NTTドコモが、5Gの商用サービスを3月25日に開始する。同時に発売される端末は、シャープ製の「AQUOS R5G」とサムスン電子製の「Galaxy S20 5G」。4月には、ソニーモバイル製の「Xperia 1 II」やLGエレクトロニクス製の「LG V60 ThinQ 5G」もラインアップに加わる予定だ。先行して5Gの商用化を発表したソフトバンクとは異なり、ドコモはミリ波対応の端末も用意する。
ネットワークについては、5G用に割り当てられた3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯を活用する方針。2年後の2022年3月末までに、2万局を達成する方針を打ち出している。注目を集めていた料金プランについては、「当面の間、無制限」を打ち出した。正式な料金プラン化は、様子を見て検討するという。ここでは、ドコモの5G戦略をネットワーク、料金、端末の観点で読み解いていきたい。
エリアというより、スポット――これが、5Gの基地局が設置された場所の一覧を見たときの率直な印象だ。先行して5Gの商用化を発表したソフトバンクと同様、ドコモの5Gも当初は限定的な場所でしか利用することができない。3月25日時点での基地局数は、150カ所、500局だという。また、3月時点ではミリ波のサービスも始まっていない。
東京五輪の開催が予定されている(今のところ、だが)7月を前に、47都道府県全てに5Gの基地局を設置。1年後の2021年3月末までには、1万局にこれを拡大する。これが、2年後の3月末には2万局になり、基盤展開率97%を達成する予定だ。基盤展開率とは、総務省の定めた基準で、日本を10km四方のメッシュに分けた約4500の区画に対する割合。2万局で、4365区画に5Gの基地局を設置すれば97%を満たすことができる。
ソフトバンクは従来通りの人口カバー率を重視し、4G周波数の5G転用をにらんでいるのに対し、ドコモは基盤展開率を高めていく方針。2万局も全て、5G用として割り当てられている新しい周波数帯の基地局になる。ドコモの吉澤和弘社長は、「基盤展開率を高めることが最も重要だと考えている」と語る。ここまで数字が上がれば、「実質的に日本全土をカバーしていることになる」(同)というのが、ドコモの考えだ。
既存の4G用周波数を転用することに対しては、やや消極的だ。ネットワーク部 技術企画担当部長の中南直樹氏によると、その理由はスループットにあるという。中南氏は「既存の周波数を5G化しても、速度が上がらない。今後のサービスを考慮しながら、展開も含めていつごろやるのかを検討したいが、まずは新周波数で1万、2万と(基地局を)打っていきたい」と語る。
確かに5Gが超高速・大容量なのは、新しい周波数で、帯域幅を広く取れるからだ。帯域に限りがある既存の周波数を5Gにしたところで、スループットが大きく向上するわけではない。エリアを広く取って端末上に「5G」のアイコンが表示されても、速度が伴っていなければ「なんちゃって5G」になってしまうというわけだ。
ある意味、ソフトバンクとは真逆の方針だが、デメリットとして、プロモーション的な観点ではエリアの広さがアピールしづらくなる。5Gの商用化で先行した米国でも、スループットを重視するVerizonやAT&Tに対し、T-Mobileが低い周波数を使ってエリアの広さを売りにしている。どちらも一長一短といえそうだが、日本でも同様に、キャリアごとに方針が分かれた格好だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.