KDDIとKDDI総合研究所は11月2日、東京モーターショーで開催した国際的ドローンレース・カンファレンス「FAI Drone Tokyo 2019 Racing and Conference」(以下:DTRC2019)において、第5世代移動通信システム「5G」を活用した映像配信や4Kリアルタイム中継を行う5Gプレサービスを提供した。
次世代基盤整備室マネージャーの松木友明氏は、「これからの時代は、単純に5Gネットワークを使い放題にするだけではなく、5Gネットワークを用いた体験を拡張していくことを目指している」と話す。5G時代では、あらゆる物がインターネットにつながり、携帯電話にとどまらないデバイスやサービスの登場が期待されている。
そんな中でKDDIが今回のイベントでアピールしたいのは「エンタメを5Gネットワークでどう変えるか」だ。松木氏は「最近では、個人でも簡単に動画を配信できるようになったが、今後は5Gを活用することで屋外でも高精細な映像を途切れることなく配信できるので、大規模なイベント会場でも大いに活用できる」と期待を寄せる。
会場では、DTRC2019レース決勝の様子を撮影用ドローンが上空から撮影し、KDDI総合研究所が開発した超低遅延4K伝送システムを用いて、5G(28GHz帯)により会場内の大型モニターに4K映像をリアルタイムで中継した。
PRODRONEとKDDIが共同開発したドローンは、信州大学と長野県駒ヶ根市、KDDI、PRODRONE、中央アルプス観光らが10月16日に駒ヶ岳ロープウェイの千畳敷駅周辺にて実施した、5Gを活用して山岳登山者をタブレットなどから見守る実証実験でも活用された。
今回のイベントでは、DTRC2019レース決勝の様子を数メートル上空から撮影するだけで、動き回る必要がないため、イベントに合わせて部品やカメラも組み替えたそうだ。
超低遅延4K伝送システムでは、エンコーダーで4K映像を圧縮し、5Gアンテナを通じてデータが送られ、デコーダーによって圧縮されたデータを元の品質に戻す。KDDI総合研究所、超臨場感通信グループリーダーの内藤整氏によると、従来の無線通信(4Gなど)を活用したドローンによる4K映像中継は、カメラでの撮像からディスプレイ表示まで数百ミリ秒の映像遅延が発生してしまうという。しかし同システムでは、100ミリ秒を下回る世界最小の超低遅延を実現したという。
「今回のようなエンタメイベントの他にも、スポーツイベントでも遠隔地からの生中継や、送られてくる映像を見ながら可動式カメラを遠隔制御するなど、リアルタイム性が求められるシーンでも、超低遅延4K伝送システムや5Gネットワークが役立つ」(内藤氏)
イベントでは、YouTuberのカジサックさんが、DTRC2019レース決勝の様子と日向坂46の音楽ライブを撮影し、カジサックさんのYouTubeチャンネルでライブ配信を行った。
5Gサービスの一端を垣間見られたプレサービスだったが、一般ユーザーがより身近に5Gを体験できるまでは、まだ時間がかかりそうだ。KDDIの5G商用サービスは2020年3月に開始する予定だが、松木氏は「まずはB2B2Cでの展開を強化していく。5Gの商用端末が出そろった段階で、コンシューマー向けのサービスを本格的に展開していきたい」と話した。
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