「iPhone SE」の引退にみる “古き良きもの”と決別してきたAppleITはみ出しコラム

» 2018年09月16日 06時00分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 Appleが2018年の新iPhoneを発表しました。今年は「XS(テンエス)」「XS Max(テンエスマックス」「XR(テンアール)」の3機種。そして、昨年デビューした「X(テン)」、数年間生き延びた「SE」、2015年発売の「6s/6s Plus」は引退です。

 iPhone SEが消えたのは、3万円台で買えるiPhoneがなくなったというだけでなく、4型というイマドキにしては小さいディスプレイとの決別も意味します。iPhone 6sも4.7型でした。

drop 0 左から「iPhone SE」「iPhone 6s」「iPhone 6s Plus」。いずれもiPhoneの新ラインアップから姿を消しました

 今、Googleで「"iPhone SE" スペック」と検索して出てきた「iPhone SE - 仕様 - Apple(日本)」という公式サイトへのリンクをクリックしたら、「ようこそビッグスクリーンの世界へ。」というiPhone XSのサイトにリダイレクトされました。

drop 1 「iPhone SE」の仕様表が見たかったのに……

 まるでAppleに「コンパクトが良いのは分かるけど、使ってみれば良さが分かるから大画面の世界においで」といわれているようです。

drop 2 発表イベントではフィル・シラーさんから「大画面だけどコンパクトですよ」な説明も

 もう一つ、Appleが完全に決別したのは3.5mmオーディオジャックです。2016年発売の「iPhone 7」で初めてこのジャックがなくなったときは、「なくさないで」という署名運動までありました。

drop 3 3.5mmオーディオジャックの継続をAppleに訴える署名(オンライン署名ページのSumOfUsより)

 今回iPhone SEとiPhone 6s/6s Plusが消えたことで、3.5mmオーディオジャックのあるiPhoneはなくなりました。同時に、これまでは3.5mmオーディオジャックのないiPhoneには「Lightning - 3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ」が付属していましたが、これがなくなり、別売になりました

 これも私には、「最後に3.5mmジャックのヘッドフォンを買ったのは2年前でしょう? そろそろ新しい(LightningかBluetoothの)ヘッドフォンを買えば? なんだったらAirPodsがおすすめだけど」というメッセージに見えます。

 Appleはこれまでも、愛着を寄せる“古き良きもの”からユーザーを引き剥がして、結局は新製品を「い、いわれてみれば、これも悪くないよね」と思わせてきました。

 その度に使えなくなったケーブルや周辺機器を前にため息をついたものですが、このやり方でぐいぐいとユーザーと業界を新しい世界に導いてきたともいえます。

 例えば、Macintoshのポート類。うちには1989年発売の「Macintosh SE/30」があった(今は実家に居候)んですが、これの背中にはキーボードとマウス用のADB、ストレージ用のSCSI、プリンタ用のRS-422があります。正面にはフロッピーディスクのスロットも。

drop 4 「Macintosh SE/30」。写真は蔦屋家電の「Apple Authorized Reseller」に展示されていたもの

 これらのポートはもう使われていません。ADB、SCSI、RS-422のシリアルポートは1998年の「iMac」では全てUSBに切り替わりました。フロッピーを入れるスロットがなくなり、CD/CD-ROMのトレイだけになりました。あの衝撃は忘れられません。

drop 5 思い切ったUSB推しが衝撃だった「iMac」

 それからもMacのポートは、FireWireやThunderboltに進化し、ネットワークはWi-FiやBluetoothといったワイヤレス接続が標準に、そして有線での接続は何でもUSB-C(Thunderbolt 3)に集約されてきています。

drop 6 「MacBook」はUSB-Cポートに何でも集約(MacBookには3.5mmオーディオジャックがあります)

 周辺機器メーカーさんも大変だと思いますが、Appleが新しい技術に移るたびに周辺機器メーカーさんが泣きながら対応する新製品を出してくれて、結果的にユーザーは早く快適に使えるようになるという構図です。

 そんなわけで、iPhone SEを少しの間悼んだら、“進化は痛みを伴うもの”だと割り切ってAppleについていけばいいんじゃないでしょうか。

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