総務省が「モバイル市場の検討会」パブリックコメントを公開――国民の意見は総務省にとって単なる「校正作業」なのか石川温のスマホ業界新聞

» 2019年01月25日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 1月17日、総務省において「モバイル市場の競争環境に関する研究会」ならびに「ICTサービス安心・安全研究会 消費者保護ルールの検証に関するワーキンググループ」の合同会合が開催された。

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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年1月19日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。


 総務省では昨年11月に「モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言案」を発表。今回の会合では緊急提言案に対する国民などからのパブリックコメントが紹介された。

 集まった意見の数は法人・団体が15件、個人から64件、計79件。特に個人の中には、販売代理店と思われる関係者からの悲痛な現場の声が上がっていた。完全分離プランや代理店の届出制がいかに業界に悪影響が出るかという懸念が記されていたのだ(詳細は今週、公開された日経新聞電子版・モバイルの達人「携帯料金是正問題、キャリアショップの悲痛な叫び」で)。

 合同会合で、パブリックコメントによる指摘に対して、有識者が検討、議論などをするかと思いきや、総務省の考えは示されたものの78件は完全にスルー。キャリアや業界団体、個人からの声を無視するという徹底ぶりだ。

 総務省が唯一、パブリックコメントからの指摘を採用したのが「緊急提言のなかで『言った』という記載があるが誤記であり『いった』という表記の方が正しいのではないか」というものだった。結果、緊急提言では「言った」ではなく「いった」が採用されることになった。

 国民からパブリックコメントというかたちで、意見を集めておいて、唯一、採用したのが、「文章表記の校正」という事実に、本当にあきれ返ってしまう。パブリックコメントを執筆し、提出するというのは、時間のかかる作業であるし、法人や団体であれば、複数人で会議をし、表現等の検討を重ね、何人もの手を経て、ようやく提出されたものだろう。

  それを右から左に受け流しておしまいにするという総務省のやる気のなさに理解ができない。

  最初から、業界からの不満に対するガス抜きとして、パブリップコメントを集めるくらいなら、そんなもの、集めるだけ無駄ではないだろうか。

 特に販売代理店からの声は、キャリアと代理店の深い闇の関係を浮き彫りにした、現在、携帯電話業界が抱える問題点を的確に指摘していたように思う。まさに、キャリアによる販売代理店に対する評価軸にメスを入れれば、総務省が問題視している課題も解決するのではないか。

 せっかく、現場から上がってきた声を無視し、意味のない緊急提言を実施したところで、問題の根本的な解決には至らない。なぜ、現場の声を無視するのか。

 「緊急提言」という時間のことばかりを優先し、本当の問題点から目を背けるようでは、総務省は何も仕事をしていないようなものではないだろうか。

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