世界を変える5G

KDDIが“5Gプレサービス”を披露 ドローンレースをリアルタイム中継

» 2019年11月06日 06時00分 公開
[金子麟太郎ITmedia]

 KDDIとKDDI総合研究所は11月2日、東京モーターショーで開催した国際的ドローンレース・カンファレンス「FAI Drone Tokyo 2019 Racing and Conference」(以下:DTRC2019)において、第5世代移動通信システム「5G」を活用した映像配信や4Kリアルタイム中継を行う5Gプレサービスを提供した。

KDDI_5G 会場の様子。非常に多くの人が集まった

 次世代基盤整備室マネージャーの松木友明氏は、「これからの時代は、単純に5Gネットワークを使い放題にするだけではなく、5Gネットワークを用いた体験を拡張していくことを目指している」と話す。5G時代では、あらゆる物がインターネットにつながり、携帯電話にとどまらないデバイスやサービスの登場が期待されている。

 そんな中でKDDIが今回のイベントでアピールしたいのは「エンタメを5Gネットワークでどう変えるか」だ。松木氏は「最近では、個人でも簡単に動画を配信できるようになったが、今後は5Gを活用することで屋外でも高精細な映像を途切れることなく配信できるので、大規模なイベント会場でも大いに活用できる」と期待を寄せる。

KDDI_5G KDDIで次世代基盤整備室のマネージャーを務める松木友明氏
KDDI_5G 4K映像の伝送に5Gは欠かせない
KDDI_5G ドローンと5Gの活用(イメージ図)

 会場では、DTRC2019レース決勝の様子を撮影用ドローンが上空から撮影し、KDDI総合研究所が開発した超低遅延4K伝送システムを用いて、5G(28GHz帯)により会場内の大型モニターに4K映像をリアルタイムで中継した。

KDDI_5G 5Gの通信モジュールを搭載した4K撮影用ドローンは、ドローンメーカーの「PRODRONE」とKDDIが共同開発した
KDDI_5G この部分に5Gタブレットやスマートフォン端末を取り付けるという
KDDI_5G ドローンに取り付けられた4Kカメラ

 PRODRONEとKDDIが共同開発したドローンは、信州大学と長野県駒ヶ根市、KDDI、PRODRONE、中央アルプス観光らが10月16日に駒ヶ岳ロープウェイの千畳敷駅周辺にて実施した、5Gを活用して山岳登山者をタブレットなどから見守る実証実験でも活用された。

 今回のイベントでは、DTRC2019レース決勝の様子を数メートル上空から撮影するだけで、動き回る必要がないため、イベントに合わせて部品やカメラも組み替えたそうだ。

KDDI_5G 今回のイベントでは会場内隅の計2カ所に5G用のアンテナが設置された(どちらも帯域幅は28GHz帯でスタンドアロン方式を利用)
KDDI_5G DTRC2019レース決勝のドローン
KDDI_5G DTRC2019レース決勝の様子

 超低遅延4K伝送システムでは、エンコーダーで4K映像を圧縮し、5Gアンテナを通じてデータが送られ、デコーダーによって圧縮されたデータを元の品質に戻す。KDDI総合研究所、超臨場感通信グループリーダーの内藤整氏によると、従来の無線通信(4Gなど)を活用したドローンによる4K映像中継は、カメラでの撮像からディスプレイ表示まで数百ミリ秒の映像遅延が発生してしまうという。しかし同システムでは、100ミリ秒を下回る世界最小の超低遅延を実現したという。

KDDI_5G KDDI総合研究所で超臨場感通信グループリーダーを務める内藤整氏

 「今回のようなエンタメイベントの他にも、スポーツイベントでも遠隔地からの生中継や、送られてくる映像を見ながら可動式カメラを遠隔制御するなど、リアルタイム性が求められるシーンでも、超低遅延4K伝送システムや5Gネットワークが役立つ」(内藤氏)

 イベントでは、YouTuberのカジサックさんが、DTRC2019レース決勝の様子と日向坂46の音楽ライブを撮影し、カジサックさんのYouTubeチャンネルでライブ配信を行った。

KDDI_5G ソニーモバイル製の5Gスマートフォン試作機で撮影
KDDI_5G YouTubeチャンネルでのライブ配信
KDDI_5G 日向坂46による音楽ライブの様子

 5Gサービスの一端を垣間見られたプレサービスだったが、一般ユーザーがより身近に5Gを体験できるまでは、まだ時間がかかりそうだ。KDDIの5G商用サービスは2020年3月に開始する予定だが、松木氏は「まずはB2B2Cでの展開を強化していく。5Gの商用端末が出そろった段階で、コンシューマー向けのサービスを本格的に展開していきたい」と話した。

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