「2年契約の解約金1000円」「端末割引2万円まで」の根拠は? 総務省に聞く

» 2019年06月14日 20時19分 公開
[田中聡ITmedia]

 総務省が6月11日に「非公開」で開催した第14回の「モバイル市場の競争環境に関する研究会」では、同省が携帯電話の2年契約プランにおける解約金を値下げすることや、端末割引額の上限を提案したことが明らかになった。

 総務省の料金サービス課にあらためて確認したところ、既に新聞各社が報道している通り、解約金は現在3キャリアが提供している9500円(税別、以下同)から1000円に値下げすること、2年契約プランの割引額を月額170円までにすること、端末の割引額を最大2万円にすることを提案したという。これらは2019年秋をめどに改正する電気通信事業法の省令として想定したもの。

 現在の料金プランは2年契約が主流ということもあり、9500円の解約金を前提として設計されている――と考えると、解約金を下げることで、携帯各社は基本料金を値上げせざるを得ないのではないか。また端末割引額の2万円は、どこから出た数字なのか。……という具合に疑問点が多々あるため、総務省の料金サービス課に話を聞いた。

―― そもそも、第14回の会議はなぜ非公開にしたのでしょうか?

料金サービス課 今回は表に出せない情報を踏まえて議論いただいたため、非公開としました。他方で、会議の模様や資料などは追って公表する予定です。

―― 新聞各社から出た報道は正しいということでよろしいでしょうか?

料金サービス課 記者クラブにて、どういう議論をしたのかをご説明する場を設けました。全ての報道に目を通したわけではありませんが、その場でお伝えした内容が報道されています。

―― 2年契約の解約金の上限を「1000円」とする根拠を教えてください。

料金サービス課 いくつかの報道にもある通り、アンケートをベースにしています。利用者に対するアンケートを実施し、他社への乗り換えを希望している方で、「解約金が1000円未満であれば乗り換える」と答えた方が約8割いらっしゃいました。アンケートの詳細は、18日に実施する第15回の会議で公開します。

―― 2年契約時の割り引き額を「月額170円」に制限する根拠も教えてください。

料金サービス課 大手3キャリアの主要なプランで、期間拘束のあるプランとないプランの差がだいたい月額1500円です。解約金の9500円を1500で割ると、約6.3になります。つまり6カ月以上使う人なら、期間拘束プランに入った方がお得になります。そこで、解約金が1000円になった場合、1000を6で割り、(約167だが)切りよく170円としました。このように、170円という数字は、現行の解約金との関係がベースになっています。

―― MNOの2年契約プランは解約金を9500円とする前提で組み立てられていると思います。解約金の上限を1000円とすることで、料金がかえって値上がりする恐れがあります。

料金サービス課 キャリアの現行プランは、通信料金と端末料金がセットになっていて分かりづらい。2年縛りや期間拘束の囲い込みが行われており、端末と通信それぞれが活性化されていないことを問題視しています。そこで法改正をしたわけですが、その柱は「通信と端末の分離」と「期間拘束の囲い込みを防止すること」です。違約金を1000円とするのも、囲い込みを減らし、選択肢が広げるためです。通信と端末の競争それぞれが活性化して、競争によって値段(端末代と通信料)は下がっていくと考えています。

分離プラン 電気通信事業法の改正案。「通信と端末の完全分離」と「行きすぎた囲い込みを是正する」旨が左側の1点目に明記されている

―― 解約金については月を経るごとに額を減らす方法もあると思いますが、そういう方向は検討しなかったのでしょうか?

料金サービス課 今のところ、案の中にはありません。

―― 定期契約の自動更新については容認するのでしょうか。あるいは、何らかの規制を設けるのでしょうか?

料金サービス課 一定のルールを設けたいと考えています。まず、期間拘束を伴うプランを契約する際に、自動更新にするかしないかを、利用者が選べることを条件とします。もう1つの条件が、利用者が自動更新あり、なしのプランどちらを選んでも、料金やその他の提供条件が同一であることです。

―― 自動更新自体は問題ないのでしょうか。

料金サービス課 自動更新自体を禁止するわけではありません。現在も、各キャリアが解約金の発生しない更新期間を3カ月としているように、選べるようにすることが趣旨です。

分離プラン 3キャリアとも、解約金のかからない期間を3カ月にしている

―― 端末の割り引き上限を2万円とする根拠も教えてください。

料金サービス課 通信役務の継続利用を条件とする端末代金の割引は禁止しますが、単に通信役務の利用を条件として割り引く場合については、2万円を上限とします。ARPUと事業者の利益率、利用者がスマートフォンを使う平均期間を勘案して計算すると、約3万円になります。これはドコモさんが出した数字ですが、現行の市場環境を踏まえたものなので、(今後)競争が活性化する期待を込めて、より厳しい基準で2万円としました。

分離プラン ドコモは割引額の上限について、5月30日の第13回会議で「3万円」という具体的な数字を出した

―― 今回の規制は、既存のMNOだけでなく、楽天モバイルやMVNOも対象になるのでしょうか? 日経新聞の報道では、100万契約以下のMVNOには制限をかけないとされています。

料金サービス課 楽天モバイルは10月からMNOに参入予定ですが、参入後は(規制の)対象となります。MVNOも適用されますが、競争に影響を与えない規模の事業者、すなわち例外については検討しています。詳細な条件は18日に公表する予定です。



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