被災地域外なのに適用された「災害時データ無制限モード」 災害対応を考える5分で知るモバイルデータ通信活用術(2/2 ページ)

» 2019年11月19日 12時00分 公開
[島田純ITmedia]
前のページへ 1|2       

災害救助法が適用されないのに「災害時無制限モード」が適用された

 事前に備えができたおかげで、筆者の自宅には被害がありませんでした。しかし、不思議な現象が発生しました。

 筆者がメインで利用しているNTTドコモ回線は、契約者住所も請求書送付先住所も東京都新宿区。11月19日現在、新宿区には災害救助法が適用されていません。つまり、災害救助法適用に伴うドコモの支援措置の対象外となるはずです。

 しかし、台風19号の通過から数日後、契約者向けWebサービス「My docomo」のアプリをチェックすると、データ通信量に「災害救助法による支援措置適用中」という表示が出ていたのです。

災害救助法による支援措置適用中 データ通信量を確認すると「災害救助法による支援措置適用中」の表示が

 自分の住所が災害救助法の対象外エリアであることは事前に確認していたので「あれ、おかしいな……何でだろう?」と首をかしげてしまいました。

 よくよく調べてみた所、筆者の契約している「ウルトラシェアパック」(新規受付終了)のシェアグループに災害救助法が適用される住所の回線が含まれていることが理由でした。

 ドコモの「災害時データ無制限モード」(月間データ通信量を無制限とする措置)は、シェアパックに含まれる回線のどれか1つの住所が災害救助法の適用地域にあれば、シェアグループ全回線に適用されます。同社のWebサイトにも、こんな注釈文があります。

※対象となるお客様が「シェアパック」をご契約の場合、代表回線・子回線に関わらず、加入している「シェアパック」が速度制限解除の対象となります。

 本件についてドコモ広報部に確認した所、以下のような回答が得られました。

 被災時には、被災した方だけではなく、家族においても生存確認等の連絡や、被災地の情報収集などでデータ量が増えることを想定しております。また、シェアパックはデータ量をシェアする契約となっているため、回線単位にはせず、対象となる回線を含む場合は、シェアグループ単位で適用しております。

 災害による直接の被災者だけでなく、その家族が生存確認などの連絡や被災地の情報収集などでデータ通信量が増えることを想定しているため、シェアパック単位で通信速度制限を適用しない措置をとっているとのことです。

 振り返ると、筆者も自宅周辺はもちろんですが、被害が大きくなりそうな地域に住む親類の自治体が公開しているハザードマップを確認したり、親類の家の近くを流れる河川の水位や過去における水害の発生の有無を調べたりと、ネットで情報収集していました。

 筆者自身は自宅の固定回線経由でネット通信をしましたが、家屋に被害が発生するなどして自宅を離れたり、出先から自宅への移動が困難になったりといった「もしも」を考えると、シェアグループ全体にデータ無制限モードを適用するというドコモの措置には強い安心感を覚えます。

注釈 ドコモのWebサイトに記載された注釈。シェアグループ内に災害救助法の適用地域に住所がある回線が1つでもあると、グループ内全回線が災害時データ無制限モードの適用対象になる

 なお、災害救助法の対象自治体に住所のある契約者に対する速度制限の緩和やデータ通信量の増量といった措置は、ドコモ以外のキャリアも行っています。

 仮に、しばらくの間避難所や親戚宅に身を寄せる必要がある場合でも、データ通信が速度制限の対象にならないのであれば、動画配信サービスも使いやすくなります。

 「通信量が多くなるサービスを使うとは何事か!」と思う人もいるとは思いますが、普段と異なる生活環境を強いられるのは、非常にストレスがたまります。特に子どもは大人以上にストレスがたまるはずです。

 そんな時、お気に入りの動画やアニメを見ることで子どものストレスが和らぐのであれば、活用させてもらいたいというのが正直な気持ちです。

 ただ、筆者としても災害時にネットワークの負荷はなるべくかけたくないとは考えています。そのため、例えば動画やアニメのコンテンツは事前にデバイスへとダウンロードしておいて、通信は契約状態の有効・無効や不正利用がないかの確認だけに使う「災害モード」的なものがあれば、ネットワーク負荷が厳しくなる環境でも使いやすくなると思います。

動画を見るイメージ動画を見るイメージ 避難先で動画を見られれば子どものストレスも和らぐはず(写真はイメージです)

各キャリアは非常用電源強化に取り組んでいる

 各キャリアでは、相次ぐ自然災害などを教訓として、基地局の非常用電源を強化する取り組みをしています。

 例えばドコモでは、災害拠点病院や市役所・町村役場など重要拠点をカバーする「中ゾーン基地局」において、停電から72時間以上稼働できるようにする取り組みを進めています。10月の新商品発表会で確認した所、中ゾーン基地局の電源強化は災害拠点病院や市役所をカバーする分については一部を除き完了しているとのこと。通常基地局についても、少なくとも6時間の稼働を目標に予備電源の整備を進めているそうです。

ドコモの災害対策動画を見るイメージ ドコモの災害への取り組み(2019年度第2四半期決算説明会資料より引用)

 ドコモ以外のキャリアでも、非常用電源の充実を始めとする停電対策を鋭意進めています。何らかの理由で停電が発生しても、即座にモバイル通信が利用できなくなる事態が発生するリスクは低くなりました。

 しかし、先日の台風15号では、千葉県を中心にキャリアの想定を超えた長時間の停電が発生しました。予備電源が枯渇した基地局は、通信ができなくなります。周辺の基地局でカバーするとしても、エリアカバーや速度が普段通りに行かないことも考えられます。

 災害時も影響を受けにくい基地局(重点対策されている拠点)を把握しておくと、万が一の時に役立つかもしれません。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年