スマートフォンにしても、タブレットにしても、恐ろしいのはなくしてしまうことだ。本体の価格は高くても10万円程度だが、それ以上に中のデータは個人情報の塊であり、これが他人に知られるのはもちろんのこと、リモートから本体の初期化をして個人情報を失うのも最後の手段として致し方ないとはいえ、持ち主にとっては相当の痛手だ。
実は、去る2016年、12月も終わる頃、弊部署の部長がAndroidタブレットを紛失した。
結論からいうと何とかそのタブレットを取り戻すことができたのだが、なかなか大変な道のりだったようなので、その一部始終を紹介しよう。
―― 今回は何やら大変だったようで。お疲れさまでした。まず、どういう状況でなくしたんですか?
部長 その日は飲み会があったんだけれど、帰りにタクシーを使ったんだよね。それで降りる時にタクシーの中に忘れちゃったみたいで。降りてから割とすぐに気付いて、もう1台のタブレットからAndroidデバイスマネージャーで確認したら、位置情報がすごい速度で動いてて、ああこれはタクシーの中だと。その日はもう遅かったから、翌日にタクシー会社に電話することにして寝たよ。
部長 ところが、タクシー会社に連絡しても「車内にタブレットはなかった」って言われて。そこであらためてAndroidデバイスマネージャーから確認したら、なんか新橋にあるっぽいんだよね。場所が分かったから、警察に遺失物届を出してからそこに行ってみたんだけれど、そこが商業ビルで1階から8階くらいまであって、お店が10店舗くらい、その上に住居が何世帯かある感じで途方に暮れちゃった。
―― うわあ……。GPSから2次元の位置情報が分かっても、高さまでは分からないというのはつらいところですね。それどうしたんですか。
部長 最初は途方に暮れたんだけれど、「飛び込み営業をさせられる新卒」だと思うことにして下から上まで全部聞いて回ったよ。
―― 全部って、住居まで含めてですか? けげんな顔されませんでした?
部長 されたされた。でも住民の一人のおばあちゃんは「大変ですねえ」って気遣ってくれてそれには癒やされたな。あとお店は事情を説明したら「忘れ物として保管していないか確認しますね」という風に対応してくれたよ。
部長 でも、下から上まで聞いて回っても見つからなかったんだよね。位置情報は間違いなくここなのに。おかしいなーと思ってしばらく位置情報を見てたら、それが移動し始めたんだよ。新橋駅のほうに。絶対に逃がさんぞと追跡を続けたよ。
―― 執念ですね。でもバッテリーが切れたら追跡できなくなりますし、そうするしかなかったと。
部長 そうそう。それにAndroidデバイスマネージャーから5分おきに着信音を最大で鳴らしたり、画面上に「拾ったらここに電話して」ってメッセージを表示したりしていたからバッテリーの持ち的にも追えるのは今日までだろうと思って。ていうかメイン端末だからさすがにそれなしで年末年始を過ごしたくはなかったし。
―― え、メイン端末だったんですか? 他にスマートフォンは?
部長 持ってないよ。電話もタブレットだし、このサイズが好きなんだよね。昔の端末でいうとAppleの「Newton MessagePad」が好きで、それからずっとタブレットユーザーだね。
―― なるほど、メイン端末ならそれは必死になりますわ……。
部長 それで、新橋駅から山手線に乗ったらしいから自分も山手線に乗って追っかけてみると、どうやら新大久保駅で降りたと。路地の狭い方に行かれるとさすがに嫌だなあとは思ったんだけれど、位置情報の行方を見守ってみると近くの交番に入っていった。交番に持ち込んだなら取り戻せる! とすぐにその交番に入って「今タブレット端末が持ち込まれませんでしたか?」ってお巡りさんに尋ねたらすぐそこにタブレットを持ち込んだ人がいたみたいで、その人と引き離す形で事情聴取を受けて、「間違いなくあなたが持ち主ですね」って返してもらえたよ。
―― 戻ってきてなによりです。ちなみに相手の方は……?
部長 お巡りさんに聞いてみると、「交番近くのコンビニで拾ったから届けた」って主張してたみたい。こっちは新橋から追跡してるんだけれどね。ただ、位置情報は特に証拠にはならないし、事情聴取はちぐはぐな回答もあったみたいだけれどその後は特に何もなかったらしい。まあ、こっちとしては「タブレットをなくした」という状態は回復したわけで、それ以上何かしてほしいというのもないけれどね。
部長 ただ、戻ってきた端末を確認してみるとUSB端子の部分がだいぶ傷ついていたよ。microUSBケーブルで充電しようとして何度もガスガスやったんだろうね。これ、端子がUSB Type-Cだから刺さるはずないんだけれど。多分、持っていた人は充電できないわ、5分ごとに最大音量でアラーム鳴るわ、ロックは解除できないし常に画面にメッセージが表示されているわでどうしようもなかったんだと思う。
―― Type-Cだったことが幸か不幸かは微妙ですが、Androidデバイスマネージャーが大活躍でしたね。
部長 うん。位置情報が分かるし、着信音が鳴らせる、遠隔ロックしてメッセージが表示できる、いざとなったら端末データも消去できる、と端末を探す上で申し分ないと思ったよ。探したい端末で設定から位置情報をオフにしちゃってるとさすがに使えないんだけれど、たいていオンになっているはずだしほとんど事前の準備なく使えるっていうのもいいよね。
―― 部屋の中でどこにいったか分からないという時にも使えますね。でも、Androidデバイスマネージャーのウエルカム画面を見ると「端末を自分で取り戻そうとしないでください」とありますよ。
部長 そりゃ危ないしね。この件を後で親に話したら「あんたいい加減にしなさいよ」って怒られたよ。
以上が部長のタブレットを巡る2016年末の一部始終だ。Androidデバイスマネージャーに表示されている通り、端末を自分で取り戻すのは犯人との接触も予想されるため危険な行為で決して勧められない。しかし、Androidデバイスマネージャーで遠隔からここまで追えるのだというポテンシャルも理解していただけたかと思う。
端末が手元に見つからない時、場所の見当もつかない時などに「Androidデバイスマネージャーで見つけられる」ということを思い出してみてほしい。
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