キャリア参入まで1年を切った楽天 MVNO「楽天モバイル」の現状は? 大尾嘉氏に聞くMVNOに聞く(1/3 ページ)

» 2018年12月21日 12時51分 公開
[石野純也ITmedia]

 MNO(通信キャリア)として自ら設備を持ち、2019年10月に通信事業に新規参入する楽天だが、MVNOの楽天モバイルも、着実にユーザーを増やし、規模を拡大している。MNOとしてサービスを開始した後は店舗も相乗りする予定。事業を走らせることが新規参入の準備になっている点は、これまでの新規参入との大きな違いといえる。

 その楽天モバイルも、2018年6月にスーパーホーダイの料金を改定、10月にau回線を開始するなど、サービスの幅を広げている。直営店も増やし、11月時点では量販店などを合わせて400の拠点を構えるに至った。では、上記に挙げた料金プランの変更や、au回線の導入にはどのような思惑があったのか。楽天モバイルを率いる楽天の執行役員、大尾嘉宏人氏にお話を聞いた。

20代や女性にも広がっている

楽天モバイル 楽天の執行役員、大尾嘉宏人氏

―― MNO参入を決めてから、楽天モバイルについての会見などの情報発信が少なくなっている印象があります。6月のスーパーホーダイ改定からを踏まえ、楽天モバイルの現状がどうなっているのかを教えてください。

大尾嘉氏 6月に発表した新料金、新サービスが進捗(しんちょく)していることに加え、その間にローンチしたサービスも幾つかあります。まず、進捗の方からお話すると、スーパーホーダイは契約期間に応じて月額料金が変わる形になりました。通常の料金は2980円(税別、以下同)ですが、3年利用するなら(2年間)1480円になり、その代わり、3年たたずに辞めると解約金がかかるという形です。これが分かりやすいということで、30代、40代だけでなく、20代や女性などの層にも広がりました。当初よりも獲得ができるようになったということです。

 今はMNOの新規参入に向かっていますが、今のところ、直近でプランを変える予定は全くありません。この分かりやすいやり方を踏襲するつもりです。また、容量を使い切った後も、1Mbpsで使い放題になるという仕組みも、うまいところを突けたと思っています。1Mbpsあれば、普通に動画も見られますからね。そこはいろいろと研究した中で1Mbpsにしました。プランLLからプランMまで、1カ月目は同じ料金(1480円)というのも、意外と好評です。

楽天モバイル 所定の容量を使い切っても(混み合う時間帯を除き)最大1Mbpsで使い放題となる「スーパーホーダイ」。ドコモ回線向けの主力プランだ

―― 以前のスーパーホーダイは最初に端末代を値引いていました。そちらの方が、新規ユーザーが取れそうな気もしますが、いかがですか。

大尾嘉氏 以前は長期利用に対するベネフィット(便益)が端末値引きやポイントでのキャッシュバックなど、ワンタイムでのものでした。3年契約で2万円値引きやポイントバックをしていたので、「原資はそのままで月額料金に付け替えたのでは」とも言われましたが、その指摘は確かです。

 おっしゃるように、端末の値引きはパワフルではありましたが、シンプルに月額料金を伝えた方がいいという調査結果もあり、それがあったからこそ、今のスーパーホーダイを始めています。お客さまへの伝え方が変化したということでもあります。

―― なるほど。結果として、端末の売れ筋が変わるなどの変化はありましたか。

大尾嘉氏 若干変化はしました。ただ、実はこのタイミングで「プラス割」というものも同時に出していて、2回線目なら1万円引きということをやっています。1回線目だけを見ると端末の付帯率は下がってしまったかもしれませんが、それを打ち消すぐらい、2回線目を契約する人が増えています。自分のため、家族のために2回線目を契約するというのは以前からありましたが、それが増えています。ちなみに、1万円というのは以前の話で、今は5000円になっています。

 1万円還元だと、その額に合わせてちょうど端末が0円になるものが売れていました。さすがに今は5000円になったので、0円になるものはなくなり、刺さる機種とそうでない機種が分かれています。

au回線を開始した理由

―― その後、au回線を始めています。

大尾嘉氏 au回線は10月に始めました。順調に推移してはいますが、スーパーホーダイがないので、この部分が取れないことは織り込み済みです。iPhoneなど、一部auのSIMロックがかかったままの端末をそのまま使えるということで、想定した方が契約されています。

楽天モバイル au回線向けの料金プラン

―― なぜ、ドコモに加えてau回線を始めたのか、理由を教えてください。MNOのローミングとは何か関係しているのでしょうか。

大尾嘉氏 あれは1年前から準備を続けてきたことで、MNO参入を表明する前から開発が始まっていました。たまたま時期としては(ローミング契約締結を発表する直前の)9月末になってしまいましたが……。ですから、MNOやローミングとは無関係で、もともとやろうとしていたというのが事実です。あのタイミングで始めていたら、できるわけがないですから(笑)。

 楽天のエコシステムが使えて、かつ自分のキャリアがそのまま楽天モバイルで選べるというのが理想像です。mineoさんも今3キャリアの回線をやられていますが、あれと同じことです。楽天はもともと経済圏やポイントシステムを持っているので、楽天モバイルを、どの回線を使っても楽天のサービスが受けられるMVNOにするという構想がありました。

 これは、MVNOである限りは正しい発想だと思っています。IT系のサービスをやっている僕らだからこそ、端末と回線を自由に選んでくださいということができる。その意味で、mineoさんは正しいことをやっていると思っています。ただ、MNOとして新規参入することが決まったので、今後は僕らの強みを生かしながら、どんなサービスが作れるのかということを検討します。MNOはインフラを作るので、それなりの固定費もかかりますからね。一生懸命がんばっていきます。

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