iPhone 6s/6s Plusの新機能を支える日本企業 分解で見えたその存在感バラして見ずにはいられない(3/4 ページ)

» 2015年10月21日 14時00分 公開

 メイン基板に収まらない部品を載せるのがフレキシブルプリント基板(FPC)だ。その名の通りフレキシブルで折り曲げが自由で、狭い筐体内で折り紙のように複雑に畳まれて所定の場所に部品を配置する。その多くが日本メーカー製だ。

iPhone 6s PlusのFPC 日本メクトロン製のフレキシブルプリント基板(FPC)。非常に複雑な形状をしている。銅箔には従来の電解銅箔に代わり、断線しにくい圧延銅箔が使用されていると推定
iPhone 6s PlusのFPC リンゴマークの横に住友グループのロゴが記されたフレキシブルプリント基板(FPC)。ここに照度センサなどを搭載する別会社のFPCが接続されており、構造はかなり複雑

 充電・外部接続用のLightningコネクタを備える最も大型のFPCは端末下部にあり、これは日本メクトロンの製品。500万画素のインカメラと通話用マイクなどを搭載した端末上部のFPCには、リンゴマークの下に住友グループのロゴがある。もう1つのマイクとフラッシュ用LEDを備えた端末脇の細いFPCは台湾のFlexium Interconnectのものだ。

 端末の高性能化が進むと電子部品が発する熱も増える。特に熱くなるのが2階建て構造になっている「A9」プロセッサーとDRAM(メインメモリ)だ。フル稼働した場合の温度は70度に達することもある。

iPhone 6s Plusの熱拡散シート ディスプレイと基板、バッテリーを隔てる金属板にはカネカの炭素黒鉛を加工した熱拡散シートがほぼ全面に貼付されていた

 このスポット熱を素早く逃がさないと、周囲にある熱に敏感な電子部品はすぐに故障してしまう。そこで登場するのがカネカの炭素黒鉛を加工した熱拡散シートだ。炭素は天然に存在する元素の中で最も放熱効率が高く、銅箔やマグネシウムよりもスポット熱を早く拡散できる。iPhoneはディスプレイ部と基板、バッテリーを金属版で仕切っているが、金属板の基板側はほぼ全面にこのシートが貼付されている。

カメラのスペックアップを支えるメモリの進化

 性能面で大きく変わったのがカメラとメインメモリだ。カメラは従来の800万画素から1200万画素になった。メーカーはソニー製と推定される。iPhone6s Plusにはアルプス電気が供給する光学手ブレ補正機構も引き続き搭載されている。

 また両モデルとも4K動画の撮影に対応した。フルHDと比較し4倍の解像度となるが、使われるデータ量も多くなり、プロセッサとカメラの橋渡しをするメモリは一度に大容量データを転送しなくてはならない。そのメモリ容量は1Gバイトから2Gバイトに増量された。

 またメモリの規格も、DRAMのLow Power DDR3 SDRAM(LP DDR3)からLow Power DDR4 SDRAM(LP DDR4)になり、大幅な省エネとデータ転送量増大を実現した。各モデルのバッテリー容量は従来モデルより100mAh〜200mAh減っているが、プロセッサやメモリの省エネ化で減少分を補っているようだ。

気になる原価は?

 iPhone6s Plusの原価はおよそ248ドル(約2万9780円)。先代と比べ約20ドルの上昇である。実際には統合され使わなくなった部品もあるので、個々の部品のコストアップ分を足すと20ドルを超えるだろう。なお原価は本体の部品コストのみであり、組立・付属品・流通コストなどは含まれていない。

 コストアップの要因になったものを幾つかご紹介する。まず新搭載の容量性センサーは検知部のFPC単体は2ドル程度と推定されるが、貼付されている金属板、ディスプレイと接着するためのべゼル、メイン基板と接続するためのケーブルとコネクタ、タッチパネル制御ICなどを含めるとトータルコストは9ドル前後と推定される。

 DRAMは1Gバイトから2Gバイトへ容量アップしたことで約7ドルのコストアップ。アウトカメラも800万画素から1200万画素になり、部品価格は約9ドル上昇したとみられる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年12月05日 更新
  1. 飲食店でのスマホ注文に物議、LINEの連携必須に批判も 「客のリソースにただ乗りしないでほしい」 (2025年12月04日)
  2. NHK受信料の“督促強化”に不満や疑問の声 「訪問時のマナーは担当者に指導」と広報 (2025年12月05日)
  3. 「楽天ポイント」と「楽天キャッシュ」は何が違う? 使い分けのポイントを解説 (2025年12月03日)
  4. 「スマホ新法」施行前にKDDIが“重要案内” 「Webブラウザ」と「検索」選択の具体手順を公開 (2025年12月04日)
  5. 三つ折りスマホ「Galaxy Z TriFold」の実機を触ってみた 開けば10型タブレット、価格は約38万円 (2025年12月04日)
  6. 楽天ペイと楽天ポイントのキャンペーンまとめ【12月3日最新版】 1万〜3万ポイント還元のお得な施策あり (2025年12月03日)
  7. 楽天の2年間データ使い放題「バラマキ端末」を入手――楽天モバイル、年内1000万契約達成は確実か (2025年11月30日)
  8. サイゼリヤの“注文アプリ”が賛否を呼ぶ理由──「使いやすい」「紙メニュー前提」など多様な意見 (2025年11月23日)
  9. Z世代で“友人のInstagramアカウント乗っ取り”が流行? いたずらで済まない不正アクセス禁止法違反 保護者が注意すべきこと (2025年12月04日)
  10. 鉛筆デザインのiPad用スタイラスペン「Nelna Pencil」発売 物理ボタンに9機能を設定可能 (2025年12月03日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー