まず、ハイエンドモデルのAQUOS zero2は、“ゲーミング”という明確な売りを打ち出した。初代AQUOS zeroも、有機ELディスプレイを搭載し、大画面と軽さを両立させた端末で、ゲームとの相性のよさはうたわれていたが、「AQUOS zero2では、eスポーツに積極的にかかわり、ゲームを新たなコミュニケーション文化として発展させていきたい」(中野氏)と、ゲーミング用途に向くことを全面に打ち出していく。
単に売り文句としてゲームを使っただけでなく、ゲーム向きの機能も大幅に強化している。その代表例が、240Hzのリフレッシュレートを誇るディスプレイだ。一般的なスマートフォンは60Hz、つまり秒間60回映像を書き換えているが、AQUOS zero2のスペックはその4倍。1秒間に240コマもの映像を高速に表示させていることになる。ただし、厳密に言うと、「1枚1枚の間に黒い映像を表示して、更新回数を240回にしている」(小林氏)という。つまり、実際の映像は120フレームになるということだ。
これによって、真っ黒い映像がチカチカと目に映ってしまうのかと言えば、そうではない。「人間の目には、網膜残像効果が発生する」(同)からだ。120Hzでそのまま映像を流すと、直前のフレームが認識されたままになり、それが残像のように見えてしまう現象がある。間に真っ黒のフレームを挟むことで、それが軽減され、映像が滑らかに見えるようになる。ゲーミング用のディスプレイなどには搭載されている仕組みだが、それを手のひらに収まるスマートフォンで実現したというわけだ。
タッチパネルもリフレッシュレートと同様、4倍速で駆動するようにした。操作性については、「有力なゲームベンダーと相談しながら開発していく」(同)と、端末の機能そのものにゲーム業界の意見を取り入れていく。さらに、AQUOS zeroの名称の由来ともいえる、“軽さ”にも磨きをかけた。AUOQS zero2は、6.4型ながら、重さはわずか143g。先代より画面サイズを広げた一方で、重量は下回ることができた。小林氏も「世界最軽量だったAQUOS zeroをさらに上回る、世界最軽量の更新だ」と胸を張る。ゲームをプレイする際に長時間持っても手や腕が疲れにくく、実際手に取ってみると、その軽さに驚かされる。
ただし、中国メーカーや台湾メーカーなどが販売するゲーミングスマートフォンとは異なり、あくまでデザインは一般的なハイエンドモデルの枠内に収めた。シャープが狙うのは、「エンジョイ層」(同)と名付けたボリュームゾーン。「パズルゲームをヒマつぶしで遊ぶライト層と、1日に何時間もゲームに没頭するガチ層の間に、趣味的に、カジュアルにゲームを楽しむエンジョイ層がいる」(同)と見ているからだ。その意味で、AQUOS zero2は、とがったゲーミングスマートフォンより、幅の広い層を狙った端末といえる。
対するAQUOS sense3、sense3 plusは、そのコストパフォーマンスにさらに磨きをかけた。これまでのAQUOS senseは、おサイフケータイや防水・防塵(じん)といった日本メーカーとしての得意分野を生かしつつ、ミドルレンジモデルでお得感を打ち出していた。一方で、プロセッサはSnapdragon 400シリーズと、同価格帯のモデル、特に海外メーカーのモデルに一歩リードを許していた。日本向けの仕様とパフォーマンスが、トレードオフになっていたといえる。
AQUOS sense3、sense3 plusは、パフォーマンスの改善に一歩踏み込んだモデルだ。前者はSnapdragon 630、後者はSnapdragon 636を採用し、処理能力を底上げした。カメラも、AQUOS senseシリーズとしては初のデュアルカメラを搭載。標準カメラに加え、広角カメラにも対応した。バッテリーもシリーズ最大の4000mAhを搭載する。この2機種で目指したのは、「新しい“必要十分”を定義すること」(通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部の清水寛幸氏)だ。
肝心な価格が発表されていないため、コストパフォーマンスの“コスト”部分が未知数だが、AQUOS sense3に関しては、従来のシリーズと同程度を目指しているという。先に発表された楽天モバイルの「AQUOS sense3 lite」は、liteをうたいながらも仕様はAQUOS sense3に近く、価格は3万円をわずかに下回っている。スペックの差はないことから、近い価格帯を打ち出せるはずだ。中野氏は「企業努力と合わせて、フォックスコングループのポジションをフル活用した」と安さの秘密を語る。AQUOS senseシリーズは販売台数も多く、部品などの調達で規模の経済も有効に働いたようだ。
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