世界を変える5G

ソフトバンクのネットワーク品質が向上しているワケ 鍵を握る「5G SA」と「4つの技術」石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2025年12月13日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

AIでネットワーク改善のサイクルを短縮、屋内対策やカバレッジは今後の課題か

 3つ目の鍵になるのが、ソフトバンクが4Gのころから展開していたMassive MIMOだ。これは、多素子のアンテナで基地局あたりの収容量を増やすためのもの。通常のMassive MIMOに加え、「細かく同時に存在する端末にビームを当てる」(同)マルチユーザーMIMOを導入することで、キャパシティーを2.7倍に増強。さらに、3.4GHz、3.5GHz、3.9GHzの3周波数帯に対応した小型の無線機を導入し、「本格的に拡大していく方向で進めている」(同)。

ソフトバンク5G Massive MIMOをより積極的に活用することで、品質を高めていくという

 4つ目として大矢氏が挙げたのが、AIの活用だ。「CAの最適化やカバレッジ最適化のシステムは開発済み。今まではルールベースで個別に動いていて、その間のチューニングは人がやっていた」(同)。CAの組み合わせなど、パターンが多岐にわたるものをAIに任せることで最適化しやすくなる。また、「劣化している場所や体感が悪い場所を見つけるシステムがあり、AIを活用することでより細かい粒度で対策でき、サイクルを短くできる」(同)。

 こうした品質劣化の検知や改善には通常、1週間から1カ月程度の時間を要していたが、AIを活用していけば「数分のレベルで改善でき、ネットワークの品質を上げていくことができる」(同)。これらは今後の実装になるが、最終的には、全て自動化することを目標に取り組んでいるという。

ソフトバンク5G AIで各種パラメーターの入力を自動化していく他、品質劣化の検知を早期に行い、対策までのリードタイムを短縮する予定だ

 また、局所的にネットワークが混雑するイベント会場などでは、ミリ波を活用する。ただし、現時点ではミリ波を直接つかめる端末は、ハイエンドモデルのごく一部に限定される。そこで、ソフトバンクではミリ波を受け、Wi-Fiに変換するルーターを導入する。これによって、幅広い端末がWi-Fi経由でミリ波に接続できるようにしていく。

ソフトバンク5G 局所的なトラフィック対策として、ミリ波も活用する

 5G SAを早期導入するソフトバンクだが、これを生かし、5G上で音声通話を行う「VoNR」や、IoT向けの通信スペックを抑えた「RedCap」を導入するなど、サービス面でも差別化を図っている。例えば、VoNRはLTEのVoLTEに落とさなければならない場合と比べて、よりスムーズな発着信が可能になるという。VoNRをいち早く始めたのは「音声が(5G SA上で)できる環境を整えないと、体感が落ちてしまう」(同)という背景があるという。

ソフトバンク5G VoNRやRedCapといった5G SAならではの技術も他社に先駆けて導入できた

 ただ、屋内の対策は必ずしも思い通りに進んでいないこともあるという。こうした場所では「ビルオーナーの都合もあるし、置ける設備も限られていて、最近ではインフラシェアリングも増えている」(同)からだ。特に、奥まった場所は「周波数が届かず、どうしてもLTEに落ちてしまうことがある」(同)という。

 ここまで挙げてきた対策は、いずれも都市部で比較的トラフィックが多いエリアの通信品質を上げていくものだが、エリアの広さにも課題がある。実際、冒頭で挙げたOpensignalのデータでも、ソフトバンクは広さを示す指標ではドコモやKDDIに及んでいない。こうした場所は、「基地局が足りていないところもあれば、伝送路がなく、細い帯域でしかつながらなかったり、高額になったりする」(同)ため、対策が難しい側面もある。

 とはいえ、「そこも広げていきたい気持ちはもちろんある」(同)といい、エリアの広さにもこだわっていく方針だ。インフラシェアリングの鉄塔や、KDDIと共同で実施している「5G JAPAN」を使い、エリアのさらなる拡大も検討しているという。品質面での評価が高くなってきたソフトバンクのネットワークだが、その品質をより広いエリアに広げていけるかも問われているといえそうだ。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年06月25日 更新
  1. KDDIのISP向けメールシステムで不正アクセス BIGLOBEや@niftyなどで情報漏えいの恐れ (2026年06月23日)
  2. 折りたたみiPhoneに近いサイズ感? 「HUAWEI Pura X Max」実機レビュー 横長“パスポート型”が合理的な理由 (2026年06月24日)
  3. Nothingが新スマホ「Phone (4b)」を7月7日に発表 「新しい世代のユーザーに届ける」 (2026年06月23日)
  4. 「ソフトバンクの株価なぜ低迷」「料金値上げの影響」「PayPayに次ぐ新事業は?」 株主総会での質疑応答 (2026年06月24日)
  5. NHKのスクランブル化、会長が完全否定 ネット上に「見ないのに払うのは納得いかない」との声 (2026年06月22日)
  6. 年会費9万9000円の価値はある? 最上位クレカ「Olive Infinite」と「Visa Infinite」の違いと持つべき人 (2026年06月25日)
  7. 楽天モバイルが「WiFiスポット」開始 ローミング終了で「つながらない」ユーザー救済か (2026年06月19日)
  8. 「iPhone 17e」と「iPhone 17」どちらが買いか? 2機種を使い込んで分かった“スペック表にない違い” (2026年04月29日)
  9. 腰掛け式のポータブルファン「FIELD WAIST FAN」を試す 4580円でファン×大容量バッテリー×ライトの安心感 (2026年06月22日)
  10. 「iPhone 17e」「Pixel 10a」を徹底比較 10万円以下で手に入る高バランスモデルの性能差はどれほど? (2026年06月22日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー