「NuAns NEO」開発秘話 iPhoneフォロワーから脱して独自のこだわりで挑むアドバイザーの本田雅一が語る(3/4 ページ)

» 2016年02月25日 06時00分 公開
[前橋豪ITmedia]

少ない人数でスクラッチから開発した苦労

―― 小規模なメーカーでも独自デザインのAndroidデバイスを作っているところもありますが、中国やアジア向けが中心で少ないといっても、かなりの台数を生産していますよね。日本市場専用のWindows 10 Mobile搭載機という条件で、独自設計のパートナーを探すのは困難だったのではないですか?

本田 そうですね。中国のEMSは標準品のロゴや色をちょっとカスタマイズして、同じ製品をなるべく多くのメーカーに売ろうとしますから、われわれ程度の規模だとまず断られます。実際、NuAns NEOの開発パートナーを探す中で、10社近い会社に断られました。

 われわれのパートナーとなっているEMSの場合、以前は別の事業分野で大手メーカーとして活躍していた大きな企業ですが、スマートフォン分野への参入が遅れたことで苦戦していました。

 しかし、もともと技術はあるので、既存のEMSに対して競争をしかけていたんですね。市場の伸びが鈍化してからは、そうした中国のEMS企業間による競争も激しくなっています。彼らが独自設計のシャシーを、われわれだけのために作ってくれることになったのは、デザインや企画、そもそものコンセプトなどの部分で、「コイツらとならEMS企業として自分たちの存在感を訴求できるかも?」と思ってくれたからでしょうね。

―― NuAns NEOは少ない人数でスクラッチから開発したことが話題ですが、そのプロセスではかなり苦労されたのではないですか?

本田 みんながみんな、さまざまなフェーズでそれぞれできることをやっていかないと、少ない人数でモノ作りはできません。例えばデザインを担当したTENTの2人は、デザインコンセプトをまとめ、メカニカルデザインをEMSに指示するだけでなく、実際に採用する素材を見極め、さらに生産技術との擦り合わせでうまくいかない部分を細かく修正したり指示を出したりしなければならない。

 現場から「いやそれじゃうまくいかない」という報告が来たとき、本当に無理なのか技術面での可能性をみんなで考えたうえで、さらに突き詰めていくのか、どこかで妥協するのかの線引きにも加わります。さらに細かいことですが、パッケージデザインやマニュアルのデザイン、Webページのアートディレクションなど、デザインに関わる全てを、プロセスごとに細かく連絡しあいながら進めています。

 EMSとの開発のやりとりも、仕様を決めたらほぼ丸投げで終わると思っている方もいるようですが、実際にEMSで新規製品の立ち上げに携わった人ならそれではモノが実際には上がってこないことが分かるでしょう。

 開発リードの永山氏はEMSとのコミュニケーションをするだけでなく、1つ1つ「できない」ということに対して、「それはおかしい。できるはずだ」と部品仕様をチェックして、Windows自身の仕様と突き合わせながら、実際の製品へと落とし込んでいく必要がありました。

―― MicrosoftはQualcommと共同で、Windows 10 Mobile搭載デバイスのシャシースペックを幾つか決めていますが、どの価格帯かを選んで外観などをデザインすれば、後はEMSがきちんと動くまで落とし込んでくれる、というわけではないのですね。

本田 例えば「FLIP」というカバーを選択すると、ホールセンサー(磁気センサー)を用いたサスペンド/レジューム機能が利用できます。磁石を検知してサスペンドし、磁石が外れると自動でレジュームするというiPadなどでも使われている方法ですね。

 ところが、アイデアを話しても最初は「できない」って言うわけです。EMSも、現地のMicrosoft担当者も。ところが、開発者情報を探したり、日本や米国のMicrosoft関係者に探りを入れたりしていると、実際にはできそうだと分かってくる。すると、相手もだんだん引っ張られて調べてくれて、「どうやらできるようだ」となります。

FLIP いわゆる手帳型のFLIPケース。ホールセンサー(磁気センサー)を利用し、閉じるとサスペンド、開くとレジュームの動作が行える

本田 試作品に対してフィードバックを戻しながら、実際の生産になれば、現場に立ち会って検品の方法なども検討しなければなりませんし、放り投げればできるなんてことはないですよ。そこは標準品をそのまま採用するだけの製品との大きな違いです。

 ただ、いずれにしろ全て1人ではできないので、みんなで意見を出して集約して前に進めていく必要があります。パッケージデザインなんかは、たまたま全員がそろってるときに検討していたので、どうやれば安価な楕円の紙管にぴったり沿うように、合理的なパッケージができるか、みんなでパズルを解くようにやっていました。

パッケージ 楕円の紙管を採用したユニークなパッケージは、本体やカバーを取り外した後、貯金箱として再利用できる工夫も

―― 今回の開発で最も困難だった部分は何ですか?

本田 あらゆる面と言いたいところですが、個人的に一番心配していたのはTWOTONEのカバーですね。生産技術に近い話なので、あまり外に向けて「難しいことをやっている」とは説明していませんが、最初は「これじゃあ量産できないじゃないか」とみんなで頭を抱えていました。

 断面がC字型に巻き込む形になっているので、インモールド成型(成型時に金型に何らかの素材を入れてから樹脂成型すること)で作ると、外側に金型の接合線(パーティングライン:PL)が出てしまうんです。

―― 確かに、余計な接合線があると、デザインの魅力は損なわれますよね。

本田 これは巻き込んで作るために、スライド型というものを使うからなんですが、外から見える部分にPLは入れたくない。PLなしでとなると、外装の素材で全体を覆うことができなくなってしまう。真横の部分を合成皮革や木製シートで覆えなくなるんですね。

 でも、スマートフォンを手に持ったとき、実際にフィーリングを感じるのは本体の横の部分ですから、真横の丸い部分全体に木材のシート(テナージュ)やクラリーノ、ウルトラスエードなどがなければ、触感を出せません。

 こういった重要な部分は、可能な限り全員でパートナーや要素技術を持つ会社を訪問して、どうすれば実現できるかを考えたりしました。結果としてPLなしのカバーになりましたが、人数が少ないからこそできたことですね。

TWOTONE 上下の2ピースに分かれ、合計64種類の組み合わせが楽しめる「TWOTONE」カバー。使用時に手が触れる側面までカバーすることで、外観だけでなく、触感にもこだわった

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