ここ最近、モバイル業界で「バーコード」といえば、「コード決済」を思い浮かべる人が多いだろう。それほどサービスが増え、話題も集めているが、このバーコードを別のアプローチで新規ビジネスにつなげた企業がある。それが「Payke(ペイク)」だ。
社名と同名のサービス「Payke」では、スマホアプリからカメラを立ち上げて商品のバーコードを読み取ると、アプリ上で詳細な情報が分かる。特徴は多言語対応で、日本語の他に中国語(繁体字と簡体字)、韓国語、ベトナム語、タイ語、英語で翻訳が可能。主に訪日外国人をターゲットにしており、日本語で書かれたパッケージを読めない人に商品を理解してもらい、購買につなげるのが目的。
Paykeは2014年に設立したベンチャー。創業者の古田奎輔CEOは19歳から起業しており、現在25歳。2015にPaykeアプリをリリースし、3年間で12.3億円の資金調達に成功。世界142カ国でアプリがダウンロードされ、海外のアプリストアで1位を取ったこともあるそうだ。約360万の総ユーザー数のうち、98%は外国人で占められる。Paykeは「Pay」と「Take」から取っており、「お金を払って商品を持ち帰る。それをつかさどるサービスを作りたい」と古田氏は意気込む。
外国人観光客は右肩上がりで伸びており、2020年の東京オリンピックに向けてますます増えることが予想される。そんな訪日外国人が日本で過ごす際の課題が「決済」「識字」「通信」の3つだが、Paykeが攻めるのは「識字」。決済はあくまで手段であり、スマホで決済できたからといって、必ずしも決済金額が増えるとは限らない。また通信手段を確保できても購買に結び付くとは限らない(コード決済を使うには通信が必要なので、ゼロではないが)。古田氏は、消費単価を最も伸ばせるのは識字だと考えた。
お店で商品を見ても、パッケージには日本語しか書かれていないので、商品の詳細な情報が分からない。母国語で商品の情報を伝えるトリガーとしてバーコードに着目したのは「知名度があるから」(古田氏)。バーコードは国際規格で、「商品の裏に付いているもの」という点で誰もが知っている。これは日本だけでなく海外でも同様だ。また、バーコードは基本的にどの商品にも付けられているので、新たにQRコードやRFIDタグなどを貼り付ける必要はなく、アプリ内に商品の情報を登録するだけで済む。
スマホアプリから商品のバーコードを読み取ると、商品の基本情報、動画、ユーザーからのコメントなどを母国語で読める。ユーザーがコメントを投稿することもできる。
現在、Paykeアプリに登録されている商品は30万以上で、提携企業は1200社以上。提携していない企業でも、Payke側が必要だと判断したら、自主的に商品情報を登録している。登録商品は医薬品、化粧品、ベビー用品が特に多いという。翻訳は機械か手動で行うかを選べる。
Paykeのもう一つの特徴が、アプリユーザーの行動データを分析し、マーケティングの材料に活用できることだ。どの国籍の人が、どんな商品の情報を見ているかがリアルタイムで分かるため、例えばシャンプーをスキャンした人にリンスを勧める、といったことが可能になる。スマホの位置情報も分かるので、エリア別のマーケティングにも活用できる。POSだと購入した商品の情報しか分からないが、Paykeだと購入はしていないが興味のある商品の情報も分かるため、より多面的なマーケティング活動が期待できる。
既存のバーコードはレジ打ちや棚卸しなど、物流インフラとして使われているが、今後はバーコードを情報インフラとして活用したいと古田氏。これを「バーコード1.0」から「バーコード2.0」に進化させると同氏は表現する。また、Paykeアプリで購入決定から決済までが完結できるよう、決済との連携も視野に入れているとのこと。
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