「AppleがiPhoneの新モデルを発表する」というのは、テクノロジー業界に携わる多くの人にとってお祭りだ。しかし、スマートフォンに常に最新・最高のスペックを求めるわけではない一般の人々にとってはどうだろう。
「おっ、新しいiPhoneが出たのか。今度は何が変わったのかな? 画面サイズが大きくなった? カメラの画素数が向上? ふーん、そうなんだ……」。実のところ、それくらいで興味を失ってしまう人も少なくないのではないか。
2007年の初登場以来、年々バージョンアップを繰り返してその完成度を高めてきたiPhoneは、斬新さという意味ではそろそろ頭打ちになりつつあるのでは――ユーザーからそんな印象を抱かれていてもおかしくはない。
しかし、今回発表された「iPhone SE」はこれまでの新製品発表とは少々事情が異なっている。何せ、「最新・最高のスペックを持つ新モデル」ではないのだ。
iPhone SEは、2013年秋に発売された「iPhone 5s」の小型(4型)ボディーに、“現時点では最高”のiPhone 6sの性能をほぼそのまま乗せ換えたモデルだ。もちろん、「3D Touch」や「第2世代Touch ID」が非搭載である点など、全部が全部6sと同じというわけではないが、A9プロセッサや1200万画素のアウトカメラの採用など、主要な部分はほぼ6sのスペックを踏襲している。
筆者が発表を見て最初に思ったのは、「これは誰に向けた新モデルなのだろう?」ということだった。誤解してほしくないのだが、これはいわゆる反語表現のようなつもりはなく、純粋にそう思ってしまったのだ。つまり、iPhone SEが魅力的なモデルであることは感覚としてすんなり理解できたのだが、同時に「今までとどこか違うな」とも感じたのだった。
少し考えてみればこの理由は明白で、先にも書いた通りiPhone SEは「最新・最高のスペックを持つ新モデル」ではないからである。過去に「iPhone 5c」などの例外はあるが、「iPhoneの最新モデル」とはこれまでずっと「最高スペックのモデル」と同義だった。5cにしても、当時としては最高スペックの5sとの同時発表だ。それが、今回のSEは最新=最高「ではない」。
いわゆるアーリーアダプターと呼ばれるような、最新・最高の製品を手に入れたいガジェット好きは、既にiPhone 6sかiPhone 6s Plusを購入しているはずで、それらと比べると今回のSEは、良く見ても同等か少し劣る程度のスペックだ。これまで新モデルが発表されるたびに必ず買い換えてきた感度の高いユーザーたちは、SEにも同じように飛び付くのだろうか? それが率直な疑問だった。
しかしその後、現地などから徐々に情報が集まってくるにつれて、この疑問への答えが自分なりに見つかってきた。前置きが少々長くなったが、以下そのことについて書いてみたい。
iPhone SEは誰のための製品か?
まず最も分かりやすい答えは、「4型というサイズに強い魅力を感じるけれど、スペックは高いに越したことはない」というユーザーだ。この層は、恐らく(筆者の当初の疑問に反して)かなり多い。
現在iPhone 6シリーズ(6/6s、6 Plus/6s Plus)を使用しているユーザーの中には、この層が一定数いると思われる。特に6 Plus/6s Plusは、「この大画面に慣れたらもう元のサイズには戻れない」という人がいる一方で、「がんばっては(?)みたけれど、どうしてもしっくりこなかった」という人もそれなりにいる印象だ。両手持ちしないと操作が難しい点や、200グラム近い重量の問題など、細かい理由は人それぞれだと思う。
同じ理由は、現時点で5s以前のiPhoneを使っているユーザーにも十分当てはまることだと思う。「5s(5c/5/4s)のサイズが気に入っていたけれど、さすがに何年も使い倒したのでそろそろ買い替え時だと思っていた」というユーザーには、SEはまさに「ちょうど待っていた製品」であるはずだ。
次に考えられるのは、「SIMロックフリーでiPhoneを使ってみたいユーザー」の最初の1台に向いているのでは、ということだ。
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