インターネットで流行しているサービスを、トレンド好きの「美咲」が上司の課長に分かりやすく解説する連載「美咲が教える スマホ時代の歩き方」。ショート音楽動画共有アプリ「TikTok」(ティックトック)は、これほど人気が広がったのでしょうか?
課長 TikTokでは視聴するだけの人より、投稿をする人の割合の方が多いんだったね。例えばYouTubeなんてみんな使っているけど、実際に動画を投稿したことがある人は圧倒的に少ないでしょ。何でTikTokだと投稿する人が多いんだろう?
美咲 TikTokで流行った動画を見れば分かりますよ。人気だったハッシュタグは……例えばこの「#投げキッス運動」とか「#め組のひと」とか。「#投げキッス運動」は、最近ミッキーとのTikTok撮影が炎上して話題になった、あのタグですね。
課長 そんなことがあったんだ。「め組のひと」ってラッツ&スターの?
美咲 そうですよ。TikTokで使われたのは、倖田來未さんカバーのスピードアップバージョンですけど。TikTokのおかげでちょっとしたリバイバルブームが起きて、LINE MUSICのデーリーランキングで1位になったくらいなんですから。
課長 TikTokがきっかけで音楽のブームが起きるくらい、TikTokの影響が大きくなっているのか! 確かにいい曲だけど、「め組のひと」動画が何でそこまで人気になったのかが分からない。
美咲 「#投げキッス運動」もそうですけど、曲に合わせた振りが簡単で、誰でもマネしやすいハードルの低さがあるからじゃないですか。投げキッスや「めっ」のピースサインってかわいく見えるから盛れるし。実際にリズムにはめると意外と楽しいですよ。課長もやってみます?
課長 ……遠慮しとく。撮っていて楽しいだけじゃなくて、かわいらしく見せるための動画でもあるのか。
美咲 全世界に公開する以上、「いいね」がたくさんもらえるよう、かわいく見せたいでしょー。とはいえ、あざとすぎるよりは、おふざけっぽくアレンジする要素が多少あったほうがウケはいいです。私も学生時代、部活の友達とよくふざけて踊ったりしてたから、当時TikTokが流行していたら私も使ったかもしれないなあ。
課長 確かに動画をずっと見ていると、背景が学校の教室だったり校庭だったりするんだよ。娘も友達とワイワイ盛り上がりながら、学校の昼休みに動画を撮って遊んでいるんだろうか……。
美咲 あと、TikTokって動画の編集がすごく楽な設計なんです。特殊効果がワンタップで簡単に追加できて、音楽も公式提供の曲なら合法的に付けられる。コンテンツを作り込まなくても、そこそこハイクオリティーに仕上がっちゃうところがスゴイ。
課長 確かに、今までは動画編集アプリを使って加工したものを、別のSNSにアップするのが当たり前だった。
美咲 もっとさかのぼると、ニコニコ動画がはやった10年前は、凝った動画なんて専用ソフトがないとできなかったし、動画で使えるはやりの曲もそんな多くなかったですからね。TikTokはエイベックスやワーナーミュージック・グループ、ユニバーサルミュージック、Apple Music、AWAとかとパートナーシップを締結してるから、人気アーティストの最新曲も結構そろってます。指先1本でリッチな動画を誰でも作れる時代になったんですねぇ。
課長 つまり、今までの話をまとめると……。「お題」となる音楽と振り付けがあるから誰でも手軽にマネできる、仲間内でマネするのが楽しい、動画編集も簡単、動きと編集で簡単に“盛れる”から「いいね」がつきやすい。投稿率が多いのは、こういった理由が大きそうだ。
美咲 その一連の流れが、ちゃんと体験としてストーリー化されているところがTikTok人気の理由なんでしょうね。視聴側の体験もよくできていて、AIがゴリゴリに使われているらしく、視聴していると私の好みに合わせた動画がレコメンドされてきます。視聴するたびに精度が上がるから、さらに動画をどんどん見てしまうTikTokスパイラル!
課長 うーん、そのアプローチはどうだろう。最近はスマホの使いすぎが問題視されていて、GoogleやAppleがスマホの使用時間を制限する機能を設けているよね。Web広告で収益を上げるビジネスといえど、好みのコンテンツで使用時間を長引かせるのが正しい戦略なのか、そろそろ考えるタイミングに来ているような気もするなあ。TikTokに限らずね。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.