世界を変える5G

ドコモの「LTE→5G転用」は2021年度後半から 決算説明会で吉澤社長

» 2020年10月29日 20時10分 公開
[井上翔ITmedia]

 NTTドコモは10月29日、2020年度第2四半期の決算を発表した。同日に行われた報道関係者向けの決算説明会において、同社の吉澤和弘社長が、既存のLTE(Xi)用の周波数帯を5Gサービスに転用する時期について言及する場面があった。

吉澤社長 決算説明に臨む吉澤和弘社長

auやソフトバンクと異なり「転用」に消極的なドコモ

 2020年3月、NTTドコモ、au(KDDIと沖縄セルラー電話)、ソフトバンクが相次いで5G通信サービスをスタートした。

 当初は5G用として新規に割り当てられたSub-6(3.5GHz帯/4.5GHz帯)とミリ波(28GHz帯)でのみエリア構築が認められていたが、LTE(4G)用として割り当てられた周波数帯を5Gに転用できる制度の整備が8月までに完了した。

 これを受けて、au(KDDIと沖縄セルラー電話)とソフトバンクは、5G基地局(と4G基地局)の開設計画変更を総務省に申請し、承認を受けた。これにより、LTE通信サービスで利用している周波数帯を5Gサービスに振り向けられるようになる。

 一方、LTE用の周波数帯を5Gに転用することに消極的なのがNTTドコモである。エリアを迅速かつ広くカバーすることよりも、5Gのメリットである「超高速」を生かせるエリア構築を優先しているためだ。

ドコモの計画 ドコモが2020年度末(2021年3月末)までに5G契約者を250万人、5Gエリアを500都市まで広げる計画。契約者数の増は11月5日に発表されるとされる普及価格帯の5G端末や、10月に発表されたiPhone 12シリーズによって加速する見通しだという

ドコモは2021年度後半から「転用」を始める予定

 しかし、現在LTE用で使われている帯域と比べると、5G用に割り当てられた帯域はエリアを広くカバーする上で不向きである。5Gユーザーが増えた際に通信の効率を高める観点も加味すると、いつかはLTE用の帯域をある程度5Gに転用せざるを得ない。

 問題はそのタイミングだ。10月29日に行われた報道関係者向けの決算説明会の質疑応答において、記者と吉澤社長との間で以下のようなやりとりがあった。

―― 5G基地局について、KDDIとソフトバンクはLTE用の周波数帯の一部を転用して整備することを発表しています。一方、御社はそこは(当面は)やらないという方針を示してきたと思います。

 今後の競争環境において、転用しないことがマイナスに働くことはないのでしょうか。また、他社が(転用によって)エリアを広げていくであろう中で、「ドコモの強み」をどうやって示していくのでしょうか。

吉澤社長 「ドコモはLTEを5Gに転用しない」と言ったことは一度もありません。(転用を始める)時期の問題だと思います。

 まず、2020年度と2021年度は、5G用に割り当てられたSub-6とミリ波を使って、いかにエリアを広げていくかということに注力したいと思います。ドコモとしては、5Gの大きな特徴の1つである「高速」を強く訴求したいと考えていますので、これらの周波数帯でエリアを広げることを最優先にしています。

 LTEの帯域を使う(転用する)のは、恐らく2021年度の後半からになると思います。しかし、LTEのお客さまはまだ多く、(LTEユーザーが使っている帯域の一部を割いて)転用するとなると、本来の5Gの速度が出ないことは明らかです。

 私たちとしては、「本格的な、本来の5G」を拡大して、それを便利に使っていただく方向に持って行きたいと考えています。

 合わせて、「5Gのエリアはここですよ」ということはもちろん、「LTEのエリア」と「(LTE用の帯域を)転用した5Gエリア」も混乱なくエリア図として示して、お客さまに理解していただけるようにしたいと思っています。エリア図については、KDDIとソフトバンクもそのように作ると聞いています。

 あくまでもSub-6とミリ波でのエリア構築をメインとしつつも、2021年度後半からLTE用帯域の転用を始める予定であることを明らかにした。

 エリアの「広がり」を重視するのか、あくまでも「品質」を重視するのか――どちらが正解なのかは現時点では分からない。各キャリアにおける1〜2年後の5G契約者数、あるいはその比率である程度の答えが見えてくるかもしれない。

吉澤社長 質疑に応じる吉澤社長

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