総務省の「モバイル市場の競争環境に関する研究会」は12月26日、第5回会合を開催。大手キャリア3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)、無線ブロードバンド(BWA)事業者2社(UQコミュニケーションズ、Wireless City Planning)と、中古端末関連団体(リユースモバイル関連ガイドライン検討会)からの意見聴取(ヒアリング)と、それを踏まえた意見交換を実施した。
今回は第3回会合で実施したヒアリングの続きという位置付け。大手キャリアとBWA事業者からは「接続料」を中心とするMVNOに対する取り組みについて、リユースモバイル関連ガイドライン検討会からは中古端末の販売に関するガイドライン案の策定状況を聴取した。
この記事では、大手キャリアとBWA事業者に対する意見聴取の模様を簡単にまとめてお伝えする。
NTTドコモからは担当者が3人出席。丸山誠治取締役(経営企画部長)が主要な説明を担当した。
同社はMVNO市場を活性化する取り組みとして「MVNO専用SIMカード(無地のSIMカード)発行」「ドコモの顧客管理システムとのAPI連携機能の提供」「IoT回線制御プラットフォームの提供」「HLR/HSS(加入者管理機能)の連携機能の提供」を実施してきたことを紹介。MVNOにおける業務量の削減やサービスの多様化に寄与していることをアピールした。
料金面でも、他キャリアと比べても低廉なデータ通信接続料をさらに継続値下げしていることや、「接続料の当年度精算」「支払い猶予制度(※1)」を導入することでMVNOの支払い負担の低減や事業予見性の向上に貢献していることをアピールした。今後は一部のMVNOから値下げや定額プランの提供を求められている「卸音声サービス」についても、より使いやすいプランへの見直しを進める意向だという。
※1 毎月支払う接続料の一部を接続料改定時まで「猶予」する制度(希望するMVNOに適用:要交渉)
これらの取り組みによって、ドコモは接続料観点での公正競争環境は確保されているという立場。一部で検討されている接続料の算定方式の見直しは不要と主張している。
ドコモは、モバイル通信事業は設備やサービスにおける競争があるため、設備投資やサービス需要に対する合理的な予測(将来予見)は難しいとの立場を取る。そのことから、仮に接続料の算定方式を見直す場合、従来と同じく実際にかかった費用(適正原価)に適正な利潤を加えられる方式とすることを求めている。
合わせて、MVNOの事業撤退やシェア変動も踏まえて、費用負担におけるMVNO同士の公平性確保も要望している。
5G(第5世代移動体通信システム)やIoT(モノのインターネット)では、異業種との企業間連携や、従来にないサービスの提供が進むと考えられている。
相互接続形式では、接続料の設定により柔軟なサービス設定が難しくなるとの考えから、ドコモでは5GやIoT向けの回線をMVNOとの個別交渉(=卸形式)で提供したいと考えているようだ。
モバイル通信事業者では同社にのみ適用されている「電気通信事業法第30条(※2)」についても、企業間連携において足かせとなるとの立場から見直しを求めている。
総務省令の定める条件を満たす通信事業者は、以下の行為が禁止される。
記事執筆時現在、この規制の対象となっている移動体通信事業者はNTTドコモのみ。
今後のモバイル通信用電波帯域の追加割り当てにおいて、MVNOへの協力体制を評価内容に加えることが決まっている。このことについてドコモは接続料の低減“だけ”を評価対象としないことや、MNO(※3)と資本関係のないMVNOへの回線提供状況を考慮することを要望。後者と関連してMNOによるMVNOの自社グループ化について競争政策上の整理を行うことも求めている。
※3 自社で無線通信設備を整備しているモバイル通信事業者
「MNOによるMVNOの自社グループ化」は、複数のMVNOを子会社化したKDDIや、LINEモバイルを子会社化したソフトバンク、そして2019年10月に子会社がMNOとしてサービスを開始する楽天のことを念頭に置いた発言であると思われる。
ビッグローブ(KDDI子会社)やLINEモバイルは、親会社にとって“競合他社”であるドコモの回線を使ったMVNOサービスも展開している。また、楽天は子会社のMNOサービス開始後に、ドコモ回線やau回線を利用したMVNOサービス契約者を“巻き取る”方針を掲げている。これらの事例がMNO同士の公正競争を阻害する結果につながると考えているようだ。
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