Webを凌駕し、よりローカルな存在に――App Annieの2020年アプリ市場予測を読み解く佐野正弘のスマホビジネス文化論(1/2 ページ)

» 2016年02月17日 11時00分 公開
[佐野正弘ITmedia]

 スマートフォンアプリの市場データなどを提供するApp Annieが、モバイルアプリ市場の今後の予測をまとめたリポートを発表した。同リポートから、今後スマートフォンアプリがどのような存在へ変化していくと見られているのかを確認してみよう。

ユーザーとの接点はWebからアプリへ

 モバイル市場がiPhoneとAndroidで占められるようになると同時に、急速に存在感を高めてきたスマートフォンアプリ。これまでは、急拡大した巨大市場のなかで、いかにビジネスで成功するかということだけが注目され続けてきた。

 だが、「iPhone 3G」が発売され、iPhone向けのアプリマーケット「App Store」がスタートしてからそろそろ8年が経過しようとしている。アプリ市場に関するデータもある程度蓄積され、今後の方向性を見通せるようになってきた。

 2月10日、アプリ市場のデータや分析ツールなどを提供し、その動向を常にウォッチしているApp Annieが、2020年のアプリ市場を予測する「モバイルアプリ市場予測」というリポートを公開した。

 東京五輪を迎える2020年、アプリはわれわれにとってどのような存在になると予測されているのだろうか? App Annie 日本・韓国リージョナルディレクターの滝澤琢人氏の説明を元に、リポートの内容を確認してみよう。

App Annieがモバイルアプリ市場予測リポートを公開 App Annieがモバイルアプリ市場予測リポートを公開した。説明会に登壇したApp Annieの滝澤氏

 リポートによると、2020年にアプリはわれわれにとって「最も重要なインタフェースになる」と位置付けられている。その理由は、やはりスマートフォンの浸透が世界的に進んでいることにあるようだ。

 1万円を切る低価格スマートフォンも登場し、先進国だけでなく新興国のスマートフォン普及率も急速に高まっている。今後ますますスマートフォンユーザーが増え、アプリに触れる人が増えることで、さらにアプリの活用が進むと考えられている。

 スマートフォンの広まりは、従来のWebによる情報収集が、アプリ経由へと置き換わる動きも進んでいるという。それを象徴しているのがアプリの利用時間拡大だ。同社の調査では、2014年から2015年の1年間で利用時間が63%%伸びていることが分かった。こうした背景から滝澤氏も、「今後アプリがWebを置き換える存在して、生活の一部に組み込まていく」と捉えている。

App Annieがモバイルアプリ市場予測リポートを公開 アプリの総利用時間は2014年から2015年の1年で63%伸びており、利用が進んでいることが分かる

 確かに普段のスマートフォンの利用スタイルを見ると、利便性の高さからコミュニケーションやニュースなどもアプリから利用するケースが増えており、Webブラウザを利用する機会が確実に減少しているのを実感できる。しかも、TizenやFirefox OSといったWeb技術を用いたOSによるスマートフォンへのチャレンジも、実質的に失敗に終わった。特定のプレーヤーによる市場寡占の是非は別として、今後アプリがあらゆるネットサービスの接点になっていくことは、確実な情勢といえそうだ。

けん引役はアジアの新興国

 アプリ利用が伸びることで、アプリストア上での消費行動も拡大すると確実視されている。2015年には411億ドル、日本円で約5兆円規模であったのが、2020年には1011億ドル、日本円で12兆円近い規模にまで成長するとApp Annieは予測している。

 ただしこの数値はあくまでアプリストアの仕組みを用いた決済、具体的にはゲーム内のアイテム購入であったり、月額課金の音楽サービスを契約した際の金額である。Amazonや楽天のアプリで商品を購入したり、UberやAirbnbを利用したりした時など、アプリの仕組みを使わずに決済した金額は含まれていないことから、実際にアプリを取り巻く市場は、より大きな規模になると滝澤氏は話す。

App Annieがモバイルアプリ市場予測リポートを公開 アプリストアの収益は1000ドルを超える規模に達するとのことだが、この中にはアプリ外の決済手段を用いた金額は含まれていない

 では、世界的にどの国や地域がアプリの成長をけん引すると考えられているのだろうか。App Annieは、ダウンロード数、売上共に、APAC(アジア太平洋)地域が成長をけん引すると見ているようだ。その理由は、やはりアジアの新興国でスマートフォンが急速に普及しているためだ。特に収益は中国市場が半分以上をけん引すると予測されている。

App Annieがモバイルアプリ市場予測リポートを公開 地域別の収益では、APAC地域が伸びをけん引すると見られている

 だがデバイス1台当たりの収益は、先進国のユーザーが上回ると見られている。そのことを示しているのが、iOSとAndroidの傾向の違いだ。一般的にiOSを搭載するiPhoneやiPadは高額なことから先進国や新興国の富裕層の利用が多く、Androidは低価格なモデルが急増し新興国での利用が大きく伸びているという。

 アプリストア別のダウンロード数を見ると、iOS向けのApp Storeは、先進国と新興国の富裕層への普及が一巡したためか、2020年のダウンロード数は352億件にとどまる予想だ。一方、Android向けであるGoogle Playのダウンロード数は、インドやブラジルなどの新興国が存在感を見せ、2020年には2015年の3倍以上となる1664億件を記録する見込みで、今後大幅な伸びとなるようだ。

 しかしながら利益面で見ると、先進国のユーザーが多いApp Storeの方が高い利益を上げる傾向は変わらず、2020年の予測ではApp Storeが448億ドル(約5.1兆円)に達する。かたやGoogle Playの売上がそれを超えることはないと見られている。

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