シリーズ2000万台への道 富士通とドコモが明かす「らくらくホン」の作り方総額1000万円の記念キャンペーン開催(2/2 ページ)

» 2011年09月20日 02時30分 公開
[平賀洋一,ITmedia]
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らくらくホンの作りかた

photo 富士通執行役員常務の大谷信雄氏

 入れ代わりの激しい携帯電話市場において、10年以上に渡りロングセラーを続けるらくらくホンシリーズ。その開発の舞台裏はいったいどうなっているのだろうか。「使うのはシニア層の方だが、企画・開発は若い技術者が行っている。そのため、いかにユーザーの声を聞いて反映させるかが重要」と話すは、富士通執行役員常務の大谷信雄氏だ。

 らくらくホンの開発を支えているのは、約2700人の既存ユーザーが構成するらくらくユーザーパネルからのフィードバックや、視覚障害者団体などからの声、そして携帯電話教室などで得る意見などだ。大谷氏は、「ご意見を集めるだけでなく、その声をもとに必ずプロトタイプを作ってもう一度評価してもらい、さらに改善を加える。こういうサイクルを確立できたのが、らくらくホン開発の大きな成果」と胸を張る。


photophoto 富士通製らくらくホンの系譜(左)。らくらくホン開発のサイクル(右)

 らくらくホン開発のもう1つの特色が、使われている技術の高さだ。大谷氏は「優しい携帯電話ということで、大した技術を使っていないのではないかと言われるが、実際はまったく逆。優しくするためには、非常に高い技術が求められる」と指摘する。例えば、らくらくホンに使われているフォントは、見やすさを追求して独自に開発されたものが使われている。聞きやすさという点では、周囲の騒音をカットやしたり、年齢に応じて相手の声を聞きやすい高さにする、また話す速度をゆっくりにするなどの技術が開発され、製品化された。この技術はフォーミュラ・ニッポンのレーシングカーにも採用されており、大きなエンジン音のもとでもドライバーとピットの間ではっきりと会話できることが実証されているという。

photophoto 独自開発のらくらくホン用フォント(左)。操作系のレイアウトも一貫して維持している(右)

photophoto 東京駅のホームと同じ90〜100デシベルの騒音下でも、相手の声がはっきり聞こえるらくらくホン(左)。その効果は、フォーミュラ・ニッポンのレーシングカーでも実証されている(右)

 また操作系では、通話中に自分の電話番号を常に表示するという、細かい配慮もなされている。通話中に自分の携帯電話番号を確認し伝えるというのは意外に難しく、らくらくホンでは特別な操作をしなくても良いよう、常に表示するという方法を採った。

 そして、らくらくホンシリーズの開発でもっとも象徴的なのが、ダイヤルキーやソフトキーのレイアウトを一切変えていないという点だ。大谷氏は、「これは、せっかく覚えた携帯電話の操作を機種変更でもう1度覚え直すのを避けるため。また、自分が覚えた操作方法を、同じらくらくホンユーザーに教えられるようにするためでもある。レイアウトを変えない、というのは技術者には大変な苦痛だが、絶対変えない方針で今日まで築きあげてきた」と説明する。

photo 泥がついても洗えるというキャッチフレーズの「らくらくホン6」

 らくらくホン開発では、長年に渡るノウハウの蓄積で実現した使いやすさだけでなく、技術的に大きな挑戦も生かされている。ドコモが2009年に発売した「らくらくホン6(F-10A)」は、シリーズ初の防水・防塵端末。発売時には「泥がついても洗い流せる」というキャッチフレーズが採用された。大谷氏は、「これにはドコモにも大英断をしていただいた」と振り返る。

 「らくらくホンのユーザーには、農家や漁師の方が多い。自宅から出て田んぼや漁に行くが、そこでの泥と海水の問題は大きな悩みだった。泥と海水は携帯電話がもっとも嫌う環境であり、それなら洗い流せるようにしようと決断して開発したのがらくらくホン6。『泥がついても大丈夫』というキャッチは開発前に頭に浮かんだもので、このような経験は初めてのことだった。とはいえ、通信機器の常識では泥に落とすというのはあまりないシチュエーション。そのキャッチフレーズ案の採用には、ドコモにも大きな決断をしてもらった」(大谷氏)

 実は高度な技術が数多く採用されているらくらくホン。今日のスマートフォンでは当たり前になった、さまざまセンサーを搭載する端末の先駆けでもある。例えば2003年には歩数計をいち早く搭載し、健康機器との連携も交えて、ユーザーの健康支援や行動支援などのサービスを提供。現在では糖尿病患者の治療をサポートするサービスなど、医療面での活躍も期待されている。

photo らくらくホンと採血キットを接続して血糖値を記録する「からだライフ 糖尿病サポート」

 こうしたらくらくホンの進化は、ユーザーの声を反映させながら、ほかの製品と比べれ比較的ゆっくりと進むのが特色だ。いきなり最新技術を押し付けるのではなく、携帯電話を使っていると感じる不満や、高まるニーズを汲み取って次期製品で提供する。2000万台突破キャンペーンについても、ユーザーニーズを捉えたうえでの企画が採用された。

 「らくらくホンユーザーの多くが使ってみたい機能の1つに、写真を添付したメールやデコメがある。今回のキャンペーンでは、より多くのらくらくホンユーザーにメールを楽しんでもらえるよう、メールコンテストを企画した。これは、高齢者の方の豊かなコミュニケーションのお手伝いをする一環でもある」(大谷氏)

 キャンペーンでは、らくらくホンユーザーを対象にF-12Cのモニター100人も募集する。大谷氏はこれについて、「らくらくホンユーザーでもスマートフォンに触れてみたいという要望は多い。そこで、スマートフォンのモニター募集を企画した。ここで頂いた声をもとに、次へつなげていきたい」と述べ、らくらくホンシリーズでのスマートフォン展開を示唆した。

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