F-06Eの地味ながらも技術的マイルストーンを分解して知るバラして見ずにはいられない(1/3 ページ)

» 2014年05月27日 11時47分 公開
[柏尾南壮(フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ),ITmedia]

アップルより早かったセンサ制御IC

 2013年9月、アップルはiPhone 5sを発売した。そのアピールポイントとしていたのが「M7」プロセッサだ。これは加速度、ジャイロ、電子コンパスなどのモーションセンサ制御を専門に担当するプロセッサだ。従来、これらのセンサはアプリケーションプロセッサに直接接続していた。

 モーションセンサは、IC内部に振り子のように動く部分を持つタイプもあり、基本的には常に電源が入った状態で刻々と変わるデバイスの姿勢情報を送信している。このため、プロセッサには常に信号を入力している状態だった。動作クロックが高いプロセッサは大容量エンジンと似ており、データの処理量が少なくても動き続けるだけでバッテリーを消耗する。

 アップルはモーションセンサ関連の処理機能をアプリケーションプロセッサから分離し、単体の小型プロセッサとして独立した。iPhone 5sではNXPがこのプロセッサを製造したといわれている。モーションセンサが発する断続的な信号はこのプロセッサがいったん受信して処理し、必要に応じて適宜アプリケーションプロセッサに信号を送るだけでよくなった。アプリケーションプロセッサへの負荷は減少し、バッテリー消費を減らす上でも効果的であったと思われる。

 このあたりを大々的に宣伝したのはアップルだが、先鞭をつけたのは日本のメーカーだ。富士通は「らくらくホン」「らくらくスマートフォン」シリーズで、「M7」同じ機能を果たすプロセッサ「Human Centric Engine」を搭載してきた。デバイスの保持状態に応じてディスプレイの電源制御を行ったり、モーションセンサを睡眠量計や活動量計として利用したりすることが可能だった。また、富士通のWebページでは、省電力化への貢献に関する記述もある。このICは、富士通が設計し、セイコーエプソンが製造を担当していた。

今回取り上げるのは、富士通の「F-06E」だ。その構成パーツを並べてみた(写真=左)。内部に収容した状態ののレイアウト(写真=右)

富士通を離れたマイコンとアナログ事業はどうなる?

 センサ用プロセッサは、富士通の電子部品ビジネスの中核であったマイコン事業部門が担当していた。しかし2013年8月、富士通はこのマイコン事業とアナログ半導体事業を米国のメモリメーカ「Spansinon」に売却した。Spansionはこの事業の買収により、メモリ付マイコンの製造が可能になる。日本でも最近発売されたソニーのプレイステーション4に付属するコントローラのプロセッサ部に同社のメモリ付マイコン製品が搭載される予定だ。筆者が昨年暮れに米国モデルを調査したところ、搭載が確認された。しかし外観は富士通のパッケージで従来と変化はない。これはSpansionと富士通の間で富士通パッケージ保持期間が定められているためと思われる。

限界に挑戦するディスプレイ

 スマートフォンの競争が激化している現在、機能も重要だが、外見も重要な要素になる。ディスプレイも、サイズや解像度以上にボディの端ギリギリまでディスプレイの表示領域を確保することに注力している。

 液晶ディスプレイは、写真立てのように表示しない部分が表示部の周囲を囲っている。ここには液晶物質に電気を流す細かな配線があり、顕微鏡で見ると迷路のように入り組んだ構造だ。液晶用ガラスの上に回路を形成するCircuit On Glass(COG)と呼ぶ技術だ。しかし、シリコン基板のように電子顕微鏡で見ないと配線が見えないほど緻密な線幅の実現は難しく、数百万の画素に伸びる配線はどうしてもある程度の太さを必要とする。この配線の塊が額縁の大部分を占めている。

ディスプレイ構成パーツ(写真=左)とタッチパネルの実装状況(写真=右)

 加えて、ユーザーがタッチパネルを押すときに液晶ガラスにも圧力がかかる。これまでは、額縁を程度確保することでユーザーがパネルの内側を押すようにし、圧力を中心方向に持っていっていた。しかし、狭額縁ではユーザーが液晶ガラスの端を押すようになり、適度な強度が必要になった。

 ディスプレイの上下方向は、スピーカーや各種ボタンを搭載するため、現状ではこの部分の額縁が厚くなるのはやむを得ない。このため狭額縁化は目下のところディスプレイの左右で行っている(ただし、ホームボタンなどが移動すると上下方向にも画面が広がる余地ができる)。これまで1.5ミリ程度が一般的であったが、F-06Eの額縁は半分程度の0.8ミリだった。メーカーはジャパンディスプレイと推定している。

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