ラーゲリン氏は最後に、Googleの“情報と人を結びつけ、包括的かつ効率的に共有する”という理念を具現化するクラウドサービスと、それを実現するためのツールである「Android」端末について、改めて説明した。
「お金は多くの人にとって大事なものだが、現金を布団の下に敷いて寝る人はあまりいない。常に全財産を持ち歩くことはなく、銀行という仕組みやATMなどの技術を信頼して、貯金している。我々は口座上のデジタルなお金を、必要に応じて引き出して使っている」(ラーゲリン氏)
このお金を情報に置き換えたものが、クラウドサービスであるとラーゲリン氏は補足する。「PCやケータイの違いはあまり問題にならない。どんな環境だろうが同じ情報を扱え、安全な雲の中に元の情報を預けることができる。そこには、情報のバックアップという価値も生まれる」
クラウド上の情報をローカルにキャッシュする必要があるのは、端末が圏外のときか、十分な接続速度が出ないときだが、3G網が発達した日本では「あまり心配しなくてもいい問題では」と、ラーゲリン氏は指摘する。
Googleが提供するさまざまなクラウドサービスは、もともとPC向けに作られたものだ。それを携帯電話で快適に使うには、先述のようなある仕様に基づいた標準的な環境が必要になる。そのためにGoogleが用意したのが、Androidだ。
Androidには、フルHTMLのコーディングやAjaxに対応したPCと同等のブラウザ(WebKitコードをベースの「Chrome Lite」)があり、共通のアプリケーションスペックを持つ。それらを開発するためのツールは無料で公開されており、ソースも提供される。オープンソースはあるがライセンス形態はApache License 2.0のため、条件を満たせばオープンソース内に追加したオブジェクトソースを公開する必要もない。アプリケーションのリソースが共通のため無駄がなく、低コストで高い品質の端末を作ることができる。
「オープンソースの精神を尊重するのであれば、追加したオブジェクトソースの一部でも公開してほしい。だが、その判断は開発者に委ねられている。現在の携帯電話開発は、ハードよりもソフトの開発費が高い。Androidはアプリケーションのリソースが共通のため無駄がなく、低コストで高い品質の端末を作ることができる。またレガシーな要素を使わず、開発者の立場に立って設計されたものだ。日本の開発力は非常に高く、Androidを使って、これまでにないケータイやサービスを開発できるだろう」(ラーゲリン氏)
Androidを搭載したHTC製の携帯電話「G1」(HTC Dream)は、すでに米国でT-Mobileから発売されている。G1は予測を2倍上回る売行きで、10月22日の発売から年内に100万台に達する見込み。そのペースは初代iPhoneに匹敵するという。
そのG1についてラーゲリン氏は、「『Googleフォン』という呼び方があるが、世の中にGoogleフォンというものは存在しない。AndroidはOpen Handset Alliance(OHA)のメンバーを始めとした皆さんのものだ。確かにGoogleのサービスに最適化されているが、Googleですべてが解決する(※)とは我々も思っていない」とコメントした。
いずれにしても、ユーザーが“ケータイでもPCと同じようなことをしたい”というニーズを明確に持っていることは確かだ。インフラも端末性能もそれを実現できるレベルに達しており、クラウドサービスを活用するためにも、これからフルインターネットをモバイルに持ち込まない理由はない。
「モバイル業界はもう“ケータイだから”と、言い訳はできないところにいる。今こそ、リッチでオープンなインターネットを携帯電話に持ち込むべきだ」(ラーゲリン氏)
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