―― そのガイドラインですが、昨年(2019年)11月に第2版ができました。以降は、どのような動きがあったのかを教えてください。
粟津氏 RMJの正会員が第2版の発表時から増えています。ガイドラインを守っていることを証明する、認証制度も建てつけました。コロナの関係でスタートが遅れてしまいましたが、6月には日本テレホンと携帯市場が申し込みをしています。8月ぐらいには、第1号の認証が出てくる状況です。
―― 本当は何月ぐらいに開始する予定だったのでしょうか。
粟津氏 4月中です。RMJについても、4月に一般社団法人になりました。認証制度も、発表時はガイドラインを守っているかどうかだけでしたが、その後にバッテリーに関する認証も作りました。通常の認証と、追加認証という形になり、通常の認証を取った法人に限り、同時もしくは追加でバッテリーの認証を取ることができます。
―― それはどういった認証なのでしょうか。
粟津氏 スマホはバッテリーの残量(新品からどのぐらい最大容量が減っているかを示す値のこと)を調べられますよね。残量を調べて、プライスカードやWebに表示すれば、安心感を出せます。メーカーによって表示がバラバラでしたが、認証では検査の基準を作り、その基準にのっとって表示するようにしています。
―― 認証については、ガイドラインを守っているかどうかをどのように検証するのでしょうか。
粟津氏 審査員がいます。ガイドラインに沿った形でものを売っているかどうか、工場や店舗まで実際に行って、評価基準に沿って審査します。審査した結果は、審査委員会に報告し、そこでご判断いただく形になります。審査員には、総務省の有識者会議の新見育文先生、北俊一先生、長田三紀先生、西村真由美先生に入っていただき、僕を含めた5人でやる予定です。
―― 基準に関してですが、例えば「A」と付いたものは、どのお店で買っても同程度のもの――つまり、ある程度、品質は保証されると考えていいのでしょうか。
粟津氏 その点は文章化しています。「A」ならこれぐらい、「S」ならこれぐらいといった形です。ただし、当然個人差はありますし、会社によって限りなく「B」に近い「A」を「A」として売ることもあるでしょう。そこは抜き打ちでチェックして、調整していかなければならないところだと考えています。覆面でやっていかないと、共通化はできないかもしれません。
RMJではなく、携帯市場の社長としてのお話になりますが、僕たちの方で、それを解決するツールも作っています。要素を分解して、パーツごとにマイナスの点数をつけていき、その合計値が0だったら「S」、1〜5だったら「A」、6〜20だったら「B」と決めることで、人によるバラつきを吸収するというものです。まずは僕たちからやってみようということで、ツールを作り込んでいます。
―― そのツールを、RMJを通じて他社に提供することもお考えですか。
粟津氏 ゆくゆくはそこまでいけたらいいですね。ガイドラインを“乗っ取った”と言われてしまうかもしれませんが(笑)。実際、消費生活センターでも、買い取りのトラブルは多くなっています。「B」だと思って送ったら「C」の判定がつき、返送が着払いになったといったようなことです。コンシューマーはいくらで売れるかを期待しながら査定に出すので、期待値とのズレがあるとクレームになってしまう。Webを通じた買い取りだと、そのズレも大きくなりがちです。
―― 追加のバッテリー認証は、どうやって検証するのでしょうか。何か、チェッカーのようなものを使ったりするんでしょうか。
粟津氏 チェッカーが存在するのは知っていますが、その値が正確なものかどうかが分かりません。端末内の機能を使って、パーセンテージなどを確認していきます。ただし、出品する全数のチェックはできません。iPhoneに関してはiOS 11.3より前にはその機能が付いていませんし、Androidもメーカーによってはないことがあります。そのため、仕組みを作って運営されているかどかが、評価基準になります。
―― 認証制度がスタートした一方で、比較的大手の中でも加盟していない企業があります。この差はどうしていくお考えですか。
粟津氏 引き続き、RMJに入っていただけるよう、お声がけはしていきます。ただ、入るかどうかは各社の判断になるため、強制はできません。業界の透明度を高くし、一般の消費者の信頼度を高めていくのがRMJの本来の目的です。そこに賛同いただける企業には、ぜひ入っていただきたい。以前は任意団体で、ガバナンスに脆弱(ぜいじゃく)な部分がありましたが、一般社団法人化して、会社法にのっとってやらなければならなくなり、そこも強化されました。
―― 先ほどから、コロナのお話が何度か出てきましたが、実際にはウイルスが死滅していたとしても、マインド的に、人が使ったものは嫌だと思う人が増える可能性もあります。消毒などについての基準は、何かあるのでしょうか。
粟津氏 ガイドラインにはクリーニングの方法は載せていますが、消毒で具体的にこういったものを使ってくださいということは定めていません。そこは、各自がやっています。例えば携帯市場だと、UVでウイルスを除去するといったことをやっていますし、検品する人も手袋やマスクを着用しています。ガイドラインが第3版、第4版になったときには、そういったものも盛り込まないといけないのかもしれません。
―― ただ、ガイドラインの項目が増えてくると、事業者ごとの差別化要素が減ってしまう気もしました。
粟津氏 まさに、今のガイドラインは差別化ができるよう、最低限の基準でやっています。そこに加えて、消毒なりは各社がオリジナルでやっていけるようになっています。ガイドラインに入れるとしたら、共通性の高いものですね。
粟津氏によると、中古端末の市場規模は約400億円程度で、この数字は年々増加しているという。一方で、調査会社・MM総研が3月に発表した市場規模の予測によると、主端末としての利用率は2.4%とまだまだ少ない。ユーザーが中古スマートフォンを買わない理由を見ていくと、「バッテリー」「品質」「保証」「個人情報」「清潔感」の5つの不安に集約されるという。RMJの取り組みは、このイメージを変えていくためのものといえる。
一方で、中古市場への端末の供給は、減少してしまう可能性もある。ハイエンドモデルの販売数が減少するのと同時に、キャリアも下取りを以前よりも強化しているからだ。粟津氏がコメントしていた通り、現時点で電気通信事業法改正後に発売された端末を手放す人は非常に少ないため、影響が出始めるのは2021年から2022年にかけてになる。流通量を増やすには、キャリアの下取りよりも有利になる点をアピールするなど、ユーザーメリットを今以上に訴求していく必要もありそうだ。
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