総務大臣は1月22日、電気通信事業法第27条の3に定める「特定関係法人」を追加する告示案を総務省の「情報通信行政・郵政行政審議会」に諮問した。これに伴い、同省は1月23日から2月22日まで告示案に対する意見(パブリックコメント)を募集する。
これに関連して、総務省は同日、特定関係法人の指定に必要な報告に漏れがあったとして、KDDIに対して行政指導を実施した。
電気通信事業法第27条の3では、電気通信事業者間の適正な競争関係を確保する観点から、一定の条件を満たす携帯電話事業者を指定し、規制を掛けられる旨が規定されている。
具体的な指定条件や規制内容は総務省令などで定めることになっており、現在は以下の条件を満たす携帯電話/全国BWA(無線ブロードバンド)事業者が指定対象となる。
(※)1月22日現在で当てはまるのはインターネットイニシアティブ(IIJ)とオプテージの2社
指定された事業者と代理店では、「通信料金と端末代金の分離」「行きすぎた囲い込みの禁止」について規制が掛けられる。主な規制内容は以下の通りだ(参考記事その1/その2)。
電気通信事業法における「特定関係法人」は、大きく「親会社」「子会社」「兄弟会社」「その他(政令で定める関係性を持つ会社)」に分かれる。もう少し具体的に見ると、規制対象となる通信事業者と以下のような関係性を持っている会社が当てはまる。
今回諮問された告示案は、NTTドコモとKDDIに関連する特定関係法人を追加することを盛り込んでいる。この案通りに告示されると、電気通信事業法第27条の3に基づく規制対象通信事業者は、現行の24社から37社に増加する。
NTTドコモの特定関係法人として追加されるのは、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)だ。NTTBPはドコモから見ると持分法適用関連会社だが、新たに移動電気通信役務(MVNOサービスだと思われる)を提供することになったことから、ドコモの特定関連法人として追加されることになったという。
KDDIの特定関係法人として追加されるのは、以下の企業となる。
KCCSは京セラの子会社だが、KDDIの持分法適用関連会社でもある。他の11社は、KDDIの子会社であるジュピターテレコム(J:COM)の地域子会社(KDDIから見ると孫会社)だ。これら12社の追加は、後述するKDDIの報告漏れによるものである。
総務省のKDDIに対する行政指導は、特定関連法人12社を総務省に報告していなかったことに対して行われた。
KDDIとJ:COMは今まで、J:COMの地域子会社はKDDIの特定関係法人“ではない”という解釈だった。この解釈をもとに、J:COMの地域子会社はMVNOサービス「J:COM MOBILE」において「iPhone SE(第2世代)」を実質0円で販売してきた。
もしもJ:COM自身がJ:COM MOBILEを提供していたら、J:COMはKDDIの特定関係法人として規制の対象となる。しかし、J:COM自身はMVNOではない。今まで総務省が示してきた資料を見る限り、KDDIに対するJ:COM地域子会社のように、規制対象の事業者の孫会社が特定関係法人となるかどうかは分かりづらい。
総務省が現行の告示を「告示案」として意見を募集した際に、「J:COMをKDDIの特定関係法人として指定すべきだ」という旨の意見が寄せられた。その際、同省は以下のような返答をしている(一部表現を分かりやすくしている)。
厳密には、J:COMはKDDIの特定関係法人に該当する。しかし、MVNOサービスを自社では提供していないため、規制のしようがない。一方で、実際に提供している地域会社は、KDDIからの申告ベースにおいて特定関係法人に指定できない――総務省の返答は、そのように読み取れる。
今回、総務省はJ:COMの地域子会社もKDDIの特定関係法人である判断し、行政指導(と告示の改正による特定関係法人への追加)を行うことになった。KDDIは「誤った認識のもと、報告を行ったことについて重く受け止め、今後このようなことが発生しないよう社内のチェック体制を見直し、再発防止に努めていきます」としている。
また、本件に関して、地域子会社を統括するJ:COMは「(電気通信事業法第27条の3などに基づく)規制対象となる可能性があることも踏まえ、法に適合したプランの検討を行っているところであり、早急に導入したいと考えている」としている。
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