺激していく。

 新シリーズは「STYLE」(6機種)と、エンターテインメント機能などを充実させた高機能シリーズ「PRIME」(7機種)、ビジネスパーソン向けにスリム端末をそろえた「SMART」(4機種)、スマートフォンの「PRO」(5機種)の4シリーズ。11月19日から来年3月にかけて順次発売する(ドコモ、2008年冬モデル22機種発表──新型番で新たな4シリーズ展開)。

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 STYLEは、スイーツブランドの「ピエール エルメ パリ」とコラボした「N-03A」や、豊富なカラーバリエーション、充実したデコメと絵文字など、若い女性を意識した「ファッショナブルケータイ」。PRIMEは、「AQUOSケータイ SH-01A」や「VIERAケータイ P-01A」、7機種のうち5機種がタッチパネルを搭載するなど、従来の「90xi」シリーズに近い高機能端末シリーズだ。

 SMARTは、「New amadanaケータイ N-04A」や厚さ9.8ミリの「P-04A」など、ビジネスパーソンのオンタイム・オフタイムの両方にマッチする「インテリジェントケータイ」。PROは、タッチパネルとQWERTYキーボードを搭載した「SH-04A」と台湾HTC製「Touch Pro」「Touch Diamond」、「BlackBerry Bold」、「Nokia E71」をそろえ、最新のテクノロジーに触れたいユーザー向けのスマートフォンシリーズになっている。

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 「これまでは機能を軸にシリーズ展開してきたが、抜本的に見直した。お客が携帯に何を求めているか徹底的にリサーチし、ユーザー自身にマッチした携帯をより選びやすくなるように4シリーズに一新した」──6月の社長就任以来初めてとなる大規模な新端末発表会で、山田隆持社長は新シリーズの狙いを語った。

 従来は、機能が“全部入り”の「90xi」シリーズと、そのサブセットとして機能を絞った「70xi」シリーズの2本立てが同社端末の主軸。需要が拡大しているスマートフォンなどは、各シリーズの機能定義上、シリーズに組み入れることができなかった。

 新シリーズは、「ドコモからの押しつけ」とも受け止められてきた機能指向を反省。ユーザーリサーチから抽出・構成した4つのユーザースタイルがコンセプトになっている。「機能ありきではなく、お客指向のケータイ。ニーズに合わせたシリーズに生まれ変わる」

 機種やメーカーごとにばらばらだった文字入力時のキー配置を統一。どの機種でも濁点や句読点、アンドゥーなど、文字入力時に使うキーの配置を統一し、機種変更するたびに配置を覚え直す必要がなくなるとしている。microSDにユーザーデータを一括バックアップし、別の機種で一括復元できる機能など、新機種への乗り換えハードルを下げていく工夫も導入した。

モバイル「ストリートビュー」も

photo iコンシェルでは「ひつじのしつじくん」が情報を教えてくれる(別キャラへの変更も可能)

 タッチパネル採用端末の拡大などハード面の進化に加え、常に持ち歩くネット端末としてのソフト面の強化も進めた。

 新サービス「iコンシェル」は、携帯が執事やコンシェルジュのように、ユーザーの行動をサポートするエージェント機能。普段の利用から得られるユーザー行動を蓄積・分析したデータとユーザーの登録情報などを組み合わせ、交通情報やイベント情報などをアバターキャラクターを介して配信する。ユーザーが欲しい情報を代理(エージェント)で取ってきてくれる機能だ。

 iウィジェットは、時計や株価情報、地図検索などのウィジェットを専用画面に配置しておける機能で、ユーザーのカスタマイズ性を高める。待ち受け画面から専用ボタンでiウィジェット画面に切り替え、各種情報を素早くチェックできるようになる。

 複数ユーザーで同時に対戦ゲームなどが楽しめる「iアプリオンライン機能」や、モバイルGoogleマップの「ストリートビュー」、地図アプリの位置情報などを共有できる「地図トーク」にも対応した。

photo モバイルGoogleマップのストリートビューには17機種が対応

型番の理由

 シリーズ一新に伴い、端末の型番にもブランド性は持たせなかった。「SH-04A」のように、メーカー名+開発した順番+初年度を表す「A」、という「ユーザーサポート用に、モノを識別するため」のシンプルで機能的な文字列になっている。

 価格は4万円台〜5万円台と、ほぼ従来と同じレンジ。店頭では、ユーザーがどのシリーズに合っているかを自己診断できるツールを用意するなどして、好みに合った端末を見つけやすくする仕掛けを施していく。

 同社は先月、2008年度の端末販売台数見通しを前年同期比で15%減の2200万台に下方修正した。上期は約20%減に落ち込んだが、下期は新シリーズの投入効果などで10%減にとどまると予想している。

 いわゆる「プロダクトアウトからマーケットインへ」の教えに忠実に従ったとも言える新シリーズだが、新料金プラン導入などで携帯電話市場が落ち込み、消費マインドも悪化する中、どれほどの効果を上げられるかは未知数。山田社長は「ぜひ買いたい、という新しい端末をどれほど用意できるかだ」と話し、下期は新シリーズを武器に挽回していく決意を見せていた。

「SO」新製品はなし

 新シリーズには、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製端末がない。同社はドコモ向け製品計画の見直しと、国内生産を縮小する方針を明らかにしていた(ソニー、ソニエリ向け端末の国内生産を縮小へ)。

 山田社長は「いろいろ事情があるようだが、ソニー・エリクソンとは今後もお付き合いをしていきたい。世界で販売する端末を日本でも売るということかと思う」と話した。

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