携帯電話やスマートフォンが生活インフラとなってから、携帯電話事業者は多くの社会問題に直面するようになりました。それはMVNOでも同じです。過去にもこの連載では携帯電話の犯罪利用の例として特殊詐欺を挙げ、本人確認の重要性についてご説明しました。今回は、青少年保護とMVNOの関わりについてお話ししようと思います。
児童福祉の観点から、これまでさまざまな規制が社会のあちこちに導入されてきました。例えばある種の映画や書籍は18歳未満(あるいは特定の年齢未満)が観覧や購入をすることができません。また風俗店やパチンコ店などの入店には年齢制限が設けられています。このようにある年齢までは、健全な育成に悪影響のある物事から青少年を隔離していく環境を作るということは、社会的にもコンセンサスがあるものと思います。
インターネットが登場すると、そこにはさまざまな情報があふれ、検索エンジンを使うことで人々が容易にそれらの情報にアクセスできるようになりました。その中には、青少年の健全な育成を阻害するような有害情報が残念ながら存在します。そのため、青少年がインターネット上の特定の情報に対してアクセスすることを防止することを義務付ける法律「青少年インターネット環境整備法」(青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律)が存在します。
この法律の肝となるのは「フィルタリング」です。フィルタリングとは、端末を使ってアクセスしようとしているコンテンツを識別し、不適切であると認定されたコンテンツにアクセスしようとしたときにはブロッキングを行う機能を指します。
一昔前、ガラケーの時代には、この法令に基づくフィルタリングは端末内ではなく携帯電話事業者のネットワーク側に実装されていました。ガラケーの時代には、携帯電話がアクセスする全てのインターネット上の情報は、携帯電話事業者のゲートウェイ装置を経由させていたため、そのゲートウェイ装置で有害なコンテンツをブロッキングすることが比較的容易だったのです。
現在のスマートフォンでは、Wi-Fiでもインターネット上のコンテンツにアクセスできることが普通になったため、必ずしも携帯電話事業者のゲートウェイを経由させないで有害情報にアクセスできてしまいます。このため、スマートフォンではフィルタリングが端末のOSに実装されているか、アプリとしてインストールすることで機能するものがほとんどです。
このようなフィルタリングの手法の違いは、実は大きな落とし穴となっています。ネットワーク側でフィルタリングが行われていたガラケーの時代には、保護者は子供の携帯回線にフィルタリングを行うよう、携帯電話会社に申し込むだけで良かったのですが、スマートフォンでは、アプリをダウンロードしたり、端末の設定を変更したりする必要が生じました。このため、フィルタリングの必要性は認識していても、面倒くさがってフィルタリングを適用しないままにする保護者が増えてしまったのです。
この事態を危機的に見た政府は、2017年に青少年インターネット環境整備法を改正し、2018年2月から施行しました。この改正法では、インターネットに接続できる端末の中でもプライベート性が高く保護者による監督がより困難なインターネットに接続できる機能を備えた携帯電話(つまりスマートフォン)を特に指して、関係者に以下のような義務を求めています。
この法改正を受け、MVNOでも回線の契約者名義だけではなく、実際にその回線を利用する方の年齢を契約時に確認するようになっています。もちろん、この確認は契約者の方による自己申告といえますから、18歳以上が利用すると申告された場合は法の規制の適用外となってしまいます。契約者の方には、法令の趣旨をご理解いただき、適正な年齢確認にご協力いただけますようお願いします。
契約時に18歳未満が利用すると申告いただいた回線については、フィルタリングの必要性についてご説明し、法令に基づきフィルタリングアプリの契約をお願いしています。MVNOによってはMNO同様にフィルタリングを無料で提供していますが、多くのMVNOではフィルタリングは有料オプションとなっているようです。
親子で話し合い十分にお子様の利用を監督できる、iPhoneの設定からフィルタリングを実現できるなど、MVNOが提供するフィルタリングアプリの契約が不要の場合は、法令に基づき、保護者の方からの申出書を契約時に提出いただく必要があります。MVNOによってはオンラインでのお手続きの中で申出書に相当する意思申し出をしていただける場合もあります。詳しくは各MVNOのお手続きをご確認ください。
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