Netflixが意外とデータ容量を消費しない理由 本社で見た最新テクノロジー(2/3 ページ)

» 2018年10月16日 15時00分 公開
[房野麻子ITmedia]

Wi-Fi接続時に自動でダウンロードする機能も

 モバイルで動画を視聴する場合、やはりデータ通信容量が気になります。Netflixは2016年からコンテンツのダウンロードに対応し、モバイルデータ通信を使わずに視聴できるようにもなっていますが、そこに一工夫加えたのが「スマートダウンロード」です。

 Wi-Fiでコンテンツをダウンロードするとデータ消費を抑えられますが、ちょっと面倒に感じる作業です。また、ストレージの空き容量の心配もあり、見終わったらいちいち削除しなくてはなりません。それを自動化したのがスマートダウンロードです。

 連続ドラマを見るのに便利な機能で、1話を見終わると自動的に削除され、次のエピソードがWi-Fi接続時に自動でダウンロードされます。例えば、毎日通勤中にドラマを見ているなら、通勤中に見たものは削除され、Wi-Fiのある職場で新たなコンテンツをダウンロードし、帰宅中に見るという使い方ができます。スマートダウンロードの設定をオンにしておけば、1話目だけダウンロードしておけばOKです。

Netflix アプリ設定で「スマートダウンロード」をオンにしておく。視聴したエピソードは削除され、次のエピソードがダウンロードされる。Wi-Fi接続時のみ行われる

 ダウンロード機能はグローバルでニーズの高い機能だそうです。米国では通信環境の悪い地域もあり、そういった場所に子どもを連れて行く際に助かると、Netflixの担当者は自身の体験を語っていました。なお、スマートダウンロードを利用できるのは現在Androidのみですが、今後はiOSでも利用可能になる見込みです。

データ通信量を抑える画像圧縮技術

 モバイル端末で動画を見る際に気になるのはデータ通信量。それを抑えるNetflixの画像圧縮技術も非常に興味深いものでした。再生ボタンをタップしたら、待機時間がなく、すぐ映像が始まって見られるように、モバイル用の動画のエンコーディング方法が採用されています。また、データ容量を抑える工夫もされています。

 例えば、Netflixのオリジナルドラマ「JESSICA JONES」の場合、作成直後は4Kクオリティーの1話分で293GB。ビットレートにして748Mbpsです。これをモバイルで視聴できるように、小さくしなくてはいけません。世界には通信速度が遅い地域がまだありますし、コンテンツをダウンロードして見るにもデータは小さいにこしたことはありません。

 Netflixがストリーミングサービスを開始した2011年当時は、映像を変換するコーデックは1つのみで、ビットレートは1050kbpsでした。それが2015年には、アニメはもっと小さなデータに、アクション映画など動きの激しいものは大きめになど、作品ごとにエンコーディングを変える「Per-title encording」を採用します。さらに、2018年にはシーンごとにエンコーディングを変える「Per-shot encording」を採用。効率良くエンコードすることで、画質を維持しつつデータ量を抑えています。

 Netflixは新たに「AV1」というコーデックを開発していて、これを使うとPer-shot encordingよりもさらに視聴時間を伸ばせるとしています。きれいな映像なのに、意外とデータを食わない理由は、こうしたきめ細かな圧縮技術にあったことが分かりました。

Netflix 2015年から採用されたPer-title encordingで、作品ごとにエンコードを変えたことでビットレートが下がった
Netflix シーンごとにエンコーディングを変えるPer-shot encordingでさらに削減
Netflix
Netflix Per-title encording(上)とPer-shot encording(下)でエンコードされた画像を比較。どちらも250kbps程度だが、Per-shot encordingの方が、髪の毛や背景が精細でくっきりしている
Netflix エンコーディングの改良によって、4GBのデータ通信量で視聴できる時間がどんどん長くなってきた

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