“ケータイ業界の黒船”ともいわれる「iPhone 3G」の日本上陸に続き、2009年にはAndroid携帯の登場がうわさされるなど、独自のコンテンツ配信プラットフォームを持つ端末が日本市場に進出し始めている。
今後の日本において、iPhone 3GやAndroidケータイ向けのコンテンツ市場は、どのように発展するのか――。新たに形成されつつある、スマートフォン向けコンテンツの市場動向について、Gclue 代表取締役の佐々木陽氏と、日本Androidの会 事務局長の今村謙之氏が説明した。
iPhone向けアプリケーションの開発・販売を手がける佐々木氏は講演の冒頭、iPhone上で琴の演奏を再現する「iKoto」のデモを行い、琴の音色をBGMにiPhoneとGoogle Androidのコンテンツ配信とビジネスモデルを解説した。
同氏はiPhoneとAndroid端末を「まだデバイスが発売されて間もない子供」に例え、我が子をかわいがるような熱狂的なユーザーが多いと分析。どちらの端末も将来に期待が持てる子供たちで、きちんと成長すればリーダーとして世界を動かす存在になるという見方を示した。
iPhoneを手がけるApple、Androidを主導するGoogleは、それぞれのプラットフォームを“水道のように自然な”インフラにするために、クラウドとリアルの融合を目指していると佐々木氏。日本ではすでに携帯電話を中心とするユビキタス社会が形成されつつあるが、海外ではまだ日本のようにはなっておらず、特にリアルとの融合が遅れていると指摘する。
両プラットフォームの端末でリアルとの融合を実現しているのはGPSとセンサーを組み合わせたサービスだ。iPhoneもAndroidケータイ第1号の「T-Mobile G1」も、位置情報の活用や端末を傾けると画面の向きが変わるなどといったユーザーインタフェースを実装してしている。G1に搭載される「モバイルGoogleマップ」のストリートビューは、加速度センサーと地磁気センサーを生かし、端末の向きと、画面に映し出されるストリートビューの風景を連動させられる。
佐々木氏はまた、iPhoneとG1が似た機能を実装しながらも目指す方向性には違いがある点に言及。両端末とも無線LANやBluetooth、タッチパネルなどを標準で搭載しているが、iPhoneはマルチタッチ対応で、G1はシングルタッチながらフルキーボードやトラックボールといったデバイスを搭載していることから、「iPhoneはエンタテインメントを志向しており、G1はメールなどのPC的な機能にも力を入れている」と説明した。
iPhone向けコンテンツは、Appleが提供する「App Store」を通じて課金・販売を行う仕組み。アプリはダウンロードごとに課金するモデルで、Webサービスは広告収入をベースにしたビジネスモデルを採用している。
アプリの開発や販売は決まった手順さえ踏めば誰でも行え、リリース用プロビジョニングでiTunes Connectにアップロードすれば配信が可能になる。ただし、課金する場合は米国での商取引と見なされるため、公開法務として米国納税番号(EIN)を取得するなどの税務手続きが必要だ。
iPhoneのマーケットは急激に広がっており、「iPhone 3G」は全世界で690万台(2008年9月時点)、初代iPhoneは610万台が出荷され、合わせて1200万台が販売されているという。iPhone 3Gだけでも、3カ月で690万台が販売されるなど、「1日に約7万台が増えている計算になる」と佐々木氏。端末の出荷ベースの予測では、「iPhone向けコンテンツ市場はすでに300億円以上、3年以内に2000億円に達するだろう」とし、「ロケットスタートを切った状態で、iモードやiアプリがスタートした直後の規模は軽く超えている印象を受ける」と話す。
Android向けコンテンツは、まだ有料課金が始まっておらず、「(G1が発売された)90日後の2009年1月から始まるのではないか」と佐々木氏は予測する。2009年9月頃には複数メーカーからAndroid端末が出荷される見込みであることから、その時期にAndroid端末向けコンテンツ市場が立ち上がるという見方を示した。
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