12月23日、総務省にて「デジタル変革時代の電波政策懇談会(第2回)」が開催された。その中で、楽天モバイルは現状、4Gにおいては1.7GHz帯しか所有しておらず、「電波がすみずみまで届くプラチナバンドでなければ他キャリアと同等条件でカバレッジをつくることは困難」として、プラチナバンドの割り当てを訴えた。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2020年12月26日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額税別500円)の申し込みはこちらから。
ただ、「楽天モバイルはプラチナバンドがないのは明らかに不利」というのは参入当初から指摘されていたことでもある。2020年1月に行われた記者説明会で、山田善久社長に「プラチナバンドのような周波数を求めるのか」と質問したのだが、その時には「今の周波数は結構繋がると思っている。今後、そうしたバンドがあれば、そういうことはあるだろうが、現状、なかなか簡単には出てこない。今の周波数を前提にネットワークを構築したい」という回答をしていた。
で、サービスを開始した後に「やっぱり、プラチナバンドが不利」と訴えるのは遅すぎはしないか。ソフトバンクが携帯電話事業に参入するときは、「プラチナバンドがないとね」と総務省や世間にアピールし続けていた。結局、ボーダフォンを買収し、何年も「プラチナバンドをよこせ」を声を上げまくって、ようやく獲得。一気に繋がりやすくなったのは記憶に新しい。
また、楽天モバイルでは「2021年に現在の他キャリアと同レベルのひっ迫度になり、2023年にはひっ迫度が他キャリアを超える」としている。ただ、これもひっ迫度を考慮せず、無謀にも「使い放題」を提供してしまったのが原因ではないか。
このあたり、もうちょっと計画性がないことには、総務省が割り当てたくても、他キャリアから反発を招くことにもなりそうだ。
ただ、総務省としても楽天モバイルには頑張ってもらいたいわけだし、武田良太総務相としても、3キャリアにメインブランドでの値下げを迫ったことで、4キャリア目に撤退されて寡占が進むようなことがあっては困るはずだ。3キャリアを恫喝して帯域を取り上げ、楽天モバイルに再分配するという荒技もやってくるのではないか。
楽天モバイルが総務省に提出した資料では、米AST社との連携による「スペースモバイル計画」にも触れられていた。衛星を飛ばして、日本全土100%のカバー率を達成。衛星からBand 3を飛ばすことで、既存のスマートフォンで使えるというものだ。
しかし、12月24日にソフトバンクの子会社であるHAPSモバイルが行ったプレゼン資料には「衛星は地上と1000キロ以上、離れるため、地上で使うには専用端末が必要になる。その点、HAPSは地上から20キロの成層圏を飛んでいるため一般のスマホで通信ができる」としている。
既存のBand 3を衛星から飛ばすとなると、地上の基地局と干渉しそうな気がしてならない。その点、HAPSモバイルは「停波になる予定の3Gの周波数帯を使うつもり」(ソフトバンク関係者)という。
ソフトバンクは明らかに楽天モバイルによるスペースモバイル計画に対して、実現するのは難しいと指摘している。楽天モバイルにはスペースモバイル計画に関しては、もうちょっと専門的な説明が求められそうだ。
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