世界を変える5G

5Gで変化するスマホの中身 「Galaxy S10 5G」を分解して分かったことバラして見ずにはいられない(2/2 ページ)

» 2019年06月30日 06時00分 公開
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激変した基板形状

 2018年までGalaxy Sシリーズの基板はアルファベットの「C」字型をしていた。この形状はGalaxy S3の頃から変わっておらず、しかも部品が置かれていない「空地」も多い。筆者は5Gモデル登場に伴う部品増加も、この空きスペースで賄え、基板形状は変わらないと予想していた。しかし予想は外れ、Galaxy S10 5Gのメイン基板は長方形の2階建て構造となった。

Galaxy S10 5G 基板は予想外の2階建て構造へ変化した。同様の構造は、iPhoneやHUAWEI Mate 20RSなどにみられる

 2階部分の片面に5Gの通信関係部品が集中して実装されている。ここでは従来1個だったRFチップ(送受信IC)が2個に増えた。型番は同じで、片方が5G担当と思われる。日本からは太陽誘電、村田製作所、京セラのパワーアンプ(信号増幅)、フィルター(ノイズ除去)、デュプレクサー(アンテナ共有)、タイミングデバイスが採用されている。2階部分の片面は電子部品を搭載しておらず、今後のミリ波対応等に向けた拡張スペースと推定している。

Galaxy S10 5G メインボードの無線通信関連部品。太陽誘電、TDK、村田製作所の部品が並ぶ
Galaxy S10 5G 5G対応で純増した部品として、画面右下の5G用モデム(ベースバンドプロセッサ)がある。推定価格15米ドル
Galaxy S10 5G メインボード裏側の無線通信関連部品。米QorvoのFront End Moduleはパワーアンプなど複数の部品を混載しており、パナソニックとの関係が深い
Galaxy S10 5G 2階建て部分の基板は片面が完全な空き地。将来の拡張に備えたものと思われる
Galaxy S10 5G 2階建て部分の片側に、無線通信関連の部品の大半を搭載している
Galaxy S10 5G
Galaxy S10 5G
Galaxy S10 5G 無線機能の要の1つ、タイミングデバイス。京セラ、リバーエレテック、セイコーエプソンの製品で、全て日本製

電源関連の部品が増加

 メインボードの片面を見ると、2階部分と接続する「壁」で囲われている広いエリアがある。この中にある大型の電子部品はほぼ全部が電源制御関連であったことは特筆に値する。LTEスマホでは、アプリケーションプロセッサ用のシステム電源、通信システム用電源が主要電源ICであったが、本機では5Gベースバンドプロセッサ専用の電源ICが2個、加えてカメラ専用電源ICが2個確認された。DC-DCコンバーターなど小型の部品も含めると、10個近い電源制御部品が存在する。

Galaxy S10 5G メインボード裏側の壁で囲まれた部分の大型部品のほとんどが電源管理に関係する部品。本機で大幅に員数が増えたジャンルである

 電子部品の増加はコストアップになるが、半面、使わない系統の電源を切るなど細やかな管理が可能で、節電効果は高い。Samsungスマホ史上、最大容量となる4500mAhのバッテリーを搭載しても、細やかな電源管理をしないと、5Gや複眼カメラが必要とする膨大な電力を支えられないのだろう。

Galaxy S10 5G バッテリーはSamsung SDI製。4500mAhはSamsungスマホでは史上最高容量だ

アンテナは従来と変わらず

 今回調査したGalaxy S10 5Gは、5G通信に3.5GHz帯の電波を使用している。以前からある装備では、Wi-Fiがこれより高い5GHzで通信を行っており、アンテナには特段大きな技術的な変更点はないと思われる。Samsungの場合、黒い樹脂ブロックに金属と思われる細い線を焼き付けるかエッチングするなどしてアンテナパターンを形成している。

 GSM、W-CDMA、LTE、Wi-Fi、Bluetoothなどはこの方式のアンテナを使用しており、5Gも同様と思われる。ただし、短いアンテナでフレキシブルプリント基板タイプのアンテナが1個あり、各国で微妙に異なる5G周波数に合わせて載せ替えができるようになっている可能性がある。

ミリ波対応スマホはいつ出る?

 米Motorolaは既に販売されているLTEスマホのアタッチメント(moto mods)として、ミリ波対応5Gユニットを4月に発売した。現存する多くの通信インフラへの小規模な改修で5G対応が可能なSub 6に対し、ミリ波は新インフラが必要でエリア拡大には時間が掛かるといわれているが、新材料や技術が多く必要とされており、日本企業の出番が増えるだろう。

 高速大容量通信のインフラが整いつつある現在、多くのスマホメーカーは、AIおよび仮想現実(VR・AR)によるユーザー体験の向上を目指している。音声認識はより賢くなり、センサーは医療レベルに近い健康管理を実現し、カメラはさらに画質が向上するだろう。板型をしている現在のスマホの形状も変わるかもしれない。皆さんはどんな変化を想像されるだろうか。

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