最後に、フィルタリング有効化措置についてご説明しましょう。法令は、携帯電話事業者(MVNOを含む)に対し、青少年の利用する携帯電話端末(スマートフォン等)でフィルタリングを有効にした状態で提供することを義務付けています。例えばMNOのショップであれば、お買い求めになる端末に店頭でフィルタリングアプリをインストールしてからお渡ししたり、端末にフィルタリングに必要な設定をしたりしてからお渡しをしています。
しかし、MVNOの場合は契約がオンラインであったり、端末販売が量販店レジでの別会計であったりするなど、フィルタリング有効化措置をMNO同様に提供することが難しい場合があります。その場合、MVNOの業界団体であるテレコムサービス協会MVNO委員会が自主的に定めたガイドラインに基づき、保護者にフィルタリングアプリのインストール等を行ってもらい、その実施後に事業者に報告をすることで「有効化措置が実施された」という運用を採用している事業者もあります。
法令ではフィルタリング有効化措置が義務付けられていますが、事業者がどこまで行えば有効化措置をしたことになる明確な基準はありません。立法時点で主に想定されていたのは、キャリアショップにおける端末と回線の同時契約であり、MVNOのオンライン契約や、量販店でのMVNO契約のような端末と回線サービスの分離は想定外だったと思われます。そのため、MVNO委員会ではMVNOによる端末販売の現状を調査し、法令に基づくフィルタリング有効化措置の適切な実施手法についてガイドラインとしてまとめています。
このガイドラインは法的な拘束力のないものですが、当該ガイドラインを順守して適切にフィルタリング有効化措置を運用しているMVNOは総務省から行政指導等を受けるようなことはないものと期待されます。MVNO委員会では、今後のMVNOによる端末の販売方法などの変化や、法令の改正等に応じ、ガイドラインの見直しを適切に進めていきます。
佐々木 太志
株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ) MVNO事業部 事業統括部 事業統括課 担当部長
2000年IIJ入社、以来ネットワークサービスの運用、開発、企画に従事。特に2007年にIIJのMVNO事業の立ち上げに参加し、以来法人向け、個人向けMVNOサービスを主に担当する。またIIJmioの公式Twitterアカウント@iijmioの中の人でもある。
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