NTTドコモのシニア向け携帯電話「らくらくホン」シリーズの販売台数が、7月18日に累計2000万台を突破した。ドコモはこれを記念して、「らくらくホン7」の新色ミントグリーンを8月26日に発売している。
1998年に誕生したらくらくホンシリーズは、松下通信工業(現:パナソニックモバイルコミュニケーションズ)製の“らくらくホン”「P601es」を皮切に、これまで全18機種が発売された。うち16機種、ほとんどの製品の開発・製造を手がけたのが富士通だ。富士通製らくらくホンの累計販売台数もまもなく2000万台を突破しようとしており、同社はこれを記念するキャンペーンを9月15日から開始した。
キャンペーンは既存のらくらくホンユーザーを対象としており、内容は大きく分けて2つ。1つは、楽しい旅の思い出や孫への思いなどを写真付きメールやデコメとして募集するメールコンテスト。募集した作品は、同社がらくらくホン向けに提供しているケータイサイト「らくらくニッポン探訪」上で紹介し、さらに同サイトでナビゲーターを務める辰巳琢郎さんと、CMキャラクターの大竹しのぶさんが優秀作品を選定する。優秀作品には、総額1000万円分のギフトカードをプレゼントする。
もう1つは、富士通のスマートフォン「F-12C」を100人のらくらくホンユーザーに貸し出すという試み。F-12Cを2カ月間試用してもらい、その感想をモニターとしてリポートする。モニター終了後は、そのままF-12Cを使い続けられる。もちろん、いきなりスマートフォンを使ってもらうわけではなく、まずは東京と大阪で行われる勉強会に参加してもらい、難しそうなら辞退することもできる。スマートフォンを使う上での基本料金やパケット料金は自己負担だが、勉強会に参加する費用や、端末代金は富士通が負担する。
2000万台突破記念キャンペーンの説明会に出席した富士通執行役員副社長の佐相秀幸氏は、「世の中に“らくらく”という名前が広がり、らくらくシューズやらくらくタクシーなど、らくらくと付いた商品が増えている。我々が積み重ねてきたらくらくホンは、まさにこうしたらくらく商品の先駆けであり、富士通製品の原点であるものづくりの技術がぎっしり詰まった製品。電話機の見る・聞く・話すという基本機能をブラッシュアップさせるだけでなく、センサーを搭載することで、ユーザーの行動支援・健康支援などにも取り組んできた」とシリーズの歴史を振り返った。
また、「厳しい厳しいといわれる携帯電話市場だが、2011年度の国内携帯電話出荷台数は4050万台(前年比7.6%増)と予測されている。国民的携帯電話へと成長したらくらくホンをさらにご愛顧いただき、本年度の富士通の目標である携帯電話販売700万台超という数字を目指したい」と意気込みを語った。
説明会には、らくらくホンを販売するNTTドコモのプロダクト部担当部長山口文久氏も招かれ、シニア層に向けたドコモの取り組みについて紹介した。
「らくらくホンの開発は、誰でも使えるケータイをぜひ作ろうというのがきっかけ。1999年に最初の製品を出してから12年、今でもシニアの方から強い支持を頂いている。2001年から2011年までの10年間の携帯電話普及率を見ると、もともと50%以下だったシニア層での普及率が、現在では約90%まで増えている。この普及率の伸びには、らくらくホンの存在がベースになっていると考えている」(山口氏)
らくらくホンの貢献度は携帯電話の販売数にも表れている。+D Mobileの携帯販売ランキングでもらくらくホンシリーズはランキングの常連となっているが、半年ごとの売上ランキングでも過去2年半は毎期ともベスト10点入りを果たした。ドコモと富士通にとって、今やなくてはならない売れ筋商品といっていいだろう。そのらくらくホンは、ほかの携帯電話と同様にハイスペックな機能を盛り込んだスタンダードと、通話とメールに特化したシンプルなベーシックの2ラインが用意されている。同じシニア向けではあるが、ユーザーごとのニーズに細かく対応しているのが特徴だ。しかし、らくらくホンとしての基本コンセプトは1999年の1号機から変わっていないと、山口氏は話す。
「らくらくホンの基本コンセプトは、親切・簡単・見やすい・安心の4つ。これを実現するために、ドコモは独自にユニバーサルデザインのガイドラインを設けている。らくらくホンの3つのワンタッチボタンは、その象徴でもあり、シリーズのアイデンティティといえる存在だろう。もちろんドコモだけでなく、富士通が開発した最新のテクノロジーも詰め込まれている」(山口氏)
らくらくホンは携帯電話というハードウェアだけでなく、iモードを使った独自のサービスを用意している。iモードではらくらくiメニューという専用のポータルを用意し、シニア向けの生活情報を見やすく提供。また、「日本らくらく探訪」など、エンターテイメントコンテンツも用意。さらに、iチャンネルやiコンシェルなどのプッシュ型サービスも好評を得ているという。こうした、簡単や安心というキーワードのシニア向けサービスは、らくらくホンユーザー本人だけでなく、その周囲にも広がりを見せている。
ドコモが4月に発売した「らくらくホン ベーシック3(F-08C)」には、つながりほっとサポートという専用サービスが対応している。これは、端末の歩数計が計測した歩数、ディスプレイの開閉回数、バッテリー残量、カメラ利用の有無などを、あらかじめ登録したメンバーに通知する見守りサービスの1つ。山口氏は「家族間の新しいコミュニケーションのきっかけとなるサービスと考え、この4月から投入した」と、その狙いを説明した。
またらくらくホン ベーシック3には、らくらくホンセンターの専門アドバイザーに無料でつながる「使い方」ボタンを搭載しており、人の声による親切丁寧な対応も受けられる。さらにドコモは、シニア層向けに手厚いサポート体制を敷くだけでなく、携帯電話を安全に使うための教室や啓蒙活動を繰り返し行っている。
「携帯電話の普及にともなって、影の部分も出てきた。シニア層の場合、振り込め詐欺の被害に遭うケースが増えている。こうした被害に合わないための方法や、災害時にオープンする災害伝言板などの使い方などを安全教室で紹介している。もちろんそれだけでなく、携帯電話の基本的な使い方や写真付きのメールの送り方なども取り上げている。教室は2010年には約800回開かれ、約1万8000人のユーザーが参加した。私も何度か足を運んだが、皆さん楽しそうに携帯電話を使われており、携帯電話を使う楽しみをもっと広げたいと感じた」(山口氏)
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