2016年のMobile World Congress(MWC)で注目を集めた「VR」(仮想現実)。スマートフォンを用いてVRを実現するヘッドマウントディスプレイ(HMD)の開発に力を入れるスマートフォンメーカーが急増しているが、果たして各社の思惑通り、順調に普及するのだろうか。
1月に米国で実施されたCES、そして2月にスペインで実施されたMWC。双方に足を運んで強く印象に残ったのが、共通して盛り上がりを見せていた「VR」だ。
専用のHMDを装着し、仮想空間に入り込んだような高い没入感を実現するVRは、ここ数年来、特にゲームの分野で大きな盛り上がりを見せている。ただ話題となるのは開発段階のもので、一般ユーザーが手にできる製品は実質的には存在していなかった。
それにもかかわらず、「東京ゲームショウ」などのゲーム関連イベントで、Oculus VRの「Oculus Rift」やソニー・コンピュータエンタテインメントの「PlayStation VR」などが展示されると、毎回体験のために長蛇の列ができ、VRへの関心がいかに高いかをうかがい知ることができた。
一方、VRの盛り上がりはあくまでゲームの分野にとどまっていたのもまた事実だ。VRは、実際にHMDを装着して利用してみなければ内容を理解しづらく、テキストや写真などでイメージを伝えるのが非常に難しい。そうしたことからこれまで、ゲームやテクノロジーに対する関心が高い人達以外が、VRに関心を示すことはあまりなかったのだ。
だが2016年のCESやMWCでは、VR HMDに力を入れる企業の発表が相次ぎ、VRがゲームにとどまらない盛り上がりを見せつつある。CESはOculus VRがブースを構えたことからVRの盛り上がりはある程度想像できたが、スマートフォンなどモバイルに関する展示が主体のMWCで、VRが大きなテーマとなっていたことには、筆者も正直驚いた。
実際のところ、MWCではどれだけVRに関する展示や発表がなされたのだろうか。各スマートフォンメーカーの動向をあらめて振り返ってみよう。
最も大きな話題をもたらしたのは、既にスマートフォンを挿入してVRが体験できるHMD「Gear VR」を発売しているSamsungだ。同社は新スマートフォン「Galaxy S7/S7 edge」の発表イベントで全ての客席にGear VRを設置。発表会の随所でGear VRを装着して体感する演出を施した。
さらにFacebookのマーク・ザッカーバーグCEOがサプライズゲストとして登場。VRを活用したコミュニケーションを研究する「Social VR」設立を発表するなど、その将来性の高さを訴えた。
Facebookは2014年にOculusを買収しており、Gear VRはそのOculus VRと共同で開発したものとなっている。両社はVRで深い関係を築いていることから、ザッカーバーグ氏の登場は、SamsungがVRに対していかに力を注いでいるかを示している。
VRに関する取り組みを発表したのはSamsungだけではない。LG Electronicsも新しいフラッグシップモデル「G5」を発表した際、G5と接続して利用できるVR HMD「LG 360 VR」を発表した。
こちらはGear VRのようにスマートフォンを直接装着するのではなく、G5とケーブルで接続し、HMD自体は眼鏡のように耳にかけて装着するタイプ。それゆえ他のHMDよりも、手軽に利用できることが大きなポイントだ。
スマホのブランドを「ALCATEL ONETOUCH」から「alcatel」に変更したTCL Communicationも、新機種「IDOL 4S」でVRが利用できる仕組みを導入。こちらは端末の製品パッケージ(個装箱)がそのままVR HMDとして使える仕組みとなっており、コストをかけることなくVRを体験できる。
同じ中国メーカーであるLenovoも、VR HMDを手掛けるAntVR Technologyという企業と、スマートフォンを用いたVRに取り組んでいる。一部モデルにはAntVR TechnologyのVR HMDを同梱しており、MWC16のLenovoブースでは新型スマホ「VIBE K5 Plus」に、AntVR製HMDを装着してVRをデモしていた。
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