スウェーデンの通信機器メーカー「Ericsson(エリクソン)」がこのほど、2019年6月版の「Mobility Report(モビリティレポート)」を公開。2024年の終わりまでに5G(第5世代移動体通信システム)の契約者数が全世界で19億件、全モバイル通信のトラフィックに占めるシェアが35%に達するとの見通しを示した。
これに合わせて、同社の日本法人であるエリクソン・ジャパンが同レポートの説明会を開催。藤岡政宣CTOがその内容を解説した。この記事では、5G携帯電話(スマートフォン)やモバイル通信の契約者数の予測に関する部分を抜粋してお伝えする。
モバイル通信の加入者(契約者)数の推移を通信方式(規格)別に見た場合、EricssonではLTE(LTE-Advancedを含む)のシェア上のピークは2022年に訪れ(53億契約)、その後5Gの普及に従って少しずつシェアを減らすものの、5年後の2024年段階ではトップを保つと予測している。
LTE以前の旧世代に目を向けると、日本や韓国以外で使われているGSM(2G)の契約者数は引き続き減少を続け、2024年段階では5億契約を下回るとの見立てとなっている。国や地域によってはGSMの停波を行うキャリアも出てきているが、ゼロ(完全廃止)とは行かないようだ。
3G(第3世代移動体通信システム)規格の1つである「W-CDMA」については、意外と減少幅が少なく、2024年段階でも“第3の規格”として残りそうである。
5Gについては、2024年までに全モバイル契約の約22%、約19億契約まで普及すると見ているという。前回(2018年11月)のレポート(PDF形式)では「全モバイル契約の17%、約15億契約まで普及」との予測だったので、わずか7カ月で「上方修正」されたことになる。これは全世界的に5G通信サービスの普及を早める動きが見られることを反映した結果のようだ。
LTE(4G)と5Gの普及速度については、Ericssonは5GはLTEより勢いよく普及すると見ている。ただし、契約の大半はスマートフォンになるとの見立てで、5Gの特徴のうち「超低遅延」「超多接続」を生かせるIoT(モノのインターネット)分野での普及は2020年代後半になるとしている。
ただし、この予測はあくまで世界全体での状況を示したもの。IDC Japanは日本での5G普及はLTEよりも緩やかになるとの予測を立てている。
Ericssonは、全世界で2024年にはモバイル契約の約22%が5G契約になると予測するが、その“濃淡”を見ると地域差がハッキリと見受けられる。
5Gが一番急速に普及すると見られるのが米国を含む北米地域で、全契約の63%が5Gになるとの見立てだ。次点は、日本や韓国、中国などを含む北東アジア地域。全契約の47%が5Gになると予測されている。西ヨーロッパも比較的普及率が高くなりそうだ。一方、中東・アフリカやインド、中南米などではそれほど5G普及が進まないと見られている。
5Gシェアが高い地域は、経済的に発達している地域でもある。端的にいえば5G用のインフラを構築する余力があるキャリアが多く、ユーザーも5G端末を買う経済力を備えている。その中でも特に北米地域のシェアが高まる理由としては、5Gの特徴である「超高速・大容量」を生かせるコンテンツが充実していることもあるという。
一方、5Gシェアが低い地域は、経済的に発展が進んでいない地域でもある。その中でも少し特殊な傾向を示しているのがインド。2018年時点ではGSMのシェアが半分近くを占めているが、2024年段階では82%がLTEで、W-CDMAは0%、つまり無くなるとの見立てとなっている。これはインド市場において固定ブロードバンド回線が普及していないこと、キャリア間競争が非常に熾烈(しれつ)で廉価なLTE通信サービスの普及が進んだことなどが影響しているようだ。
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