総務省は、2016年に「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」、2017年に「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」を策定し、行き過ぎた端末購入補助を防ぐ取り組みを行ってきた。この運用状況について、再度点検を行う必要があると、報告書(案)に記載されている。
具体的には、MNOが販売代理店に端末の価格や値引き額を実質的に提示することは、業務改善命令の対象になることを明確化するガイドラインを策定するとしている。また、端末購入補助の適正化に向けて、公正取引委員会との連携を行っていくことが適当とも指摘している。総務省が販売代理店による独占禁止法抵触の可能性がある事案を認知した場合には、公正取引委員会に情報提供を行うことを検討するとしている。
行き過ぎた端末購入補助を行っているMVNOについても、ガイドラインの扱いに準じて是正を勧告するとある。これまではMNOが対象だったが、それがMVNOまで広がった形だ。
報告書(案)の説明後、構成員による意見交換が行われた。日本総合研究所の大谷和子氏は、「ミルク補給」の用語が「イメージしやすい言葉だが、個人的にはあまり品のいい言葉ではないと思う」と変更を求めた。
野村総合研究所 コンサルティング事業本部パートナーの北 俊一氏は、「ミルク補給」について、「私が使ったと思う」と答えて「上品な言葉を考えてほしい」と笑いを誘った後、残債免除等施策についての対応について、「もっと踏み込んでほしい」とコメントした。
「回線が2年縛り、端末も2年縛り、25カ月目に残債免除を申し出て、また4年縛りになるならまだいいが、26カ月目、27カ月目に申し出て残債免除してとなると、2年縛りで違約金なしで解約できる時期と(残債を払い終える時期が)ずれていく。いつ移行しても残債を払わされるか、違約金がかかることになる。さらに固定回線があったり、電気があったりと、いろんなサービスが付帯されていて、それぞれの契約期間がずれている。後から出てくる事業者にとって、ユーザーが完全に縛られている状況になっていて、覆すことが厳しい。ここについてはもう一度、議論してもらいたい」と要望した。
また、端末販売の適正化については、「ギリギリの線まで記述してもらった」と評価したが、「公正取引委員会との連携は、結構しんどいと想像される。総務省、公正取引委員会がそれぞれの役割をそれぞれしっかり果たしてもらいたい。総務省は端末の販売状況を注視し、それに応じて対応を柔軟に見直していくことになるので、しっかりやってもらいたい」と意見も忘れない。
「端末の安売りを禁じている理由は、ユーザー間の不公平性の是正、体力のないMVNOや新規参入のMNOが公正に競争できるようにするため。単にキャリアによる奨励金を減らし、販売店も安売りしないとなると、端末の価格が上がっただけと思われてしまう。通信事業者が縮減した補助金をユーザーに還元しているかどうかを見ていくことも総務省の重要な仕事。これがないと、余計なことをしたという話になる」
座長を務めている明治大学法学部 教授の新美育文氏は、端末割賦代金の残債免除について「キャッシュバックが(ユーザーの)引き抜きのために使われ、残債免除は引き止めに使われている。まだ問題は出ていないが、十分慎重に見ていく必要がある。ユーザー間の不公平につながれば由々しき問題」と改めて指摘した。
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