10月1日から、改正・電気通信事業法が施行される。これによって分離プランが義務化され、モバイル業界の各プレイヤーに大きな影響を与えることが予想される。特に、割引の上限が2万円になったことは、キャリアのみならず、そこに端末を納入するメーカーへのインパクトも大きい。売れ筋のモデルが変わる可能性があるのはもちろん、販売台数の減少に見舞われてしまう恐れもある。キャリアの影響力が落ちた分を、オープンマーケットで補う動きも活発になるかもしれない。
Androidスマートフォンのメーカーとして、国内シェア1位を誇るシャープも、冬商戦に向けた新モデルでは、この市場動向を意識した。目指したのは、「なんとなくハイエンドスマートフォンを選ぶ流れ」(シャープ 通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の小林繁氏)からの脱却だ。この戦略に基づき、同社は「AQUOS zero2」「AQUOS sense3」「AQUOS sense3 plus」を発表した。ここでは、その詳細を解説していきたい。
早くからスマートフォン市場に取り組んできたシャープだが、ブランド力の弱さや、トレンドへのキャッチアップが遅れたことで、シェアはじりじりと低下していた。この流れを変えたのが、約2年半前に行ったブランドの刷新だ。これまで、キャリア別に分かれていたフラグシップモデルのブランドを「AQUOS R」に統一。同時に、ミドルレンジのスマートフォンにも注力し、「AQUOS sense」シリーズを生み出した。
こうした取り組みが評価され、シャープのシェアは急速に回復。「AQUOS zero」を加えた「3つのシリーズをご評価いただき、順調に販売を伸ばすことができた。2019年上半期も、Androidスマートフォンでシェアナンバー1になった」(通信事業本部 本部長 中野吉朗氏)という。特に、台数ベースでは大手キャリアだけでなく、MVNOや家電量販店に直接販売したAQUOS senseシリーズの売れ行きがよく、初代は、派生モデルも含めたシリーズ累計の販売台数が200万台を突破している。
ハイエンドモデルのブランド力強化や、ミドルレンジモデルの拡大といった戦略は、ここ数年のトレンドに沿ったものだが、冒頭述べた通り、10月1日からはその流れがさらに加速する可能性がある。先の小林氏は、ユーザーの二極化が進むと予想しながら、次のように語る。
「1つ目が、強い意志を持ち、明確な目的を持ってフラグシップモデルを選ぶ人。もう1つが、間違いない賢い選択をしたい、価値あるパフォーマンスを選びたいと思っている人。多くのものから比較、吟味して効果的なものを選ぶようになる」
今まで以上にハイエンドモデルには明確な個性やブランドが、ミドルレンジモデルにはコストパフォーマンスのよさが求められるようになるというわけだ。この戦略に従い、自社製の有機ELディスプレイを搭載したAQUOS zero2は、持ち前の個性をさらに強化。ユーザー層も初代AQUOS zeroより明確化した。対するAQUOS sense3、sense3 plusは、歴代最高とするコストパフォーマンスを打ち出している。
“何となくハイエンド”は終わり 分離プラン時代に投入する「AQUOS zero2」「AQUOS sense3」の狙い
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シャープはなぜ有機ELスマホを投入するのか? “攻撃的”「AQUOS zero」の狙いCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.