米Qualcommが最新のSnapdragon製品ならびに関連ソリューションを紹介するイベント「Snapdragon Tech Summit 2018」を12月4日から米ハワイ州マウイ島で開催。通算で3回目となる同イベントだが、年末にお披露目されたSnapdragonのハイエンド製品は翌年前半にはパートナー各社によって端末に導入されて市場投入されており、2018年の例でいえば2019年のスマートフォン製品群の中核となる。その意味で、2019年以降の通信業界や端末メーカーの技術トレンドを占う場ともいえる。
2018年は特に「5G対応」が前面プッシュされており、世界各国の携帯キャリアが2019年の5G商用ローンチに向けた準備を進める中、その対となる端末製品の5G対応がメインとなる。会場には第8代ハワイ州知事のDavid Ige氏が登場し、同氏もハワイアンテレコムの技術者だった経緯から5G通信が社会で担う役割について語り、特に観光産業で成り立つハワイにおいて世界中の人々が同地にやってきて最新技術をシームレスに使える環境整備の重要性を訴えている。
会場では、実際に2019年内の5G商用ローンチを計画するAT&TとVerizonの基地局設備が用意され、ライブデモが披露された。2019年末にTech Summitが開催されるタイミングでは、既に多くの携帯キャリアが5Gの商用またはトライアルサービスを開始しており、端末メーカーで5G技術も持つSamsung ElectronicsやHuaweiといったライバルに先行する姿をアピールする最後の機会でもある。Appleとの係争も激化が予想されるなか、パートナーとともにQualcommは5G黎明(れいめい)期に何を見せてくれるのだろうか。
Snapdragonの最新フラグシップ製品については、さまざまなうわさがあったが、「Snapdragon 855」の名称で正式発表された。例年通り、この855の詳細はTech Summitの2日目以降に説明される予定で、初日のプレビューでは初の5G対応プロセッサであることがアピールされるとともに、昨今ブームとなりつつある機械学習フレームワークを取り込んだ「AIプロセッサ」の側面が強調されている。
現行モデルの845でも“AI対応”はアピールポイントの一つだったが、今回の855は同社でいう第4世代のAIエンジンを搭載し、845との比較で3倍のパフォーマンスを実現するという。同社のAIソリューションはGPUコアのAdreno、CPUコアのKryo、そしてISPのHexagonを組み合わせたものだが、それぞれが強化されて全体の処理能力が向上しているということだろう。また名称は明言していないものの、少し前にライバルからリリースされた最新プロセッサと比較しても2倍のパフォーマンスを実現するという。
恐らくこれはHuaweiのKirin 980のことだと思われるが、先方がSnapdragon 845との比較で3〜4割程度のパフォーマンスや電力効率での優位性をうたう一方で、それから数カ月ほど遅れて市場投入されることになる対抗製品の855は、さらにそれを上回るパフォーマンスを実現するというアピールだ。Snapdragon 855ではKirin 980と同じ7nmの製造プロセスを採用しており、同じ土俵でのデッドヒートが繰り広げられている形となる。停滞しつつあるPC向けプロセッサと比較して、モバイルでの盛り上がりは非常に興味深い。
興味深いのは、QualcommがComputer Vision(画像認識)に特化した初のISPだとうたう「Spectra」がSnapdragon 855に搭載されていること。カメラ撮影機能を補助することが目的とみられ、どのようなアプリケーションが今後披露されるのか楽しみだ。
また、以前から同社がアピールしていた超音波(Ultrasonic)を使ったディスプレイでの指紋認証の仕組みについて、「3D Sonic Sensor」の名称でベンダーへソリューションが提供される。複数のディスプレイパネルメーカーとの交渉で、実装をより簡易にする仕組みが用意されるとのことで、採用メーカーが増えそうだ。
超音波方式はディスプレイに触れられた指の指紋をエコーで認識する技術で、埋め込み型センサーと比較して正確性や反応速度の面で若干劣る反面、比較的安価に実装できるという特徴がある。またもう1つのメリットとして、ぬれた状態や、皮脂の体質などから既存の指紋センサーでは認識が難しい人でも、超音波方式ならカバーできるという。AppleがiPhone Xをリリースして以降、顔認証センサー中心に傾きかけたスマートフォン業界だが、その利便性から指紋認証に再び脚光が当たる機会となるかもしれない。
また詳細は不明なものの、「Qualcomm Elite Gaming」についても発表された。最近ではモバイル端末で本格的なゲームを展開する事例が増えており、実際にASUSのROG Phoneのようにゲーミングに特化した高級端末が人気を博した例もある。Qualcommも同様の市場を目指しているとみられ、これをプラットフォーム化して必要な機能を網羅することで、改めてアピールするのが狙いとみられる。
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