“通信と端末の分離”で何が起こる? キャリア、MVNO、端末メーカーへの影響を考えるMVNOの深イイ話(3/4 ページ)

» 2019年07月05日 06時00分 公開
[佐々木太志ITmedia]

各社どのような影響が考えられる?

 このような業界の激変期に、MNO、サブブランド、MVNOには、それぞれどのような影響が考えられるでしょうか?

 MNO各社は、料金プランやそのビジネスモデルの抜本的な見直しを迫られるでしょう。これまではiPhoneの発売日など端末の販売に合わせて各社で大々的なテレビCMを放映したり、大規模なMNP優遇のキャンペーンを提供したりして集客することが多かったのですが、端末の割引が最大2万円となったことで、店頭で最新のiPhoneを購入できる人は一層限られると予想されます。大規模なMNP優遇のキャンペーンも沈静化を余儀なくされるでしょう。新端末や代理店での多額のキャッシュバックに頼ったビジネスモデルに代わる、新たなビジネスモデルへの転換が求められます

 このビジネスモデルの変革に伴い、キャッシュバックの原資への充当が不要となる月額料金は、大きく引き下げとなることが想定されます。しかし、民間企業であるMNO3社にとって減収というのは避けたいでしょうから、どこまで引き下げ幅を大きくするかは悩みどころだと思われます。

 ただ、MNOにも強みはあります。それは、既に「持てる者」であるMNO3社には、競争が沈静化すれば利益になることです。楽天を除くMNO3社が横並びを崩す理由はありませんし、現に今回の厳しい規律により各社の料金プラン開発の自由度は小さくなるでしょうから、MNO3社による協調的寡占はしばらく続くでしょう

 そうなれば、MNO間ではMNPの利用者の減少(顧客流動性の低下)が見られる可能性があります。これは違約金減額後も解約率を低く抑えたいMNOに取って望ましいシナリオであると言えます。

 新規参入組である楽天にも、大きなチャンスとリスクが同時に存在します。MNO3社が横並びで競争を回避するのであれば、後発である楽天にとっては低廉なプランで差別化するチャンスであるといえます。安い料金をテレビCM等で効果的にアピールできれば、喉から手が出るほど欲しいスタートダッシュを決めることができるかもしれません。

 また、楽天の得意技である楽天ポイント還元率アップ(楽天のSIMの利用者が楽天市場でお買い物をした際のポイント還元率アップ)は、端末の購入を条件とするものではなく規制の対象外となるものと考えられます。2万円以下の端末購入補助、いわゆる「三木谷割」も残るので、MNO各社に比べ、これまで通りのビジネスモデルで拡販できる楽天に有利であると思われます。

 ただ違約金については、新プランに乗り換えることで違約金が1000円になるMNOの利用者は2019年10月から徐々に増えていくことが想定されるため、楽天のサービス開始時点では多くのMNOの利用者が旧プランに基づく9500円の違約金を背負っている状態だと考えられます。

 この時期にどのように利用者を獲得していくのか、そして今後はレイトマジョリティー層にも食い込んでいかないといけない楽天にとって、この層のMNO契約者が違約金の低額の(もしくは期間拘束のない)新プランにどのくらい移行してくれるのか、そこからいかに楽天のSIMに乗り換えてもらうのか、がポイントになるでしょう。

 Y!mobileとUQ mobileは、躍進の大きな原動力となった端末と回線のセットプランが禁じられることで、大きな影響を受けることが考えられます。これまでテレビCM等で連呼してきた当初12カ月間のみの料金訴求は難しくなるでしょうし、MVNOに比べると2年縛りのプランも多いことから、その見直しも迫られます。親会社の新ビジネスモデルを阻害しないことも重要でしょうし、楽天とのバッティングも今後は考える必要があるでしょう。今後は難しいかじ取りが迫られるでしょう。

総務省 Y!mobileやUQ mobile(写真)などのサブブランドは、戦略を見直す必要が出てくる

 それ以外のMVNOはどうでしょうか。ここまで述べたように、個別の規律については、直ちにMVNOのビジネスモデルに大きな変革を迫るものはなさそうです。MVNOは、これまで端末と通信の分離を積極的に進めてきましたし、2年縛りに頼らず事業を展開してきたことも有利に働きます。これは、われわれMVNOが行ってきた路線が間違っていなかったことの1つの証左だといえます。

 しかし、逆にいえば、今後、MVNOはMNOと正面きって比較されるということです。例えば、MNOによる囲い込みを嫌がってMVNOをご利用いただいていたお客さまにとっては、今後はMVNOを続ける理由がなくなってしまうかもしれません。MVNOのビジネスに時代が追い付いてきたということは、われわれMVNOはさらにその先を目指す必要があるということでもあります。

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