順調なユーザー数の拡大をアピールする楽天モバイルだが、まだまだ課題は多い。もともとは2020年内に300万契約を目指すという意味を込め、1年間の無料キャンペーンを展開していたものの、今のペースだと、達成できるかどうかはかなり危うい。9月や10月と同程度の純増数では、300万契約には届かないからだ。また、料金無料に引かれてお試しで契約していたユーザーが、どの程度残るのかも見えていない。満足度を高め、定着率を上げていくのは急務といえる。
山田氏は、「1年間の無料が終わってユーザーがいなくなってしまうのが一番困るため、満足度を非常に重視している」と語る。ユーザーの満足度は「ずいぶん上がってきた」(同)といい、MMD研究所の実施した総合顧客満足度調査では、4キャリア中1位になっていたことを紹介した。ただ、同調査の内訳を見ると、料金の安さでは他社を圧倒している一方で、サービスや通信品質、サポートでは他社の後塵を拝していることも分かる。無料から2980円に料金が上がったとき、この評価がどう変化するのかも不透明だ。
エリアについても、前倒ししているが、不安がゼロになったわけではない。人口カバー率で表せるエリアと、体感でのつながりやすさは必ずしもイコールではないからだ。楽天モバイルが持つ1.7GHz帯は、1GHz以下の周波数帯と比べるとビル内などへの浸透力が弱く、エリア化されていると見なされていても、圏外になってしまったり、通信品質が著しく低下したりすることがある。地下鉄やトンネルなど、キャリアが共同で整備しているところはいいが、「個別の大きなビルは、1件1件アンテナを設置していかなければならず、各テナントの了承を得て変えていくため、もう少し時間がかかる」(同)。
実際、楽天モバイルは一部のエリアで人口カバー率が70%を超え、KDDIとのローミングを終了しているが、場所によってはこれまでつながっていた場所で、突如圏外になった、電波が弱くなってしまったといった声が挙がっている。「基本的にはローミングがなくなったことで、つながらなくなることはないが、ごくごく少数そういったユーザーもいる」(同)といい、そのようなユーザーには、ドコモ回線を使うMVNOの端末を貸与するなどの対策を取っているという。
これらに加え、端末のラインアップも拡充していく必要がありそうだ。特に、日本で最もシェアの高いiPhoneシリーズを扱えていないのは、競争上、かなり不利に働く。
SIMロックフリーで購入したiPhoneにeSIMのプロファイルをダウンロードして使うといった手もあるが、現時点では、やはりキャリアから端末を購入するユーザーの方が、圧倒的に多い。新モデル発売後に検証するまで、実際に使えるかどうかが分からないのも、アーリーアダプター以外のユーザーにはハードルが高い。現にiPhone 12シリーズでは、せっかくサービスを開始したばかりの5Gが利用できなかった。こうした不満点を、無料キャンペーンが終わり始める4月までにどこまで解消できるかが、定着率を左右しそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.