2018年までGalaxy Sシリーズの基板はアルファベットの「C」字型をしていた。この形状はGalaxy S3の頃から変わっておらず、しかも部品が置かれていない「空地」も多い。筆者は5Gモデル登場に伴う部品増加も、この空きスペースで賄え、基板形状は変わらないと予想していた。しかし予想は外れ、Galaxy S10 5Gのメイン基板は長方形の2階建て構造となった。
2階部分の片面に5Gの通信関係部品が集中して実装されている。ここでは従来1個だったRFチップ(送受信IC)が2個に増えた。型番は同じで、片方が5G担当と思われる。日本からは太陽誘電、村田製作所、京セラのパワーアンプ(信号増幅)、フィルター(ノイズ除去)、デュプレクサー(アンテナ共有)、タイミングデバイスが採用されている。2階部分の片面は電子部品を搭載しておらず、今後のミリ波対応等に向けた拡張スペースと推定している。
メインボードの片面を見ると、2階部分と接続する「壁」で囲われている広いエリアがある。この中にある大型の電子部品はほぼ全部が電源制御関連であったことは特筆に値する。LTEスマホでは、アプリケーションプロセッサ用のシステム電源、通信システム用電源が主要電源ICであったが、本機では5Gベースバンドプロセッサ専用の電源ICが2個、加えてカメラ専用電源ICが2個確認された。DC-DCコンバーターなど小型の部品も含めると、10個近い電源制御部品が存在する。
電子部品の増加はコストアップになるが、半面、使わない系統の電源を切るなど細やかな管理が可能で、節電効果は高い。Samsungスマホ史上、最大容量となる4500mAhのバッテリーを搭載しても、細やかな電源管理をしないと、5Gや複眼カメラが必要とする膨大な電力を支えられないのだろう。
今回調査したGalaxy S10 5Gは、5G通信に3.5GHz帯の電波を使用している。以前からある装備では、Wi-Fiがこれより高い5GHzで通信を行っており、アンテナには特段大きな技術的な変更点はないと思われる。Samsungの場合、黒い樹脂ブロックに金属と思われる細い線を焼き付けるかエッチングするなどしてアンテナパターンを形成している。
GSM、W-CDMA、LTE、Wi-Fi、Bluetoothなどはこの方式のアンテナを使用しており、5Gも同様と思われる。ただし、短いアンテナでフレキシブルプリント基板タイプのアンテナが1個あり、各国で微妙に異なる5G周波数に合わせて載せ替えができるようになっている可能性がある。
米Motorolaは既に販売されているLTEスマホのアタッチメント(moto mods)として、ミリ波対応5Gユニットを4月に発売した。現存する多くの通信インフラへの小規模な改修で5G対応が可能なSub 6に対し、ミリ波は新インフラが必要でエリア拡大には時間が掛かるといわれているが、新材料や技術が多く必要とされており、日本企業の出番が増えるだろう。
高速大容量通信のインフラが整いつつある現在、多くのスマホメーカーは、AIおよび仮想現実(VR・AR)によるユーザー体験の向上を目指している。音声認識はより賢くなり、センサーは医療レベルに近い健康管理を実現し、カメラはさらに画質が向上するだろう。板型をしている現在のスマホの形状も変わるかもしれない。皆さんはどんな変化を想像されるだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.