1月16日、ソニーのミニノートPC「VAIO type P」が発売された。すでにアイティメディア本誌で様々なレポートやレビューが掲載されているので詳細は省くが、VAIO type Pはインテルの超小型PC用プロセッサである「Atom」を搭載し、長形3号の封筒とほぼ同等の本体サイズ(幅245×奥行120×高さ19.8ミリメートル)を実現したミニノートPCだ。重量も約634gと非常に軽い。超小型ボディながらキーボードの打ちやすさにもこだわったのが特徴で、Webブラウザを2つ並べてサイトを表示できる解像度(1600×768ピクセル)を持つ8型ワイドの液晶ディスプレイも搭載している。ソニーではVAIO typePを「ポケットスタイルPC」と定義づけている。
→これは理想の低価格ミニノートPCなのか!?――「VAIO type P」徹底検証(前編)
→これは理想の低価格ミニノートPCなのか!?――「VAIO type P」徹底検証(後編)
VAIO type Pは一見すると、昨年から急成長している低価格なノートPCの新セグメント「Netbook(ネットブック)」に似ている。ネットブックはASUSTeKの「Eee PC」が草分けとなり、昨年を通じて急成長。インターネットサービスのトレンドがWebサービスにシフトしたことと、イー・モバイルなどデータ通信サービスに注力する携帯電話キャリアがUSBデータ通信モジュールとのセット販売を行ったことなども追い風になり、ノートPC市場の中に「低価格モバイルPC」という軽自動車に似た市場を作りだした。
ソニーのVAIO type Pは、本体サイズや下位グレードで10万円を切るプライスといったところは、ネットブックのコンセプトに類似している。しかし、VAIO type Pはネットブックの規格とは異なる仕様を採用しており、デザイン性や質感を重視し、バッテリー持続時間が長いといった特徴を持つ。さらに標準的なグレードでは10〜14万円前後となる価格設定など、ソニー自身が「これはネットブックではない」と強調するように、新たなモバイルミニノートPCを目指した製品になっている。
従来のネットブックは「いつでもモバイルPCを使いたい」をリーズナブルに実現する軽自動車。それに対して今回のVAIO type Pは、コスト意識はあるものの「必要十分な性能で、デザインのよいモバイルPCがほしい」というニーズに応えるコンパクトカーのような製品だ。パナソニックのLet'snoteに代表される高付加価値・高価格のモバイルノートPCに比べれば性能は劣るが、ネットブックのようなチープさはない。“いつでもどこでもカジュアルにモバイルPCを使いたい”層にフォーカスしたという点で、“音楽をカジュアルに持ち出す”ために作られたウォークマンに通じる革新的なプロダクトと言えるだろう。VAIO type Pの登場でミニノートPCはこれまでの「通好み」の市場から、女性も含む一般ユーザー層にまでリーチできる厚みのある市場になりそうだ。
以前のコラムでも書いたが、ミニノートPCやネットブック市場の拡大と一般化は、ワイヤレス通信技術/インフラの高度化と、PC利用ニーズのWebサービス移行を追い風に、持続的なトレンドになる可能性が高い。VAIO type Pのようにデザイン性が高いプロダクトが登場し、市場の裾野が広がればなおさらだ。このようなトレンドは、携帯電話キャリアの新たなデータ通信市場としてだけでなく、将来的に“携帯電話のハイエンドモデル市場やスマートフォン市場とどのように競合し、棲み分けるのか”も含めて注目していく必要があるだろう。
ところで蛇足になるが、筆者もVAIO type Pの魅力に負けて、Sony Styleで同機のオーナーメイドモデルを注文した。予約の受付開始日に注文したのだが、納期は2月中旬。VAIO type Pは店頭モデルも大人気となっているが、それによる品薄がちょっと恨めしいところである。
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