“実はすごい”デジカメケータイ――「930SH」が折りたたみボディになった理由:開発陣に聞く「930SH」(1/2 ページ)

» 2009年01月28日 20時26分 公開
[田中聡,ITmedia]

 ここ数年のケータイカメラの画素数は2M〜5Mピクセル程度に落ち着き、スペック面では頭打ちの感があった。しかし2008年冬モデルとしてソフトバンクモバイルが発売したシャープ製の「930SH」はカメラ機能に注力し、800万画素CCDカメラと画像処理エンジン「ProPix」を搭載した。さらに厚さは約15.2ミリ、重さは約110グラムに抑え、高性能カメラを手軽に使えるモデルとして、2009年1月も好調に売れている。

 この930SHはどのような狙いで開発されたのだろうか。また、カメラに注力したモデルでありながら、回転2軸ヒンジやスライドボディではなく通常の折りたたみボディを採用したのはなぜなのか。シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第二事業部 商品企画部の井之村憲一氏に話を聞いた。

photophoto 本体カラーはシルバー×バイオレット、ブルーグリーン、ピンク、ブラック、ホワイト×シルバーの5色

「デジカメの延長線上」を意識

 ケータイのカメラは今では当たり前の機能だが、携帯電話に最初にカメラを搭載したのは、J-フォンが2000年に発売したシャープ製の「J-SH04」だった。撮影した写真をメール添付して送れる機能「写メール」が大ヒットし、J-フォンが“写メ”文化の礎を築いたことは、もう遠い過去のことのようだ。以降、他社がカメラ付きケータイを投入し始めた中で、シャープは半歩先をリードすべく、画素数の向上はもちろん、CCDや光学ズーム、回転2軸スタイルを採用するなど、ケータイカメラにこだわりを持ち続けてきた。

photo シャープのカメラ付きケータイの歴史(2008年11月19日に同社が開催した説明会にて)

 しかし、ここ最近のシャープ製ケータイに対しては、「気が付いたら『カメラが少しチャレンジ不足ではないのか』という意見があった」と井之村氏は振り返る。

 過去のシャープ製ケータイにはCCDカメラを搭載していたが、ここ何年かはCMOSセンサーがほぼすべてを占めている。一方、コンパクトデジタルカメラは逆で、大半の機種がCCDセンサーを採用する。

 「センサーの体積を増やせない中で、画素数だけが増えているので、受光面積がどうしても小さくなります。そういう状況もあり、(暗い場所が苦手な)CMOSと(感度の高い)CCDの優位差が徐々に広がっています」と井之村氏。ケータイカメラは気軽にどこでも撮影できるのが大前提の機能だが、薄暗い室内や動く被写体など、CMOSでは鮮明に撮影できないシーンも多い。

 「コンパクトデジカメの延長線上を意識すると、CMOSではなくてCCDが必要です。デジカメに負けないよう、画像処理エンジン『ProPix』を採用し、本当の意味でのデジカメケータイを目指しました。この“実力の伴ったデジカメケータイ”をもって、ケータイカメラの使い方をもう1度ユーザーに提案したいという思いがありました」(井之村氏)

photo 箱の中の暗がりにレンズを向けてカメラを起動。左が923SH、右が930SH。930SHのほうが明るく映せている

回転2軸ではなく折りたたみを採用した理由

photo シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第二事業部 商品企画部 井之村憲一氏

 高性能カメラを搭載した機種は、本体を閉じたままデジカメのように大きな画面(メインディスプレイ)をファインダーに使えることから、回転2軸やスライド型を採用するモデルが多い。だが930SHは一般的な折りたたみボディを採用した。一見すると8Mカメラを搭載したケータイとは分からないほどだ。

 「同時期に発売した『AQUOSケータイ FULLTOUCH 931SH』や過去のシャープ製端末、これから発売する商品とのバランスを考えて、この8Mカメラをいかに効果的に市場に送り出すかの議論を重ねてきました。当初は回転2軸スタイルやサイクロイドスタイルも候補に挙がりました。(2008年夏モデルの)「AQUOSケータイ 923SH」から少し間が空いているので、『AQUOSケータイとのコラボレーションもありだ』という意見もありました」(井之村氏)

 しかし最終的に採用したのは折りたたみボディだった。この理由について井之村氏は、「930SHはカメラにこだわったユーザーさんだけに買ってもらう商品ではありません。シャープとして、国内の携帯電話シェア1位を取らせてもらっている自負を持って、広い層の方に使っていただきたい。その中で、『実はカメラがすごい』と認識していただきたいという狙いがあります」と話す。

 「今までデジカメと折りたたみボディを結びつけて考えたことはありませんでした。しかし改めて考えると、デジカメの撮影スタイルは両手で横向きに構えますが、ケータイカメラは、開いて縦向きで撮るのが普通ではないかと。ですから折りたたみでも十分受け入れられると思いました」(井之村氏)

 とはいえ、ケータイカメラをデジカメのように使うのなら、回転2軸やスライドボディの方がデジカメに近いスタイルで使える。また、「“若い女性と自分撮り”は切っても切り離せない」との考えから、930SHにはサブカメラ(11万画素CMOS)も搭載したが、自分撮りを重視するのなら、ディスプレイ部が反転してメインカメラで撮れる回転2軸ボディの方が適している、という考え方もある。

 ケータイのスタイルについて井之村氏は「“絶対に折りたたみ”というこだわりはありません」と話す。

 「タイミングや(各商戦の)ラインアップによって最適なスタイルは異なります。CCDのカメラ戦略は今後も継続していくので、(CCDカメラを搭載した)第2弾、第3弾のモデルでは違うコンセプトの商品を出したいと考えています。新しい提案をすると、『もっとこうしてほしい』というユーザーさんの声が必ず挙がるので、それを想定して次の手を打つことは、常々心がけています」(井之村氏)

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