中古携帯を販売している携帯市場は、東京の神田にフィーチャーフォン(ガラケー)専門店である「携帯市場 神田本店」を構えるなど、ガラケーの販売にも注力している。この神田本店では、2018年のガラケーの販売台数や売り上げが、2017年から約5倍に伸びており、ガラケーを求めるユーザーが増えている。
なぜ中古市場でガラケーが伸びているのか。携帯市場 店舗事業部の横山朝美氏によると、スマートフォンやタブレットとの2台持ちで中古ガラケーを購入する人が増えているという。「格安SIMが出てからは、ガラケーに格安SIMを入れて通話だけガラケーを使っている方もいます。スマートフォンは画面が大きいので、通話をするには不便だと感じる方が多いようです」(横山氏)
ガラケーが使える格安SIMは限られるが、横山氏が把握している限りでは、「楽天モバイル」はガラケーでも使えるという。ただし動作保証はしていないので、お客さんには「自己責任で使ってください」と伝えている。一方、いまだにガラケーだけを使っている来店者は「減っているわけではない」(横山氏)そうで、2台持ちをする人が増えたことで、ガラケーを求めるユーザー全体が増えているというわけだ。
ガラケーの新製品が減ってから時間がたったこともあり、最近は「ガラケー自体が懐かしいことで注目されている」とも横山氏は感じている。
またスマートフォンは確かに便利な道具に進化したが、携帯市場の調査では、27%のユーザーが「スマートフォンの利用をやめたいと考えたことがある」と答えており、「SNSが面倒」「料金が高い」といった回答が多く挙がった。実際、携帯市場の中古ガラケー購入者の中には、スマホをやめてガラケーに戻った人もいたという。
では、現役のガラケーユーザーは、どんな思いでガラケーを使い続けているのだろうか。携帯市場が11月15日に開催した座談会でお話を聞いた。参加者の石上さんは、Y!mobileのケータイ「Simply」とHuaweiのタブレット「MediaPad M3」を使っている。Simplyでは通話とメールだけを使っており、タブレットではLINEやTwitter、ネットサーフィンなどを使っているそうだ。Simplyは月額1980円のプラン、タブレットは「UQ mobile」の3GBプランを適用し、月額料金は合わせて3000円程度に収まっている。
Simplyを選んだのは「ストレートケータイが好き」だったのと、「キーが大きい」から。「独特のアナログ感が好きで、『ザ・電話』という感じがいいですね」と石上さん。横山氏も、来店者の中には「キーを押した感じが欲しいという声は多い」と話す。さらに、キーの押しやすさを求めて「らくらくホン」を購入する若者もいるそうだ。
ガラケーは「折りたたみ派」だったという横山氏は仕事で「P-01F」を使っていたが、特に便利に感じていたのがワンプッシュオープン(側面のボタンを押すと、自動で開く機構)。このワンプッシュオープンボタンを押すだけで電話に出る設定もあり、便利に使っていた。
また、縦長のガラケーなら耳と肩で挟んだままでも通話しやすいが、スマホだと「落とす恐怖がある」と横山氏。ガラケーは折りたたみ型ならディスプレイが露出しないので、落としても画面は割れにくい。筆者も、電車の中で画面がバキバキに割れたスマホを使っている人をよく見かけるが、ガラケー時代は、せいぜいバッテリーパックが外れた人を見たことがある程度だった。
石上さんが、スマホではなくタブレットとの2台持ちにしたのは、シンプルに「画面が大きいから」。「私は手が小さいので、スマホだと指が届きにくいんです。たったら画面の大きなタブレットでも変わらない」と考えた。
11月にはKDDIから新しいケータイ「INFOBAR xv」が発売予定だが、「INFOBARはおしゃれすぎる」と石上さんは感じていて、過去のモデルも含めて手を出したことがないそうだ。「私にとってINFOBARは邪道(笑)。ケータイにはボタンと白黒画面があればよく、ちょっとダサイくらいがちょうどいい」と石上さん。ちなみに携帯市場ではINFOBARはいまだに人気があり、「INFOBAR 2のバッテリーを交換しに来る人が多い」(横山氏)という。
携帯市場でのガラケーの売れ行きが、1年で5倍に伸びたというのには、ちょっと驚いた。ここ1年のスマホのトレンドといえば、やはり「大画面化」が挙げられる。気付けばiPhoneも6型前後のディスプレイが当たり前になっていて、片手操作や通話をするのには不利だ。スマホが大きくなるほど、ガラケーの価値を再認識する人が増えているのだろう。ドコモが「カードケータイ」、KDDIがINFOBAR xvを発売することもあり、しばらくガラケー(ケータイ)回帰の流れは続きそうだ。
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