英Opensignalの調査で連続して1位を獲得しているKDDIだが、ソフトバンクもかつては「一貫した品質」で首位を獲得していた。ここ数回はKDDIに押されているものの、個別や地域別の指標を見ていくと同社が肉薄していることも少なくない。ソフトバンクの代表取締役社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏は、「KDDIに一歩遅れているというような結果を出すところはあるが、そんなに見劣りするとは思っていない」と語っている。
実際、筆者も大手キャリア4社の回線を使い分けているが、特に都心部ではソフトバンクの通信が非常に快適で、スループットが出ており、パケ詰まりすることがほとんどない。あくまで“体感”だが、KDDIとの品質差はそこまで大きくない印象だ。同社傘下の調査機関Agoopのデータでも、小差でKDDIを上回っている部分がある。では、ソフトバンクはどのような戦略でネットワーク品質を高めてきたのか。その秘訣(ひけつ)や、5G SAに関する取り組みが明かされた。
ユーザーの体感を重視しながら品質を上げていくこと。これが、ソフトバンクのネットワークに関する基本方針だ。宮川氏も、決算説明会で「顧客体験をよくしてくれというのが僕のオファー」と語っており、顧客満足度調査でトップに立つ目標を掲げる。2020年にサービスが始まった5Gで同社が取った戦術が、まずカバレッジを広げ、その上により大容量の周波数を重ねていくことだ。
ソフトバンクの執行役員 テクノロジーユニット統括 モバイル&ネットワーク本部の大矢晃之氏は、「もともとLTEのカバレッジが充実していたので、それに近い形でFDD(周波数分割複信)でカバレッジを作り、5Gらしさということで大容量のTDD(時分割複信)を足し、全ての周波数をバランスよく使い分けることで体感をいいものにすることに、一貫して取り組んでいる」と語る。
ドコモのように、まず5G専用に導入された高い周波数を使って5Gのエリアを作り、その後に4Gから転用した周波数でエリアを拡張していく方針を取っていたキャリアもあるが、KDDIやソフトバンクはどちらかといえば、当初はカバレッジを重視。途切れないように5Gを面展開した後、容量が必要な場所に周波数を重ねていった。
結果として、ソフトバンクの5G人口カバー率は現在、96%を超えており、基地局数も10万を突破。5G端末の浸透率は80%を超えており、接続率も主要都市では37%を超えているという。また、東京都心部などでは、この数字が50%近くまで上がることもあり、「増え続けているトラフィックは、ほぼ5Gで吸収している」(同)状況になっているという。
次のステップとして同社が取り組んでいるのが、5Gを単独で使う5G SA(スタンドアロン)の拡大だ。ソフトバンクは当初、FWA(Fixed Wireless Access)の「SoftBank Air」から5G SAを導入。「最初の段階から5Gコアを作り、SoftBank Airを収容し、その後の拡張で音声通話やIoTに使えるようにした」と段階を踏んで5G SAを実装してきた。「広く使っていただく際には、安定して使えるよう育ててきた」(同)というわけだ。
その5G SAのエリアは、2025年から急速に拡大しているという。当初は東京、大阪、名古屋などの中心部だけだった5G SAだが、「その周辺部もかなり広いエリアに渡ってSAで使えるようになってきた」(同)。現時点では住所のリストとして提供されている一方で、そのPDFもページ数が膨大になってきたことから「なるべく早く、年度末までにはマップ化する」(同)という。エリアが広がり、ついにマップで示せる段階に到達した格好だ。
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