2019年は次世代通信規格「5G」元年ということもあり、多くのスマートフォンメーカーが5G対応モデルを発売予定だ。5Gスマホ一番手は、2019年4月6日に韓国で発売されたSamsung Electronicsの「Galaxy S10 5G」である。2018年モデルの「Galaxy S9」との違いも含め、目立った点をレポートする。
第5世代通信(5G)とは、1998年に設立された通信規格や標準化を行う団体「3GPP」が策定した仕様に基づく通信方式で、6GHz以下の周波数で通信する「Sub 6」と、数10GHzで通信する「ミリ波」の2グループが存在する。高速大容量、低遅延、多接続などの優れた特徴を持つ5Gだが、3GPPの仕様が確定しているのは高速大容量通信のみで、残りは2019年末または2020年の早い時期に策定される予定だ。
5Gが持つ高速大容量通信、低遅延、多接続は、全てを同時に実現できるわけではない。TPOに合わせて、優先するモードを刻々と変えて最適な運用を行う「ネットワーク・スライシング」と呼ばれる技術を利用して、そのときに最も必要とされている通信モードを構成する。ネットワーク・スライシング技術は、日本のクリアなLTE音声通話「VoLTE」などで既に実現しているが、5Gはこれをさらに進化させたものとなる。
携帯電話網というと、ビルの屋上などに立つ基地局が目立つが、これは「マクロセル」と呼ばれ、携帯インフラのごく一部である。屋内や地下街など電波の届きにくい場所には「スモールセル」と呼ばれる小型基地局が多数設置されている。これらの基地局は「コアネットワーク」と呼ばれる光ファイバー網で接続され、サーバやルーターなどを介してコアネットワーク同士が接続され、全土をカバーし、最終的には世界とつながっている。
現在のところ、5G通信網は単独で存在しておらず、前世代規格のGSM、W-CDMA、LTEのインフラと共存する形で運用されている。このため、5G本来の威力をフルに発揮するには、従来ネットワークから独立した5Gのみで構成されるネットワークが必要となる。
Galaxy S10 5Gは、そんな5G通信に対応した、現時点では数少ないスマートフォンなのである。
Samsungに限らず、高級スマホにおけるカメラ搭載数増加は1つのトレンドとなっている。Galaxy S10 5Gは、背面に4個、前面に2個、合計6個のカメラを搭載している。カメラが増えることにより、フィルムにあたるCMOSイメージセンサーの面積も相対的に広くなり、より多くの光を集められ、暗い場所でもキレイな写真を撮影できるようになった。
また広角レンズと望遠レンズの組み合わせ、深度検知カメラとの併用により空間認識が可能となり、メイン被写体にだけ焦点を当てて背景をボカし、顔のラインをすっきりさせるなど自然な修正ができるようになった。
2018年までスマホ背面にあった指紋センサーは、ディスプレイ側の下部に移動した。Galaxy S10 5GではQualcomm製の超音波センサーが採用された。病院の超音波エコー診断装置のように指の皮膚の下を見ることができるようになり、指表面の凸凹を指紋と認識し、高い認識精度を実現している。
有機ELパネルも変化した。これまでは画面上部を一部切り取ってカメラなどを設置していたが、2019年はディスプレイに穴を開け、その後ろにカメラを設置する方式となった。製造方法はこちらの方が難しい。有機ELパネルはGalaxy S10 5Gの中で最も高額な部品と思われ、その価格は135米ドルと推定される。
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