「解約金値下げ」と「端末割引の制限」、キャリアはどう考える? ドコモ料金制度室長に聞く石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2019年06月15日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 分離プランなどを義務化した電気通信事業法の改正を受け、総務省では、施行に向けた具体案の検討が進められている。その一環である有識者会議の「モバイル市場の競争環境に関する研究会」と「ICTサービス安心・安全研究会 消費者保護ルールの検証に関するWG」では、端末購入補助の扱いや、2年契約に関する話題が議論されている。この会議で、端末購入補助について踏み込んだ提案をしたのが、NTTドコモだ。同社は上限を3万円までと明記し、その根拠も明かした。

 これに対し、KDDIは2年契約の解除料を1カ月分のARPU(1ユーザーあたりからの平均収入)にする案を披露するなど、各社がさまざまな立場でヒアリングに応えている。一方、6月11日に非公開で開催された同会議では、総務省側が通信の継続を前提としない補助を2万円に、2年契約の解除料を1000円とする案を提出。有識者からの反論もあり、議論が紛糾しているという。では、改正電気通信事業法が適用される当事者である、ドコモはどのように考えているのか。同社の料金制度室長の田畑智也氏に話を聞いた。

ドコモ “ドコモ案”の狙いを語る田畑氏。写真は5月に撮影したもの

3万円はあくまで上限、代理店値引きなども含んだ総額を提案

 分離プランである「ギガホ」「ギガライト」が開始され、夏モデルから、月々サポートや端末購入補助を廃止したドコモ。一見すると、有識者会議で提案した3万円まで端末購入補助を認める案は、これと矛盾しているようにも思える。「ドコモは月々サポートのような端末購入補助を復活させたいのではないか」と考えた向きもあるはずだ。だが、田畑氏はこうした見方を否定する。

 「ドコモが3万円値引きしたいというわけではありません。今までは、何かがあると抜け道がありました。分離プランベースの競争に向かっていくときに、歯止めをかける必要があると考えています」

ドコモ ドコモは割引の上限を3万円に限定することを提案した

 もともと、分離プランでの提供が義務化されれば、月々サポートのような通信料への割引は難しくなる。一方で、「そうではない値引きには一定の歯止めをかけておいた方がいい」と田畑氏。割引自体は商習慣として完全には禁止できず、キャリアだけでなく、メーカーや販売代理店なども行えるからだ。ドコモの提案した上限3万円も、こうした各プレーヤーからの割引を合算したものを想定しているという。田畑氏は「資料には書き切れていないが、代理店とキャリア、合わせて3万円までということにした方がいいのではないか」と語る。

 代理店は、キャリアからの売り上げで生計を立てている。お金の流れを考えると、割引分の代金をキャリアがあらかじめ乗せることも可能になるというわけだ。これに、上限3万円までという制約をかけるのが、ドコモの狙いといえる。ただ、上限の金額を明記してしまうと、その割引が常態化してしまう可能性もある。田畑氏も、「そういう懸念は確かにある」と認めつつも、制限の意義はあると語る。

 「いくら分離といっても、端末割引は効率がいいスイッチング(ユーザーにキャリアを移らせる)手法の1つで、そこに戻らないようにするための考え方です。ドコモとして、引き続き値引きをしたいからこの提案をしたわけではありません」

ドコモ あくまで抜け道をふさぐことが、割引の上限を提案した趣旨だという

 3万円という額は、ドコモが提出した資料にある通りだ。ARPUに営業利益率である20%をかけ、端末の平均利用期間である36カ月分それ(ARPU)を支払った場合の金額になる。田畑氏は「オープンな情報で整理すると、大体どのキャリアもARPUは似たような数字になり、営業利益率も20%前後。大きくは外れていない。端末の利用期間も、機能が向上した結果、長期化している」と、その根拠を語る。

 一方で、ソフトバンクは複数案を同会議で提案。総額方式で割引を制限する考えに加え、率を定める方式も選択肢に含めた。これについて、田畑氏は「その議論はあると思っていた」としながらも、不公平感が残ると話す。

 「10%、20%、30%という建付けでやると、ハイエンドモデルの方が割引率は高くなってしまいます。高額な端末に高額なキャッシュバックでとなると、相対的に不公平感が残ります。また、運用面を考えると、機種ごとに割引額が異なるので、数が膨大になります。端末の価格自体も落ちることがあるので、運用がしづらいと思います」

ドコモ ソフトバンクは、複数案を提案し、幅を持たせた格好だ
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