今年(2018年)もやってきた新型iPhoneシーズン。
わたしは片手で撮れるサイズにこだわって「iPhone XS」を買い、「iPhone 7 Plus」や「iPhone X」とカメラ面での特徴を比べてみている。前編では、画角や「スマートHDR」の効果などについてチェックした。
後編では「ボケ撮影」や「インカメラ」などの特徴を見ていくのである。
やっときました「ボケ」。英語だと「bokeh」。アプリ上の表記は「被写界深度」。
Androidのデュアルカメラスマホでは、ボケ具合を後から調整する機能を持つモデルもあるけれど、今までのデュアルカメラiPhoneはAppleらしく「我々が考える最高のボケ具合はこれだ!」てな感じで、どのくらいボケさせるかはカメラ任せだった。
でもiPhone XSからは、ポートレートモードで撮影した写真のボケ具合を後から「写真」アプリで調節できるようになったのだ。
ポートレートモードで撮った写真を写真アプリで開いて「編集」にすると、下に被写界深度と書かれたスライダーが出てくる。
デフォルト値は「F4.5」で、一番ボケさせるとF1.4。逆はF16だ。まあ、数字を小さくすると被写界深度が浅くなる(=ボケが大きくなる)ので、ピントの合う範囲が狭くなる。数字を大きくするとその逆、と覚えておけば良い。
で、気になるのがディテール。チェックしてみよう。
人の顔は立体的なので、F1.4相当まで被写界深度を浅くすると、目にはピントが合ってるけど耳はちょっとボケるはずである。ほおづえをつくと、小指側と人差し指側の数cmの奥行きの差でボケ具合がかわるはずである。
iPhone XSはどうか。F1.4とF4.5で比べてみよう。
F1.4にすると、目にピントが合い、徐々にボケていき、背景は大きくふわっとボケたことが良く分かる。立体的に滑らかにボケているので、書き割り感がない。一方、F4.5だと手や髪の毛、服はあまりボケていない。
こういうディテールって大事。
もう1つチェック。F1.4にしたこの写真をどうぞ。
この写真のチェックポイントは2つ。
1つは背景のボケ具合。なんとなく背景が丸くなってるように見えるでしょう。
拡大してみるとよく分かる。
中央から周辺部に行くに従ってボケが円形からレモン形になっている。だから背景がグルッとしてるように見えるのだ。
実際、多くのリアルな50mmくらいのレンズは、背景がこんな感じにボケる。たぶん何らかの実在のレンズを参考にしたんじゃないかと思う。ここまで強調しなくても、とは思うけどね。
もう1つのポイントは「指先問題」。ポートレートモード(とそれに類する機能を持つカメラ)で撮影するときに顔から手を離してピースサインなんかだすと、指先をうまく認識できずに背景に溶けちゃうことがある。どうしても「細いもの」「小さいもの」を検出するのは苦手だったりするのだ。
iPhone XSも例外ではなく、人差し指の先がちょっと曖昧になっておりました。
同じ理由で、飲み物を撮るとストローだけ背景に溶けちゃうこともある。なので「溶けストロー問題」ともいう……んじゃなかろうか。
なお、あとから背景ボケはいじれるけど、フォーカス位置の再指定(指定し直し)機能はありません。
本来、被写界深度が浅いと、背景だけじゃなくて前景もボケなきゃおかしい。
とりあえずデジタル一眼カメラ(30mm・F1.4レンズ)で撮った写真を見てみよう。
ご覧の通り、左は手前のダルマに、右は後ろのネコにピントを合わせた。前も後ろもボケているのが分かると思う。
光学的には手前に合わせたら後ろが、後ろに合わせたら手前がボケる……はず。
同じことをiPhone XSでやるとどうなるか。左が手前のダルマに合わせてあとからF1.4にしたもの。右は後ろの猫に(以下同文)。
ダルマにピントを合わせると、一眼カメラと同様に背景のネコはボケる。しかし、ネコにピントを合わせると、背景はきれいにボケるが前景がボケない。極端に手前にあるものなら深度を浅くするとボケるようではありますが。
まあ、他社のスマホでも前景ボケをキレイに表現してくれるカメラって見た記憶がない。iPhoneだけがどうこうってことではないのだけれど、いつかは完璧な前景ボケもみせていただければと思う次第です。望遠カメラは近距離にフォーカスが合わないので、難しい作業だとは思うけれども……。
ちなみに、以前紹介した「Focos(フォコス)」ってアプリを使うと、ちょっと不自然さはあるけれど前景ボケも処理してくれる。ある程度はフォーカス位置も変更できる。
もっと楽しみたい人は、サードパーティーのカメラアプリも活用しよう、ってことで
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