世界を変える5G
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» 2020年08月20日 06時00分 公開

新型コロナウイルスが国内の5Gに与えた影響、2020年後半の5Gはどうなる?5Gビジネスの神髄に迫る(1/2 ページ)

今なお感染拡大が続いている新型コロナウイルスは、国内でようやくサービスを開始した5Gにも暗い影を落とすこととなった。インフラよりも端末の販売に大きな影響を及ぼした。「低価格スマホ」と「iPhone」が5G普及のカギを握っているといえる。

[佐野正弘,ITmedia]

 今なお感染拡大が続いている新型コロナウイルスは、国内でようやくサービスを開始した5Gにも暗い影を落とすこととなった。コロナ禍によって実際どのような影響が出ているのか、そして2020年後半以降はどのような形で普及が進むと考えられるのか、携帯各社を中心とした最近の動向から確認してみよう。

5Gのインフラ整備よりも契約数に大きく影響

 2020年3月に国内の携帯大手3社が相次いでサービスを開始した5G。だがその時点で既に新型コロナウイルスの感染が拡大しており、大規模なプロモーションができなかった。その後、政府が緊急事態宣言を発令したことで国内は“コロナ一色”という状態になってしまったこともあり、5Gに対する関心は高まることなく非常に静かなスタートとなった。

 では実際のところ、コロナ禍は携帯各社の5Gにどのような影響をもたらしたのだろうか。最も気になるのは5Gが利用できる場所を広げるためのインフラ整備に対する影響だ。実際、楽天モバイルはインドでのコロナ禍によるロックダウンで機器のテストができなくなったことから、国内での5G商用サービス開始時期を、当初予定していた2020年6月から2020年9月へと延期している。

 ただ全体的に見れば、コロナ禍がインフラ整備に与える影響は大きくないようだ。2020年4月時点では機器調達が遅れる可能性があるとして2021年度以降のエリア整備計画に影響が出るとしていたNTTドコモも、その後の機器調達が回復したこともあって、2020年8月3日の決算説明会では吉澤和弘社長が、エリア整備も順調に進んでいると話している。

5G コロナ禍で5Gの整備計画に遅れが生じる可能性があるとしていたNTTドコモも、その後機器調達が順調に進んだことから、従来通りの計画でエリア整備を進めるとしている

 現時点で最も大きな影響が出ているのは5G端末の販売だろう。特に緊急事態宣言が発令されていた時期は、携帯各社がショップを休業、または時間短縮営業を余儀なくされ、それが5Gの端末販売を滞らせる要因となった。

 ただその影響に関しては、3社間でやや温度差がある。最も危機感を抱いているのがKDDIで、2020年7月31日に実施された同社の決算説明会で、高橋誠社長は5G端末の販売が予定通りに進まず「少々焦りを感じている」と話していた。

5G KDDIは2020年4〜6月期、auの端末販売が前年同期比45%減少したと発表。電気通信事業法改正だけでなく、コロナ禍でショップの営業時間を短縮した影響も非常に大きいとのことで、5Gの普及にも大きな影響が出ているようだ

 というのもKDDIはauブランドの5の商用サービス発表時点で、3社の中では最も多い7機種の5Gスマートフォン投入を発表した他、映像作品や音楽、アートなどと5Gを連動させたリアルイベントの開催を多数打ち出すなど、当初より積極的に5Gをアピールしてロケットスタートを切る戦略に打って出ていたのだ。それがコロナ禍によってイベントは全て中止を余儀なくされ、auショップでの販売活動にも制約が出てしまったことで、思惑が大きく崩れたことが危機感につながったようだ。

5G KDDIは5Gのサービス開始発表当初より、音楽やアートなどと5Gを組み合わせた多数のイベント実施を発表していたが、コロナ禍の影響でそれらは全て中止となってしまった

「低価格スマホ」と「iPhone」が5G普及の鍵

 一方でNTTドコモは、2020年6月末時点で5Gの契約数が15万、8月1日時点では24万と、2020年度末の目標である250万契約からするとかなり少ないように見えるが「想定を上回っている」と吉澤氏は説明。ソフトバンクの宮内謙社長も、2020年8月4日の決算説明会で5Gの契約数は計画通りだと話している。両社共に2020年下期に5Gの獲得に注力する方針を打ち出しており、宮内氏は「晩秋から来年(2021年)にかけて5G祭りが始まる」とも話していた。

 なぜ2020年後半なのかというと、理由の1つは低価格の5Gスマートフォンが出そろうためだろう。既にソフトバンクの「OPPO Reno3 5G」やKDDIの「ZTE a1」など、ミドルハイクラスの5G対応プロセッサ「Snapdragon 765G」を搭載した低価格の5Gスマートフォンが投入されているが、Qualcommは2020年6月16日により低価格なミドルクラスの端末向け5G対応プロセッサ「Snapdragon 690 5G」を発表。シャープの他にLGエレクトロニクスやモトローラ・モビリティなど、国内に参入しているいくつかのスマートフォンメーカーが採用を明らかにしている。

5G KDDIが8月に、ミドルクラスのZTE製5G対応スマートフォン「a1」を発売するなど、比較的低価格な5G端末も増えてきている

 それに加えて、MediaTekがミドルクラスの5G対応プロセッサ「Dimensity 800」を既に投入していることを考えると、2020年後半以降に、それらのプロセッサを搭載した安価な5Gスマートフォンが急増すると考えられる。2019年の電気通信事業法改正による値引き規制で、高額な5Gスマートフォンを値引きできないことが、5G対応スマートフォンへの買い替えを阻む大きな要因となっているだけに、低価格モデルが増えれば買い替えが加速することは確かだろう。

 そしてもう1つの理由は、5G対応iPhoneが投入される可能性だ。2020年に投入される新iPhoneの詳細は現時点では不明だが、Appleはスマートフォンメーカー大手の中で唯一5G対応モデルを投入できておらず、5G対応のため“犬猿の仲”とされてきたQualcommと和解までしているだけに、新iPhoneは5G対応がなされる可能性が非常に高いのだ。

 そして日本ではiPhoneのシェアが非常に高いことから、新iPhoneが5Gに対応すれば買い替えが進むことで、必然的に5Gの契約が増えていくこととなる。そうしたことから携帯各社が5G対応iPhoneにかける期待は非常に高いとみられているのだが、一方でAppleは、コロナ禍の影響もあって2020年の新iPhoneの発表を数週間遅らせると予告しているのが気になる。

 これが数週間程度の遅れなら「大きな影響与えることにはならないと思う」とドコモの吉澤氏も述べているが、もし数カ月の遅れともなれば、iPhoneに期待している携帯各社の思惑は大きく崩れてしまうだろう。5G対応iPhoneが遅れなく投入されるか否かが、日本の5Gの普及を大きく左右することにもなりそうだ。

5G 2019年にドコモが実施した、新iPhone発売セレモニーより。例年iPhoneの新機種は9月上旬に発表され、9月下旬に発売される傾向にあるが、コロナ禍の影響で2020年は数週間遅れての発売となるようだ
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